昼休み
昼休みを告げるチャイムが鳴ると、1組教室のドアが開いた。
「ねえ、みんな聞いて!」
現れたのは原素子であった。
「お昼にしましょ。たまには1組のみんなとも交流したいもの」
「うん、いいよ」
最初に返事をしたのは、速水厚志。
「もちろんであります。素子さん!」
「じゃあ、私も頑張りましょう」
他に同意したのは若宮に壬生屋だった。
「芝村さんは?」
素子はにこやかに舞に振る。
舞は彼女と目を合わさず不機嫌そうに返事をした。
「あいにく今日は、弁当がない」
「あら、残念ね。じゃあお天気もいいし、みんなで屋上に行きましょうか」
「待って」
厚志が呼び止める。
「夜食用にと思ってサンドイッチを多めに作ってきたんだ。舞も行こうよ」
一瞬だけ素子が表情を消したのを、舞は見逃さなかった。
屋上ではランチを囲みながら話に花が咲いていた。
舞は少し離れて座り、黙々とサンドイッチをほおばっている。
「僕の家に子猫が生まれたんだ。可愛いよ」
厚志が嬉しそうに話した。
「素敵ね。私、見てみたいわ」
彼の隣に陣取った素子が応じる。
「よかったら見に来る? 今度の日曜あたり、どうかな」
「ちょっと仕事があるけど…午後なら時間が作れると思うわ。いいのかしら」
「もちろんだよ」
耳をそばだててその会話を聞いていた舞は、自分でも理解できない不愉快な気分を抑えることが出来なかった。
その日の夕刻、ハンガーではいつものように仕事が続いていた。
故障続きの3番機を舞と厚志で面倒を見ている。
「ねえ、話があるんだけど」
厚志が舞に呼びかけた。
「さっきから黙っているけど…何か怒ってる?」
「怒ってなどいない」
むっつりとして舞は答えた。
「用があるなら、さっさと言うがいい」
「今度の日曜、うちに子猫を見に来ない?」
思わず工具を取り落とす舞。
「なななな何を言っている!」
「どうしたの? 舞、猫が好きでしょ」
「しかし、原が来るのではないのか」
「うん」
無邪気にうなずく厚志。
「別に、お客さんが1人が2人になっても構わないよ」
「そ…そういう問題ではない!」
舞は真っ赤な顔をして彼をにらみつけた。
「見に来てくれないの?」
「そうは言ってない。…そこまで言うなら、行ってやらないこともない」
「じゃあ、決まりだね。日曜の午後に待ってるから」
この男の無神経さは、ときどき絞め殺したくなるな。
真剣にそう思う舞であった。