本作品はフィクションであり、実在の個人・団体とは一切関係ありません
SCAPT ースキャットー
プロローグ
警察庁特殊捜査課、通称SCAPT(スペシャル コンバット アタック ポリス チーム)スキャット。都道府県警をまたに活動できる特殊警察である。SCAPTのあつかう事件は、第二特殊事件(セカンド アトラクション)とされ報道管制がひかれる。また、即決の裁判権も行使できる。しかし、あつかう事件は危険なものばかりである。これは、正義に命をかける警察官の物語である。
(1)
「・・・・はい。了解しました」
そう言うと、ダブルのスーツを身につけた40すぎの男は受話器を置いた。この男は特殊捜査課の課長<安西警視正>である。
「おい、みんな聞いてくれ」
安西は10畳程のスペースの室内で大声を張り上げた。
「2日前の米国海軍横須賀基地入口の爆弾テロ事件はセカンドアトラクションに認定された。平田・長沢両警部は現場と所轄署へ行け」
「はい」
元気のいい声とともに、上下ジーンズを身につけた平田と、黒皮のハーフコートを着た長沢が部屋を出ていく。2人も髪を短く切っている。2人もガッチリした体格をしている。20代後半といったところだろう。
「課長」
ポリエステルのカラーYシャツにスラックスを身に付けた、長髪男が声をかけた。中田丈二警部補である。
「なんだ中田」
「情報収集に行ってきます」
中田には単独行動する癖がある。別に仲間と仲が悪いわけではない。彼の持っているネタ元(情報屋)が彼以外の警官と接触するのを拒むからだ。
「よし、行け」
安西が言うやいなや、黒のロングコートを持って部屋を出て行った。
「私と奈美は捜査本部へ行くぞ」
「はい」
紺のパンツスーツに身をつつんだ、ロングヘアーの里川奈美巡査部長が返事をした。
奈美はノートパソコンを抱えると安西のあとを追うように部屋を後にした。
(2)
中田は彼専用捜査車両である黒のシルビアの中にいた。新宿に向け青梅街道を走っている。靖国通りへと左折した。目指す店は目の前だ。ヤンダというショーパブの店の前に車をつけると、中田は運転席から降り店の扉を開け中に入って行った。中にいる50すぎの小太り男が背を向けながら言った。
「準備中だよ」
「俺だよ、大西」
大西と呼ばれた男が振り返った。
「なんだ、中田さんですか。今日は何の用で」
「横須賀の件だ」
「ああ、あれですか」
「何か知ってるのか」
「爆薬は中東から密輸され、藤代組がさばいたんですよ。そう、量は2・3kgってとこですね」
「それだけか。」
「あと、チャカも買ってったそうですよ。トカレフ、レッドスターですけど」
「買った奴の面は」
「さあ、えらく品の良い親父としか・・・」
「世話かけたな」
中田はそう言うと1万円札を3枚、大西の胸ポケットへと押し込んだ。
「いつも、すいません」
大西の言葉を聞きながら店を出て、車まで戻った。(銃を所持してるか。やっかいだな)そんなことを考えながら無線機に手をのばした。
「中田です」
「なんだ」
安西の声が返ってきた。
「ホシは、爆薬2・3kgを購入。さらに、チャカまで買ってます」
「種類は」
「トカレフ、中国製です」
「ご苦労。捜査本部に集合せよ」
「了解」
中田を乗せた車は横須賀へ向け走り出した。
(3)
横須賀署捜査本部についた中田は安西から、小山内(おさない)管理官と木場捜査一課長を紹介された。
「ホシ(犯人)の目星は」
中田が誰にとなく言った。
「まだだ」
安西が答えると目の前にある電話が鳴った。小山内が受話器を持ち、二・三度うなずくと受話器を置き呟いた。
「やられた」
「どうしたんですか」
安西の問に答えたのは、小山内ではなくスピーカーだった。
「110番より入電、19:03頃横須賀スタジアムにて爆発が起きたとの事。所轄署応援の為、交通課及び生活安全課は現場へ急行せよ。繰り返す・・・」
安西は振り返り大声を上げた。
「平田、長沢、中田、里川。現場へ急行せよ」
その声を聞き4人は捜査本部を後にした。
(4)
横須賀市追浜(おっぱま)にある横須賀スタジアムはベイスターズ2軍の湘南シーレックスのホーム球場である。
野次馬が回りを囲んでいる中に、中田達がいる。中田が鑑識官を1人捕まえて質問した。
「爆弾の種類は」
「正式な検査をしないと・・・でも、米軍基地と同じ物かと。違うのは、ホトケ(死人)がでてることですね」
鑑識官はそれだけ告げると仕事に戻った。
「奈美、課長に連絡。セカンドアトラクションに移行してもらうよう、手続きを」
中田が指示を出す。里川は、デジタル無線機(盗聴出来ない無線機)に、喋り出した。
「おい、そこの君」
中田が私服警官を呼んだ。私服警官が中田を見ながら言った。
「君らは」
「スキャットの中田だ。ホトケの身元は」
「はい、秋吉興業。藤代組のダミー会社ですが、の専務、松田とその舎弟2人。それと中東系の外人の1人の、計4名です」
「ヤクザか、何でこんな所に」
「どうやら、シャブの取引中をやられたようで。現金・シャブ、ともに発見しました」
「ありがとう。仕事に戻ってくれ」
私服警官は敬礼をすると走り去った。
「中田、里川、本部に帰るぞ」
長沢の声がひびいた。
(5)
「犯人が自首してきました」
会議室に制服警官の声が響いた。安西は立ち上がると部下達を連れ、取り調べ室に向かった。
「君、名前は」
取り調べ室の中で、刑事が犯人らしき不精髭の男に聞いた。
「干場隆」
「君が犯人なのか」
中田が割って入り、喋り出した。
「爆弾を作りました。でも、しょうがなく・・」
「しょうがない。なにがだ」
「婚約者を人質にとられて・・・」
「誰に、それと婚約者の名前は」
「佐川建設社長の佐川と、田畑兄弟に。婚約者の名前は花巻浩子」
「その佐川と田畑は何者なんだ」
「私設警察の設立を目指す過激な連中です」
「花巻さんは、どこに監禁されているんだ」
「金沢文庫にあるマンションの1室に」
マンションの正確な場所を聞き終えると、安西が言った。
「これより人質救助及び犯人逮捕へ向かう」
(6)
中田達は、干場が言ったマンションの管理人室にいた。
「部屋は505号室。3DKで入って右側の洋室に人質が監禁されている。奈美はここで待機」
安西が指示を出す。奈美以外の4人は、腰から拳銃<グロック17L>を出すと(スキャットは特別にこの銃が与えられている)スライドさせ初弾を送り込んだ。
エレベーターの中で安西が指示を出す。
「突入は平田・中田だ。犯人を確保しろ。長沢は人質を救しつしろ。いいな」
3人は頷いた。エレベーターが5階につく。5号室は右手最初の部屋だ。
安西が借りてきたスペアキーでロックを外した。中田は平田の顔を見て頷くと、ドアノブをひねり勢いよくドアを開け中へと踏み込んだ。
「警察だ。動くな」
中には2人の男がいた。1人はうろたえ、もう1人は背中から拳銃を抜いた。その光景を中田は見逃さなかった。
”ダン、ダン”乾いた銃声が2回響いた。銃を手にした男は胸に2つの小さな穴を開け倒れこんだ。
「救急車を頼む」
廊下で見ていた安西が無線で指示を出した。中田はその声を聞きながら、もう1人の方へ歩み寄った。
「佐川は何処だ」
男は答えない。中田はコメカミに銃を突き付け言った。
「何処だ」
「本社の社長室」
それを聞くと男を平田に渡し、部屋を出ていった。
「殺人教唆に監禁教唆、下手すると内乱罪か」
擦れ違い様に安西が呟いた。中田が安西を見る。ゆっくりと安西が頷いた。
(7)
佐川建設本社、25階建てのビルだ。その25階に中田がいる。社長室と書かれた扉の前にいる。扉を開け中にはいると、机に寄り掛かりながら立っている男がいる。右手には拳銃が握られている。
「どちら様かな」
男が言った。
「佐川さんですか」
「そうですが、あなたは」
「死神です」
中田はそう言うと腰からグロックを取り出し引き金を引いた。
”ダン”佐川の眉間に小さな穴を開けると、その場を後にした。
END
小説目次へ
トップページへ