キス
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今日は ルヴァの私邸で 若年の守護聖を集めてのささやかな食事会が行われた その集まりに 彼らと同年代であるアンジェリーク・コレットとレイチェルも誘われており 二人は喜んで出席した ルヴァ ランディ ゼフェル マルセル そしてコレットとレイチェル 総勢6名の会は始まったときから賑やかに進み そして今 お腹一杯で幸せ満ち足りたルヴァの招待客たちは 家路へと向かうべく 館を後にしたのだった ルヴァを除く ランディ以下五人は ワイワイと騒ぎながら夜道を歩く 一行が庭園にさしかかった時 それまでアンジェリークと並んで話をしていたレイチェルが ふいに何か思いついたらしく 後ろを振り返り ゼフェルになにごとか話しかけた そのまま彼女はゼフェルの隣に移動して話しだす アンジェリークはそれを確認し 再び前を向いて歩き出した かろやかな足取りは アンジェリークのうきうきとした気持ちを表していた 風はないものの 空気が冷たく頬をなぶる夜だった それでも 心は軽く暖かく とても幸せな気分でひとり 肩のあたりまで伸びた真っ直ぐな髪を揺らしながら ゆっくりと大きな歩幅で歩く 幸せなのは 今日 皆と楽しい時間を過ごすことができたからだけではなかった アンジェリークの心の高揚は ほとんど全て この場にいるたった一人のせいだった 同じ栗色の髪を持つ 風の守護聖 ランディ アンジェリークはいつの間にか彼に対して恋心を持つようになっていた いつも会うと笑顔で挨拶をしてくる彼 照れくさそうに頭を掻く仕草 炎の守護聖オスカーを手本として 男らしくあろうとする姿 どんなときも 常に一生懸命なランディが とてもとても 大好きだった 恋というものはどこからやってくるか まったくわからない アンジェリークは 聖地に女王試験を受けに来た 女王候補に選ばれたからには是が非でも勝ちたい そのために 守護聖とはできるだけ仲良くしようと心がけていたものの まさかその中の一人 しかもレイチェルと二人でこっそり『サワヤカの守護聖』とアダ名を付けていた彼に対してこんな気持ちを抱くようになるとは 露ほども考えていなかった それなのに 現に今 アンジェリーク・コレットは 気が付くといつもランディに向けて意識を集中していた 恋する人がいるこの地 同じ場所にいて 同じ空気を吸っている 家族と離れて暮らす寂しさは それだけではもちろんぬぐえないが ランディといるときだけは 全てを忘れられた 一緒にいると がんばろうという気持ちにさせてくれる そんな存在 アンジェリークにとってランディは 一粒でやる気1000%の元気の素だった きっと後ろにいるはずの 大好きな人を感じながら アンジェリークの歩みは心の高揚そのまま スキップをしているかのような軽やかなものになっていく しかし数分後 アンジェリークの表情は曇った さきほどから ランディの声が聞こえない 聞こえるのは ゼフェルとレイチェルが声高に論争をしている声と それをなだめにかかるマルセルの声 (もしかして……黙って帰っちゃった?) そんなことないよね と思いながら アンジェリークは段々と焦ってきた そうだったら この浮き立つ気持ちがだいなしだ これ以上つまらないことなんてない 急に襲ってきた不安に 歩幅がしゅんと小さくなった 様子を見るために後ろを振り返ろうとしたその時 「アンジェリーク」 突然声をかけられてアンジェリークはびくっと半歩しりぞいた そこには 今さっきまで もしかしたらいなくなっちゃったかも と思っていたランディが サワヤカな笑顔で立っていた なんの心の準備もしていなかったため 心臓のバクバクが喉までせりあがる かろうじて「ランディ様……」とだけ声が出た まったくらしくない 気弱な声だった 「あの……さ……寮まで送ってくよ」 「……ほんと?」 気が動転しているため 友だちに話すかのような口調になってしまった しかし そんなことには全然気が付かず 夢のような展開に胸躍らせていた 「ん……ほんと」 そう言って ランディはアンジェリークと並んで歩き出した ランディは黙って 少し俯き加減にして歩いている アンジェリークの方も話しかける適当な言葉が見つからず 結果的には やはり同じようにただ黙って歩を進めるだけだった ときおり どちらかが口を開いて その返事を返して 二人の会話は お世辞にも盛り上がっているとは言い難かった しかし だから尚更 アンジェリークには今現在二人の間に流れる空気に特別なものを感じた いつもランディとアンジェリークとの間にあるのは元気なやりとりだけだったから (この道が永遠に続けばいいのに。そしたら、もしかして……) ランディとの微妙な距離に 淡い期待のようなものを抱く 後ろの方ではまだ 言い合いが続いていたが アンジェリークにとってはそれも すぐ側にいるランディという存在の前に まったく聞こえていないも同然だった 庭園を抜けるとすぐ 分かれ道が見えてきた ここを右に曲がると ランディやゼフェルたちの私邸へ 左に曲がると女王候補寮へ (あ〜あ、もうオシマイかぁ。ここからはレイチェルと一緒だもんね……) アンジェリークは 心の中でため息をついた 結局何も起こらなかった こうなってみると当たり前のことなのであるが (こんなことならもっとたくさん話しておけばよかった。せっかくのチャンスだったのに。もったいなかったな……) 分かれ道につくと ランディは立ち止まり アンジェリークも足を止めた やはりというか当然というか 彼は皆が来るのを待っている この瞬間 まだしぶとく胸に抱いていた期待も シャボン玉の泡のようにはじけて消えてしまった そこへ 間もなくレイチェルたちが到着した 「ねえ、アンジェ!」 いきなりレイチェルが駆け寄ってきて アンジェリークの腕を引っ張り こそこそとみんなから離れていった 「なに?」 アンジェリークは困惑した顔でレイチェルを見る 彼女は さっと近寄り アンジェリークに耳打ちをした 「ねえ、ワタシこれからさ、ゼフェル様のお屋敷に行くんだ」 「えー!? 何そ……むぐっ」 「チョット、声が大きいってば!」 アンジェリークはレイチェルの手に口を塞がれたため 残りはもがもがとした音になってしまった 「バカでっかい声出して、恥ずかしいじゃない。ダレか来たらどうするの? イ〜イ? 管理人さんに『レイチェルも帰りました』って言っといてヨ」 (だって、そんなことしていいわけないじゃない!) レイチェルに遮られていて声にこそならなかったが アンジェリークは思いきり叫んだ 寮の管理人にこのことがバレたらどうなるか 自分たちが今まで犯した数々の所業のせいで充分すぎるほどわかっている 生真面目な彼女は 微々たることも漏らさず 逐一 素早く 首座の守護聖であるジュリアスに報告してしまうのだ その後のことは考えたくもない そう思いつつも一瞬 ジュリアスの怖〜い顔が脳裏をよぎって アンジェリークはその映像を慌てて消した 絶対にイヤ! という意思を込めてレイチェルに視線で訴えると 彼女はふふ〜んと笑ってこう言った 「ワタシがいなければ、これからランディ様と二人っきり……でしょ?」 「え?」 「え?って、……送ってもらうことになってるんじゃないの?」 「そうだけど…………あ、そっか」 怒りに気をとられていて アンジェリークはそのことに気が付いていなかったのだ 「に〜ぶいなァ。でさ、ワタシ今夜帰らないつもりだからサ、そっちもがんばりなよ!」 「そっちもって、こっちはそんなんじゃ……。まあいいや。おっけぃ」 にぶいと言われようが 押し付けられた役目が大変だろうが ランディと一緒にいられるならなんてことはない 二人は笑顔を交わし 交渉は成立した 数分後 アンジェリークは レイチェルが寮と反対方向に行くのを 手を振って見送ったのだった 「行こうか」 レイチェルの姿が見えなくなると ランディがそう言ってアンジェリークを促した それにこっくりと頷いて 彼女は彼の後を追う それにしても……とアンジェリークはいぶかしんだ レイチェルはとっても強情で 絶対に人の言うことなんて聞かない子だ いい意味でも悪い意味でも この何週間かの付き合いで随分と知らされた だとしても 普段のランディなら 必ずひとこと注意しなければ気が済まないはず それなのに今 ゼフェルたちと一緒に行こうとするレイチェルを何も言わず見送った (どうしちゃたのかしら、ランディ様) 候補寮の門限を彼が知らないはずはない 今日は食事会で遅くなるからと許可を貰ってはいるものの だからといって夜中の2時3時まで大丈夫ということがあるはずもない アンジェリークは ちらりとランディの横顔を盗み見た すうっとのびた鼻筋が 彼をいつもよりもぐっと大人っぽく見せている 彼はいつも めいっぱい顔全体で笑う 綺麗な顔をしているのにもったいないなとアンジェリークは思っていた だけれども いつもこんな顔をしていたら恐らく近寄れなかったに違いない とも思った 現に今 アンジェリークは普段と違うランディとちっとも話すことができないでいる 「どうしたの?」 ふいにランディがこちらを向いた アンジェリークの心臓がドキーッと強く打ち 彼女は胸を押さえた 「大丈夫? 苦しいのかい?」 ランディは慌ててアンジェリークの両肩を掴んだ 「ち、違います! あの……、手……」 「ああ! ごめん! いや、変な気持ちで触ったんじゃないんだ!」 パッと肩から手を離し 彼は両手を上に挙げた 「ごめんなさい! それはわかってます。そんな風には思ってませんから」 「いや、こっちこそ、あれ? こっちこそってのも変だな」 アハハ と笑い ランディは右手でこめかみをぽりぽり掻いた 二人は道の真ん中で向き合い 二人揃って照れて下を向いていた 「どうしてさっき、レイチェルが行くのを止めなかったんですか?」 アンジェリークは自然と さきほど感じた疑問を口に出していた 「え……あ……いや……」 ランディは誰が見てもはっきりわかるほど動揺し 口ごもっている 「ランディ様、何も言わなかったし、怒られるかなって思ってたんですけど」 「ああ、うん……ほんとはいけないことだってわかってるんだ。でもさ、えっと……」 バリバリと頭をかき 上目遣いで見つめてくる その顔がちょっとかわいくて アンジェリークの胸はキュンとなる 「君は……知らないみたいだね」 ランディは逡巡の末 決意したようにそう言った 「何を、ですか?」 努めて 声が裏返らないように気をつけながら アンジェリークは問い返した 「ゼフェルとレイチェルが付き合ってること」 「え?」 ランディは固かった緊張を緩め にかっと笑う 「さっきレイチェルが君に何か言ってたから、てっきりもうわかってるんだと思ってたけど。黙ってるなんてレイチェルも人が悪いよな」 ハハハ! と愉快そうなランディを前にして アンジェリークの緊張の糸はひゅるるるとほどけていった 二人の間にいつもの雰囲気が戻って体が楽にはなったものの 何かしら”トクベツなもの”を期待していた身には正直落胆を感じずにはいられない でも それを悟られるのは癪なので 急いでいつもの調子を取り戻す アンジェリークは口を尖らせて言った 「本当ですか? ランディ様。レイチェルったらいつの間に……」 「でもさ、実は俺も昨日聞かされたばっかりなんだ。それで、今日ルヴァ様の食事会の後、レイチェルを館に連れて行くから邪魔するなって」 外気が冷たいため 話をする口から白い息がもれている ランディはポケットに手を入れて きゅっと肩を縮ませ ゼフェルたちが行った方向をちらりと見た 「俺とマルセルの前でゼフェルの奴、赤くなってたよ。あいつもかわいいとこあるよな。こんなこと言ったら殴られそうだけど」 その時のゼフェルの様子を思い出したのか ランディは照れ笑いをしている その様子にアンジェリークは再びキュンとしてしまい 慌てて下を向いた (好きですって言っちゃおうかな……) 今なら言える気がする 今の話だと ランディもそう頭が固いタイプではなさそうだ 少なくとも 女王候補が恋なんてしちゃいけない と説教はされないだろう アンジェリークは 地面に生える小さな草をつま先ではじきながら 呼吸を整えた 「ランディ様……」 「何だい? アンジェリーク」 見上げたそこにはランディの晴れやかな瞳 こちらが尋常でないスピードで心臓を働かせているのに ちっとも気がついてない 「……行きましょうか」 告白する勇気はいっぺんでくじけてしまった 寮に着くまでの道 ランディとアンジェリークは この時間を楽しく過ごした 聖地の静かな夜に声が響かないように 二人ともこそこそと喋ったが 大きく笑えない分 くすくす笑いはずっと後をひいた しかしだからこそ そういう時間はあっという間に過ぎてしまうものだ ほどなく 二人は候補寮の前にたどりついた アンジェリークはどうしてもランディと別れがたく 寮の前で機関銃のように喋り続けた 話が途切れてしまうと ランディが帰ってしまう もう少し もう少しだけ 祈るような気持ちで 頭の中から言葉が消えないようにがんばっていた 話す内容など 口から出す側からどんどん忘れていた 幸い アンジェリークはそれほど努力をしないまま ランディを引き止めることに成功していた ここに着いてからはむしろ ランディの方が饒舌で アンジェリークは 笑いをこらえる方に多大な労力を強いられるくらいだった いつしか二人は 部屋へと通ずる階段で 並んで座って月を眺めていた あまりの寒さのため 自然と寄り添うようにしながら ◆◇◆◇◆
天にある月が少しづつ移動していく その距離によって どれだけ時間が経過しているかが知れた もうそろそろ帰らなくてはいけない アンジェリークはもうだいぶ前から そのことをいつ言い出そうかと考えていた あまり遅くなると 今日招待してくれたルヴァを始め 守護聖の皆に迷惑がかかってしまう このことが問題にでもなったら きっとランディのことだ 率先して自分が送ったから自分が悪いと言うに決まっている 帰る とたったひとこと 言うのは簡単だ でも 本当はまだ一緒にいたい このままランディといつまでも話していたい 外はどんどん寒くなって凍えそうなほどで 二人の吐く息の白さがより 濃くなっているように感じる もうすでに 寒さのあまり口が思うように動かなくなっていて ランディもきっとそうなのだろう この寮に着いた時の こちらを笑わせてくれたあの勢いはなくなっていた それなのに 寄り添ってぶるぶる震えながら どちらも「帰る」とは言わないものだから 体の中心以外は とっくに冷えきってしまっている (帰らなくちゃ。帰りたくないけど、帰らなくちゃ) アンジェリークは先程からずっと 葛藤していた このままでは ランディが風邪をひいてしまう 風の守護聖が風邪だなんて きっと守護聖の誰かに おもしろがって言われてしまうのだ アンジェリークは俯いて 自分の膝の辺りを見つつ ランディの話にあいまいに頷いていた その時だった 「キスしたいって言ったらどうする?」 ……えっ? あまりに突然のことにびっくりして アンジェリークは ぶんっ とランディに振り返った しかしランディの方はといえば 別の方角を向いている (キスって、キスしたいって言ったよね!? ランディ様の声だよね?) アンジェリークは あさっての方向を向いているランディの後ろ頭を凝視した 念力を送ってみても こちらを向く気配はない 少しして 彼はむこうを向いたまま さっきの言葉とはまったく関係のないことを話し始めた 「ね、あの木っていつから生えてるのかな?」 (え? え? なにそれ? さっきのはなんだったのー?) 確かに聞いたはずなのに ランディは何事もなかったかのように話している 彼がそ知らぬ顔をしている限り アンジェリークも 話を合わせるしかなかった 「けっこう大きいですよね。マルセル様だったらわかるか……な」 言いながら 疑問符がぽんぽんぽんと 頭の中を飛び跳ねる さりげなくランディを観察してみるが いつもと違ったようには感じられなかった (聞き間違いだったのかな……でも……) こっちにとってこんなに都合のいい話を聞き間違いだと思いたくはない アンジェリークの混乱をよそに なおもランディは話し続けている 本当は 彼がさっき言ったと思われるあの言葉が気になって仕方がないアンジェリークだったが その本人が完全に知らんふりをしている以上 そのことについて質問することもためらわれた それから 10分ほど経過した アンジェリークは 帰ろうと思っていたことも忘れ なんとはない会話をランディと続けていた そして 少しの沈黙 話をしていないと余計に寒さを感じるため アンジェリークが手の平に息を吹きかけて暖めていた その時に また 彼は言った 「キスしたいって言ったらどうする?」 今度はちゃんと聞いた この声はランディのものに間違いはない 確信を抱いて アンジェリークはランディを見た なのに 彼はまた そっぽを向いていた (いったい何だっていうのー??) アンジェリークは ランディの後頭部 元気なくせ毛に目をやった となりにいるのは どう見てもランディだ 今聞いたセリフは とても信じがたいものだけれども もっと信じがたいのは この態度 こんなのはランディらしくない 「ランディ様?」 アンジェリークは 背中を向ける彼に声をかけた 彼は振り返らない 「今のって……」 アンジェリークは言う ところが 「あれってどこの灯りかなあ……」 ランディはまた 違う話を始めた アンジェリークは とっさにこう言っていた 「今、はぐらかしたでしょ」 瞬間 アンジェリークはキスをされていた 何がおきたのかわからなかった アンジェリークはただ 肩にまわされたランディの腕を感じていた そして 冷たく凍りついた体の中 唯一 唇だけが ひどく暖かかった ランディの熱が じんわりと 伝わってきた やがて ランディの体が離れた 「……そんな顔、しないでよ」 ランディは言うが アンジェリークは視線を遠くに固定したまま動けないでいた しばらくして 「なんか……びっくりしちゃって……」 やっとのことでそれだけ返事をした 「そっか……」 そのままランディは黙りこくってしまった 先に余裕を取り戻したのは アンジェリークの方だった ランディを見ると 肘を膝に乗せてうつむいている しばらくじっと見ていたが 振り返りそうもない アンジェリークがランディの ぴん とはねたくせっ毛をひとすじひっぱると くりくりした子犬のような瞳が上目遣いでこちらを向いた うなだれて でも甘えたそうで アンジェリークは言った 「もう一回、しよっか」 「へ?」 「もう一回」 「…………」 やや置いて ランディの手が アンジェリークの頬に伸びた こめかみのあたりから左手を差し入れ ぐっと顔を近づけてくる アンジェリークも自然と寄り添い そして もう一度 二人はキスをした ◆◇◆◇◆
「で、アンジェの方はあれからどうしたのよ」 「あれからって?」 「とぼけないでよネ。こっちのことばーっかり聞いて。昨日、ランディ様と一緒に帰ったでしょ。その結果報告。まだ聞いてないよ、ワタシ」 太陽の下 昼休み 湖のそばにぺたりと座り アンジェリークとレイチェルは昨日の話に花を咲かせていた 試験ではライバル同士の二人だが 恋に関してはお互いに最強の協力者 今も きのうレイチェルに頼まれたことをアンジェリークが完璧にやってのけたことについて レイチェルに大変感謝されたばかりだ 「内緒ー」 「ナイショー? なによ! もったいぶっちゃって」 「そっちだって肝心なとこ教えてくれないくせにー!」 勝気な女同士 肩をいからせて むーっと睨みあう 降参したのはレイチェルだった 「ま、いいワ。今日はとってもアナタに感謝してるしね。 でも、覚えときなさいよ。今度はキッチリとしゃべってもらうんだから!」 立ち上がりざまそう言うと レイチェルはあかんべをひとつして湖から去っていった 金色の髪が跳ねている背中を見送り アンジェリークは草の生えた地面に寝転がる 瞳を閉じると 昨日のあの場面がよみがえってきた 自然と笑みを形作ったその唇を 風が優しく撫でていった |
| エル以外も万歳 |