「……ここは何処だ?」
気付いた時には、目の前に沢山の歯車が動いていた。……カチカチカチカチ。
何が動いているか不審に思い、歯車の経路を辿ってみた。……カチカチカチカチ。
道は結構長く、走っても走っても終わりが見えない。……カチカチカチ。
そう言えば、始まりの歯車も見えていないような……カチカチ。
走りに走り、俺は足元に異変を感じた。有る筈の床が、ナント無いのだ。
何の予告も無しに俺は倒立落下する。
どこまでも落ちていく。地面も見えず、未だ落下も止まらない。途中、黒っぽい煙を通過した感触が有った。……それでも落ちるのだが。
今更だが、歯車の音が既に聞こえない。何も聞こえない。視界は真っ暗で何も見えない。何の臭いも分からない。
分かっているのは、自分が只、足を踏み外した瞬間から延々と落ち続けている事だけ。
ガバッ!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
今のは、何だったんだ? 夢……なのか? にしては、変にリアルだった。体は大量の冷や汗で濡れ、時間は午前三時だった。下着を取り替え、再び寝入った。
何気無い朝の通学。本日も似たような場所で電車に乗り、学校の最寄駅に着いた。暫く歩くと、銀色のコインを見つけた。
(……あれ? これ、以前のに似てるよな……。)
絵柄を見ると、片面は一本の直線、反対側は……矢印が一つ描かれていた。
それと同時に、記憶が蘇って行く。
(……俺は、あのメダルでここに来たんだ。本来は学生でも、何でも無いんだった。)
ダイナマイトの導火線を伝う火花のような勢いで、どんどん過去から遡っていく。
(……警備中だった俺が奴にやられ、記憶を失ったまま、残り日数が減ってしまった。)
そして、本体に引火すると、現状をやっと再認識できた。
(……何れにしろ、もうこの世界には居られない、かもしれない。)
……かと言って、元から居る必要も無いが。
出席、在籍状況を調べる為、今回も出席簿を見る。怖い事に、半分近く名簿が消されていた。だが、座席数は変わっていない。
続いて、例の本部も見に行った……。と言っても、行ったのは昼休み中だが。念の為、入る前に中を覗く。……誰も居ない? ので、部屋に入った。
前とはそんなに変わっていない部屋。作品が展示してある物も無し、予定表も無し、厄除け系の守りも無し。あまりに寂れているので、悪戯心で窓際机の中にメモを入れた。
『表と裏、大切なのは次の選択肢のうちどれ?
A.表 B.裏 C.両方 D.無し E.表と裏以外 F.全部
出題:枠外警備員』
このメモがどうなろうと、俺には分からない。俺のストーリーは本来、載ってはいないのだから。
体に突き刺さる視線。そう、さっきからずっと居たのだ。音も立てず、風も起こさず。だけれども、異変に敏感な少女。
下手に刺激すると、今度は本当に俺が消されかねない。
そこで俺は少女に一言言いながら、目の前を通り過ぎて部屋を出た。
「Simple Question For them.」
あいつらにはあいつらの話が有るように、俺には俺なりの話を続けなければならない。だが、本当に、奴に仕返しが出来るのだろうか?
……どう考えても、このままじゃ不可能。なので一旦諦め、通常作業(放課後等の探索や日記への継続筆記)へと戻った。