[2013/09/24/09:54]
3YVO - Imagination - 名称不設定0、発端

名称不設定0、発端


 始めに、この話に出てくる俺以外は、全員架空(仮想含む)の人物で有る事を明記しておく。どんなに誰かに似ていても、公の人物とは一致しないので、変な解釈をしないように。



 誰にでもある、普段と同じ生活を過ごしていた。……と書くと、「大金持ちなのか? それとも著名になったのか?」という疑問が出るが、暮らし自体はちっとも楽にはならないし、顔が通る訳もない。ただ違うのは、たった一枚の[変なメダル]を獲得し、数多くの[攻略の証]を得た事だった……。

 (はぁ……。今日も早く学校(別称はもちろん授業。)終わらないかなぁ……。)
  冒頭からこのダメ思考をしているのは。今では懐かしき昔の俺だ。朝には満員気味の電車に揺らされ、帰宅中に「とっとと帰れ!」と自分の足の遅さに半ば逆ギレしている。まぁ、他人から見れば、行きも帰りもおかしい程に走り回る人となる程だが。

  そんなこんなでまた走っていた日。何となく狭い場所を通りたくなって、ビル間の露地を通過していた。
  すると、地面に五百円玉らしき物を見つけた。
  折角お金(?)を見つけたんだから猫ババしようと周りを伺ってから、定期券入れの小銭袋に忍ばせた。
  勿論その時は朝の通学中だった。時間もギリギリで、今拾った物が何だったのか確認する暇はなかった。

 授業自体は聞きたくもないだろうから省くが、学校の生徒・先生は共に、男・女が五分五分になっている。そのせいか、恋の話が膨らみやすい。
  ……自分とは何の関係も無いがな。
  今までも知り合いの人はいるにしても、それは何かの機会で接触している間だけなのであって、集団を離れてしまえば他人も同然である。しかも、仲良しや親友と呼べるような本当の友は、結局一人も現れやしなかった。同様に、彼女の類も一切無いことを明記しておく。
  長すぎる授業で少々眠たくなり、時間稼ぎに先程のメダルを取り出して見た。
  表面には一本の直線だけ。反対側には駅でたくさん見かけるような矢印が一つ描かれ、周囲には『3YVO CO.LTD.』と刻まれている。カネにもならないし、そんな会社も知らない。メダルゲーム用の物なのか?それしか考えが浮かばなかった。

 そして授業が終わり、帰宅開始となった。電車内で座席に座りながら自分の残金を捜したが、野口さんが一人と百円玉が九枚、……そしてあのメダルが一枚。
  物は試しって事でメダルゲーム屋に行き、念のためその店のメダル拾枚を購入した。遊ぶ機械はどれでもよかったのが、一番単純で幼稚な競馬ゲーム『おうまさんレース』をやる事にした。
  早速そのメダルを投入したが、何も起こらない。
「あれ? 故障か?」
  返却ボタンを何度押しても戻らず、まるでそんな物は始めから無かったかのような反応をしている。店のメダルを使った訳で無いので店員は呼べない。
  仕方なく俺は店のメダルを一枚入れた。

  チャリン……ピロリン。

  機械はこのメダルを『メダル』として認識した。これで先程のメダルは『メダル』としても、直に吐き出される『異物』としても、認識しなかった。
(……メダルでも異物でもない物?)
  顔をしかめたが、せっかくなので遊んだ。
  単か、二単、三連単などがあったが、ここはベタに一番倍率の低い、二倍の二番、『ファンセルナ』に一枚賭けた。
  気付くと、何故かゲーセンではなく競馬場の観客席に居た。さっきの『馬券』らしき物を手に握って。そこでは九頭くらいの馬共が目の前で走っていた。プラスチック製の模型がコース内のレールの上を移動している……訳ではなく、実際の競馬場に近い雰囲気だった。そして馬が全てゴールし、レース結果での二倍配当金と、……あの『メダル』が戻って来た。
  今のは何だったんだ? これはメダルに刻まれている会社が作った新商品なのか?
  比較のために『店のメダル』だけを入れて遊んでみたが、普段と何ら変わらない、只のメダルゲームになってしまい、さっきの迫力は失われていた。
  どうやら機械を使う前に投入する事で、現実並の感覚を追加させるらしい。他の機械にも試したが、最初と同じように感覚だけは中にあった。ただし、体は中には入らず、周りからは異常と認められないため、「気のせいでは?」と思ってしまう。
  ……体は内に入れずとも、心(精神)は入る事が出来る。ある考えに至った俺は、ズル賢さと笑顔を八:二で分けた顔をして、帰宅していった。その『メダル』をどうしようか考えながら……。
  歩き続けて自宅へ着き当たり、リュックバッグを机の傍に置いた。
  数ページしかない小説を手に取り、始めのページに『メダル』を挿し、読んでいった。
  予想通り、心(精神)が小説世界へ吸い込まれた。しかし、数分すると目の前は通常な(現実)世界へと戻った。あの『メダル』は始めから数ページ進んだところに挟まっていた。
  今度は時計を見て時間を計ったが、実は数分と思っていたのは一秒すら超えず、中に居る間の時間は現実では無に等しいと確認できた。
  晩飯や風呂、明日の準備、トイレ等の用事を済ませてから、メダルを再度手に取った。
  そう、ある小説世界に入る(侵入とも言えるが。)ために。




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