ずっとずっとずっと
あなたはいつも写真を撮りたがる。
「素子さん、どうして目をそらしちゃうの?」
速水厚志はカメラから顔を上げると不思議そうに言った。
「嫌いなの。写真」
「どうして? デジカメ買ったの、素子さんを撮りたいからだったのに…」
「その気持ちは嬉しいわ」
原素子は厚志の手を取ると、頬にキスをした。
たちまち赤くなって下を向く厚志。
しかし、それを見つめる素子は笑っていなかった。
だって写真になっちゃえば、あたしが古くなるじゃない。
あなたはすぐに絶対などと云う。
「今日は楽しかった。ありがとう」
「わたしもよ」
デートの帰り、校門下で厚志と素子は見つめあっていた。
「じゃあね」
「うん。じゃあ明日」
と言いながらも、厚志は手を離そうとしなかった。
素子は困ったように微笑んだ。
「帰れないわ」
「離したくない」
「困った子ね」
やれやれ、というように素子は厚志を抱きしめた。
自分より背の低い彼の髪にほお擦りをする。
厚志はされるがままになっていた。
「来週も…」
「なあに?」
「デートしたいな。チケットとって」
回された手に力がこもるのが分かった。
「そうね。出撃がなかったら…ね。でも、誘ってくれるのかしら。こんな年増女」
「誘います。絶対」
「本当に?」
「本当です。絶対に」
うなずく厚志の頭上で、素子は沈む夕陽をながめていた。
その目はかすかにうるんでいた。
だって冷めてしまっちゃえば、それすら嘘になるじゃない。
あなたはすぐにいじけて見せたがる。
「謝ればすむと思ってない?」
「思って…」
素子の鋭い視線に、厚志は口ごもった。
「いません。ウン。でも、ごめん」
書類をはさんだクリップボードを抱えながら、ゆっくりと厚志の周りを歩く素子。
尋問官のように靴音を立てながら。
倉庫の薄暗さが、いっそう雰囲気を悪くしていた。
「そんなに芝村さんが好き?」
「え? いや、あの、そ、そういうわけじゃなくて…」
「でも、きのうデートしたんでしょ」
ため息をつく素子に、あわてて厚志が取り繕う。
「デートっていうか。あれは、舞が…」
「舞って呼ばないで。馴れ馴れしくて、嫌だわ」
「うんと、『ついて来い』って言うから、その…」
視線をさまよわせる厚志の頬を、不意に素子の手が触れた。
その顔は楽しそうに笑っていた。
頬から指をなぞらせて、くせのある毛に到達する。
そして、厚志の頭を強くなでた。
「くしゃくしゃ!」
「な、なんですか?」
「かわいい」
「えっ?」
訳が分からない、という表情で厚志が顔を上げる。
と、素子は彼を置き去りにして出口に立っていた。
そして、振り向いた横顔で宣告する。
「今度だけは許してあげる。あなたがかわいいから」
靴音も高く歩み去っていく素子。
速水厚志はただ見送るだけしかできなかった。
昨日のことは忘れちゃおう。
そしてぎゅっとしていてね。
ぎゅっとしていてね。
ダーリン。