目の前に広がってくる光景・・・
景色なんて無い・・・
在るのは、視界一杯に広がる物体
それが、最後に見たモノだった・・・
・・・・・闇
・・・・・・無?
音もナニもナイ・・・そんなセカイ・・・
意識が在るのかもわからない
ここは ドコ?
ボクは ナニ?
・・・さい・・ね・・」
ふいにナニもナイ セカイに音?声?
・・・呼んでいる
誰が?・・・
わからない、だけど・・・
不意に、ヒトの存在を感じた
笑ってる,笑ってやがる
音はナイ、だけど、わかる・・・
その『ヒト』は笑っている、
視覚がナクても わかる、感覚で・・・
感覚?視覚ではナイ?そんなことはどうでもいい
ヤツはナゼ笑っている
僕を馬鹿にしたいのか?
ヤツは唐突に脳に語りかけてきた
『目覚めてもいいけど、キミはボク、僕は君だよ』
わけがわからナイ、
ヤツはまた、笑いはじめた、
『面白そうだから、キミは目覚めなよ・・・
だけど、・・・キミは コワレル・・フフッ、ハハハハハ』
何をわけのわからないコトを言っているんだ?
再びナニもナイ世界に戻される・・・
さ・・いね・・・わ・・・」
また?、呼んでいる・・・
僕は、そこで意識が 途切れた・・・
僕は目覚めた・・・
真っ白い、清潔感の漂う、だけど殺風景な部屋・・・
ここは何処だ?
周りをよく見ようと体を起こしかけて気づいた、
全身に大量の包帯が巻かれている、
・・・ここは、病院か?
全身の包帯と殺風景な部屋を関連づけて、それを認識した
ところで、俺は、何をしたんだ・・・?
なぜ?ナゼ?
俺はナゼ、こんな所に居る?
自分に疑問をぶつける・・・
その過程で、一つの事実に気付いた
(俺は・・・誰ナンダ・・・?)
そう・・・俺は、自分が何者なのか・・わからなかった
一瞬、頭をよぎった言葉
記憶喪失
テレビや本で、よく聞く言葉
だけど、自分にふりかかってはじめてわかる・・・
怖い・・・自分を怖く思う・・・俺は誰?
そんな時、頭の中に声が響いた、
『だから言ったろ・・・目覚めれば、キミはコワレル・・・・』
コワレル?クルウ?オレハダレ?オレハナニ・・・?
はっと我に返ると同時にドアが開いた
一人の、見たことの無い、看護婦が入ってきた
「あっ!お目覚めですか、秋山さん!」
秋山?俺のことか?
「今、先生呼んできますからね!」
言うことだけ言って、その看護婦は部屋から出て行った
再び静かになった部屋で、俺は考えをまとめた、
とりあえず、俺の名字は『秋山』らしいな、
名前は・・・思い出せない・・・
名字が在るということは、俺という存在は
認められているらしいな・・・
収穫は『秋山』という名字・・・
他は・・・無いか・・・
少し自嘲気味になる
まあ、医者に聞けば、何かわかるかもしれないな
さっきの看護婦も、今呼んでくる、って言っていたもんな・・・
しばらくすると、さっきの看護婦が一人の男性を
連れてやってきた
「お目覚めのようだね、秋山君」
俺は、無言で頷いた
「意識は、はっきりとしているようだな・・・
なにか、いつもと違うところとか、ないかな?」
「あの・・・一つだけ・・・」
「ん?なにかな」
少し迷ったが、思い切って聞いてみた
「あの・・俺は・・・・・誰なんですか?」
医者は、少し不思議そうな顔をして、尋ね返した
「すまんが、質問の意味がわからんのだが・・・」
俺は気付いた、確かに説明不足だよな、と
「すいません・・あの、自分が誰だかわからない・・
記憶が無いんです・・・」
すると、医者は少し辛そうな顔をして答えた、
「記憶喪失か・・・」
呟くように、その単語を洩らした・・・
「・・・記憶喪失」
俺も、その単語を呟いていた
その夜
俺は、夢を見た・・・
・・暗い夜道を歩いている夢・・・
等間隔に街灯があるため、灯りには不自由しない・・・
その俺の視線は、前を歩いている一人の女性に向けられている・・・
俺の存在には、気付いていないようだ・・・
頭の中で声がする
『殺せよ・・殺したいんだろ・・・素直になれよ・・・フハハハハハッ・・・』
自分の意志とは関係無しに、俺はその言葉に導かれるまま、その女性に忍び寄っていった、
いつの間にか、俺の手には一本のナイフが握られていた・・・
女性は、すぐに手の届く位置にまで迫っている・・・
声に導かれるまま、俺は一息にナイフを突き刺した
心の臓を一突きに・・・
そして、突き刺したナイフをそのまま下に振りぬいた
・・・皮を突き破り、心の臓を貫き、そして肉を切り裂く・・・
視界が血で染まる・・・全てが赤に・・・
女性は声も無く、絶命し、地面に倒れる
自分に何が起こったのかも理解していないに違いない
一瞬にして、一つの命が奪われた、他でもないこの俺に・・・
死体に向かい、更に、二度、三度と更にナイフを突き立てる
一突きごとに、痙攣を繰り返し、血が吹き上がる
だが、それも次第に収まっていき、やがて、その空間に静寂が戻る
ただし、濃厚な血の匂いを残して、ではあるが・・・
銀色に輝く月だけが、殺人者と死体を見ていた
いや、他にも居た、俺の中に存在する、もう1人の俺、対なる自分
ヤツの声が、不意に頭に響く
『ハハハッ、楽しそうじゃないか・・・それがお前の本性なんだよ』
「ちがう、俺は・・・違うんだ・・・・・」
俺は、怖くなり、ただ叫んでいた、否定していた
その否定が、ガラス細工のように脆く、一瞬で崩れ去るものだということぐらいわかる
だけど、俺にはただ叫ぶことしかできなかった
『まあいい、そのうちワカルサ・・フフッ、ハハハハハッ』
無情にも響く声・・・
視界が黒になる・・・何もワカラナクナル・・・意識が・・薄・れ・・・・る
全てが暗闇の中に・・・・・
このまま、底の見えない闇に落とされる、全てが無くなる
(このまま、消えるのかな?)
視界が閉ざされた、また暗闇になる
見えない・・・何も・・・・
?
ふと、一条の光を感じた
そして、その光が声を発した
いや、声じゃない、脳に直接響く
「戻ってきなさい・・・」
「?」
「そこは危険よ・・」
「だれだ?」
「早く戻りなさい・・早く・・・和人・・・」
真っ黒な世界の中で、誰かが俺の名を呼び、引き止める
闇に落ちないように・・・
やさしい声、そして懐かしい声
「早く・・戻りなさい」
その声は、同じことを繰り返す
ただ、ひたすら戻りなさいと
だけど、俺は落ちている、闇の中に・・・
動けないんだ、闇が俺を縛っている
「行ってはダメ」
光が、俺を縛っていた闇の触手を解いてくれた
?
ふと、浮遊感を感じた
浮いている?
いや、浮き上がっている
上へ、上へと
闇から浮かび上がり、今、光に近づいている
手を伸ばせば、光に届く
俺はまだ、戻れる
光を捕まえた・・・・・・・・・
視界が開けてくる
明るい、窓から光が差し込んでいる
朝になっていた、爽やかな日差し、だけど・・・・・
ひどく、疲れた
夢?か・・・それにしても、やけに生々しい
あの、人にナイフを突き立てる感触・・・
そして、光の声
あれは、本当に夢?それとも、現実?
その日、ニュースで、夢と同じことが現実でもあったことを知った
それもすぐ近く、この病院から僅か500m程離れた、路地・・・
そこにある看板、電柱の位置に至るまで全く同じだった
怖かった、不安だった、だけど、誰にも相談なんか出来ない
自分でも、分からないことがありすぎる
ただ、俺は・・・今も壊れつづけている・・・
それから、病院を退院するまで、同じような夢を見つづけた
そして、それは現実の世界でも全く同じ事件として起こりつづけていた
世間では、前代未聞の連続殺人事件に、ある人は恐怖を覚え、またある人は怒りを抱いていた
警察もこの事件のため、沢山の人手を裂いているが、犯人はあがらない・・・
俺はもう確信していた、犯人は俺・・・
時が経つにつれ、俺は壊れていく、ヤツの言ったとうりだ・・・
戻れない、もう・・戻れない・・・・・
俺にはもう、ヤツを止められない・・・
病院を退院した俺は、一人ただ歩いていた
何のあても無く、ただ、歩いている
公園についた・・・
今、一番新しい被害者はこの公園で殺された・・・
「死によって、等価となる・・・か」
おもわず毀れた呟き・・・
「ふっははははは」
そして、自嘲気味な笑い・・・
分かってる、そんな虫のいい話なんて無いことぐらい
自分一人が死んだところで、何が変わるんだ?
何も変わらない・・・いや、新たな被害者を出さずにすむ・・・
でも、俺は自分で死ぬことが出来ない
ヤツが、もう一人の俺が、その行為を止める
俺にはもう、自殺することさえ、許されない・・・
いっそのこと、この壊れた俺に、全てを任せてしまえばどんなに楽だろうか?
しかし、それもヤツが止める、そんなに俺を壊したいのか?
俺が狂うのを見たいのか?
すでに、狂ってる、まともじゃない・・・
日々、俺は壊れつづけている・・・
最初の事件から、もう三ヶ月を過ぎた
被害者は、既に三十人を超えている
ひと月に、十人以上殺している・・・
しかも、その手口は回を増すごとに、より残忍になっていく
最近では、この町から引っ越す人も多くなってきた
無差別殺人を繰り返す『俺』から逃げるため・・・
最近は闇に落ちるたび、助けてくれたあの光も現れない
ただ、ひたすらに俺は堕ちていく
そして今も、壊れつづけている・・・・・
【THE END・・・】
ネタばれな・あとがき
はい、やっと書きあがりました
久々の小説です(^^
え〜、この小説は『二重人格』をテーマに書いた小説です
DOUBLE=対なる:MIND=精神・人格
と、タイトルのまんまです
なんの捻りも無いです(はうっ)
そこのところは、ひとえに私の実力不足です、ご了承下さい
では、中身の説明として、まず謎なのが、秋山和人が闇に落ちたとき
現れた光ですが、あれの正体を明かすかどうかは最後まで悩みました
試行錯誤の結果、このような形で最後まで謎ということにしました
しかし、あとがきだからいいじゃん、ネタばれだし、ということで、明かしちゃいます
あの光は、彼にとって母親、設定の段階で、彼は孤児で両親はすでに他界しているんです
親の心情としては、子供を死なせたくない、というところから、ああいう形で出しました
だんだん現れなくなるのは、ただ単に霊界と接点が稀薄なっていくというのも考えられますが
私は、そこは親の葛藤が見られるようにと書いたつもりです
自分エゴのために、息子が人を殺し苦しんで、悩んでいる
そこが、この小説で一番の見所で、一番人間ドラマを感じられる部分だと思います
もうひとつネタばれしちゃうと、最後の『そして今も、壊れつづけている・・・・・』
という終わり方ですが、これにも悩みました、葛藤したんです(笑)
本当は秋山を殺しちゃって終わりにしようかとも、思ったんですが
それだと、イマイチなんか普通だな〜って、そこで考えたのが
『そして今も、壊れつづけている・・・・・』の言葉でした
この終わり方だと、ただ終わるより、続いていく未来が感じられるから
不幸な未来でも、続いていく、そのことに現実らしさを与えられるかな〜って感じです
これらを読んでから、もう一度読むと随分感じ方が変わると思いますから
ぜひとも、もう一度読んで頂きたい
最後に、この小説は短編ですが、それなりに納得したのが書けたと思います
あとがきまで、しっかりと読んでくださった方、本当にありがとうございます
これからも、頑張らせていただきますので、末永く宜しくお願い致します