アニスの手記
▼第一部
   ▽第一話
   ▽第二話
   ▽第三話
   ▽第四話
   ▽第五話(10/1)
   ▽第六話(10/2)
   ▽第七話(最終話)

第一話
4月6日 ごめんなさい、カーデューア
 ごめんなさい。わずかな書き置きだけ残して、飛び出してしまって。世間知らずな私の面倒を見てくれた事、感謝してます。でももう貴方に守られているのが辛いんです。それはとても居心地のいい場所だけれど、貴方は私を一人の女性と認めてくれないのがはっきりと分かってしまったから。
 だから、この「はじまりの街」ドーンで新しい一歩を踏み出す事にしました。貴方は心配するだろうけど、もう決めたんです。今日から自立して、一人前になります。
4月7日 はじまりの日
 ドーンの領主が冒険者を集めていると聞いて、領主の館(といっても城塞です)へ向かいました。部屋にはたくさんの冒険者がいて、いくつかのグループに割り振られました。私のグループには、戦士のデビドさんとビーツさん、魔法使いのグリュックさん、それに盗賊のレイスさんがいました。周囲を見るに、私達のグループが一番……その……経験の浅い人達のようです。
 領主のボーニス・レイハルト将軍の説明によると、隣国ラファイエカ魔導王国との戦争を終結させるべく、ヌームの剱を探してほしいとの事でした。でもその剱は古文書にちらりと出る程度の伝説の剣ですから、実在するかどうか怪しいものを探せと言われても……。でも魔導王国の人達も探しているらしくて、急いで探さないといけないらしいです。とにかくラーヌ河上流の湖にあるらしいので、前金として1000GPを戴き、私達は出発する事にしました。
 ……が、二週間程ドーンに滞在する事にしました。私を含めて全員が武器の鍛練の出来る状態だったにも関らず、金銭的な理由で諦めていた事が分かったからです。職務怠慢でしょうか。でもでも、出来る限りの支度をしてから出発するのが、成功への近道でしょうし……。
 そう言えば、私がこのパーティーのリーダーになってしまいました。まぁ、国内では神官であればそれなりの尊敬を受けますから、なにかと都合がいいでしょうしね。という事はラファイエカ側へ行くことがあったら、ラファイエカ出身のグリュックさんがリーダーになってくれるのでしょう。少し喋りましたけど、頭の回転が速そうな人です。でもいくらお金が必要でも、向こうの人がわざわざこの国の領主の依頼を受けるものなんでしょうか。ちょっと謎な人です。
4月21日 本当のはじまりの日
 ようやく武器の鍛練を終え、私達はドーンの街を後にしました。遅れを取り戻そうと、馬での移動です。目指すはハールの街。北へ向かう街道で、オークの集団と戦闘になりました。ドーンのこんな近くにいるなんて。びっくりです。
4月22日 地下へ
 街道を北上していくと、オークのキャンプらしきものが見えました。昨日のオーク達の住処かも知れません。かなりの数がいるようでしたので、迂回して進む事にしました。……が。その瞬間、地割れが起こり……下へ落ちてしまいました。私達は最下部まで落ちましたが、馬達は途中亀裂の細い処で引っかかっていて、落ちてきそうもありません。かなりの怪我を負っているようでしたので、グリュックさんが魔法で絶命させていました。
 落ちた処は地下迷宮のようでした。仕方ないので探索すると、サラマンダーの像のある部屋を見つけました。かなり古そうです。その後、石像に襲われたりデビドさんが重傷を負ったりして大変な事になったので、あちこち動き回らないで休む事にしました。ちょうどいい広さの部屋を見つけて篭城です。私の修行が足りないばっかりに……。すみません、皆さん。
4月23日 ……。
 デビドさんを治しきれなかったので(本当にすみません……)、もう一日篭城します。扉の向こうからガリガリと聞こえるのが気になります……。
4月24日 探索再開
 皆さんある程度回復したので、探索の続きを始めました。廊下の一部に穴が空いていて、外へ通じていそうな感じでしたが、中でシージリアがうぞうぞしていたので他を当たる事にしました。
 巨大な亀の甲羅の置いてある部屋がありました。かなり昔に水が干上がってしまったみたいで、甲羅は干からびていました。一昨日のサラマンダー像といい、何かの象徴のようです。奥へは行けなさそうなので諦めました。
 人の立ち入りを妨げるトラップをかいくぐって辿り着いた部屋には、棺が置いてありました。「ドーンの英雄 ロレンツ・スタッカートここに眠る」と書いてあり、この迷宮が英雄ロレンツの墓所だったのが分かりました。その途端、棺が勝手に開いて、中からマミーが現れました。びっくりです。デビドさんとレイスさんは脱兎の如く逃げちゃうし、仕方ないので私達に悪意のない事を伝えようとしたのですが、そのうちに崩れてしまいました。どうして英雄ロレンツが、こんな忌まわしい存在に成り果てたのでしょう……。
 その後、棺の下に下層への道がある事に気づいて降りると、部屋には台座にささった一本の剱がありました。トゥーハンドソードでしたので、その使い手のデビドさんが引き抜こうとした瞬間、剱は彼の手に吸い込まれました。私達が呆然としている間に、剱が姿を出して話し始めました。曰く、自分がヌームの剱であると。私達は色々な質問をしましたが、まともな答えは返ってきませんでした。どうも私達の求めている剱とは違うみたいだという事になり、デビドさんの剱は「にせヌームの剱」という事に落ち着きました。
 剱のあった部屋は行き止まりだったので、道を引き返しました。ついでにシージリア退治をしました。ちょっぴりデビドさんが強くなったような。
4月25日 タペストリの間
 迷宮4日めです。そろそろ青空が恋しいです。
 亀の甲羅の部屋に戻り、レイスさんの機転もあってその先へ進むと、タペストリがありました。剱の力でドーンの街を助けた英雄の姿が描かれています。でもこの絵に出てくるドーンは丘になっていて、私達の知る河の中州にあるドーンとは違うようです。……昔はラーヌ河がなかったという事なんでしょうか。あ、タペストリには「4」と数字が振ってありました。
 先に進むとまたタペストリがあって、邪悪な神官が英雄になる様が描かれています。……黒山羊神の僕(しもべ)だったようです。ロレンツの事なのでしょうか。「3」と振ってありました。
 隣の部屋のタペストリは大地に刺さった剱と、男性の姿でした。「1」と振ってありました。その奥にも部屋があるようなのですが、壁が崩れて進めませんでした。きっと二番目のタペストリがあったのでしょう。
 外へ通じる出口(というか入り口)があったのですが、外側が土に埋もれて開きません。仕方ないので道を引き返し、昨日倒したシージリアをどかして穴を昇りました。
 外界へ出ると、タイミングよく伝書鳩が降りてきて、将軍のメッセージを伝えてくれました。「剱はラーヌ湖にある」だそうです。そちらへ急行したい処ですが、ドーンの方角から煙が立ち上っているのが見えました。なにやら不吉です。一応剱らしきものは手にいれていましたから、ボーニス将軍へ報告しようと一旦街へ戻る事にしました。
 ドーンで何があったんでしょう。カーデューアが未だいるかも知れないのが気がかりです……。
4月27日
  案の定、ドーンはラファイエカ魔導王国に占領されていました。街の中はそれほど混乱していません。きっと支配する国が度々代わるので、街の人達は慣れてしまっているのでしょう。……街中をうろついていても、カーデューアに出会える訳もなく(いえ、それ以前に会わす顔もありませんが……)。既に出ているといいのですが。
 調べた処、ボーニス将軍は神皇国側へ敗走中との事でした。報告する相手がいないので、最初の目的地ハールを目指す事にします。
 また贋ヌームの剱がデビドさんの手から出てきて、思い出したかのように話し始めました。自分は名無しで、ヌームの剱じゃないんですって。でも自分が400年前の奇跡を起こしたのだとか。……なんだか最初と話が違います。やっぱり彼の名前は「にせヌームの剱」で決定のようです。

第二話
4月28日 再出発
 旅支度を済ませ、私達は再びドーンの街を後にしました。
5月4日 ハールの村
 夕方、ハール村に到着しました。小さな集落でしたので宿もなく、村長の家へ向かいました。すると、村長宅には将軍とその護衛の方達が滞在していました。護衛の一人、騎士のクレイ・ダイアンサスさんのお話によると、将軍は深手を負って療養中との事でした。将軍に会って報告をすると、任務の続行を命じられました。一応、「にせヌーム」については触れませんでした。皆さんに止められたのも確かですが、本人がヌームの剱でないと言ってる以上、報告しても仕方ないでしょうし……。ちなみに将軍の病状は思わしくなく、もっと大きな街へ行って手当てを受ける必要がありそうです。
 村長宅は先客がいたので、私達は教会を頼る事にしました。教会へ向かうと、そこにはまたしても先客が(涙)。見覚えがあると思ったら、同じ依頼を受けた方達でした。神官のルメールさんとシレーネさん、ドワーフのゲウムさん(男性)、盗賊のレヴィシアさんの4人です。ルメールさんはゾンビメイカーというメイスの持ち主で、「仏(ほとけ)のルメール」というあだ名があるそうです。勿論イザベラ女神は死者を戦力とする事を禁じている訳ではありませんが……率先して行なう者は稀だと聞いています。やわらかい物腰の方だけに、正直意外に思いました。
 彼等は3週前からこの村にいるそうです。後から着いた将軍の護衛を仰せつかって、滞在が長引いてしまったのでしょう。2週程寄り道をしていた我々としてはちょっと助かったというか、ほっとしたというか……。いえいえ、誰が任務遂行したかではなく、遂行出来たかどうかが重要なのですよね。反省。
 その後、オークやノール達の襲撃があり、私達とルメールさん達、そしてクレイさん達でそれぞれ迎え撃ち、村を守る事が出来ました。捕虜にしたオーク達によると、この近くに橋をかけたので、基地を作って侵攻を始めるのだとか。こうしてはいられない、と橋を落す計画を立てるのですが……グリュックさんが渋ります。同胞の兵士を叩きたくないのかと思ったら、どうも戦争自体が嫌なのだそうです。やっぱり謎な人です。でもあの基地をそのままにすると、この国で戦争が起こる訳で……。最終的には納得したのか協力してくれる事になりました。
 この日は教会で一晩過ごしました。
5月5日 橋の壊し方
 ルメールさん達と一緒に半日かけて橋まで行き、魔導王国の基地を潰してきました。デビドさんがポーションを使って水上を滑るように飛び、魔法使い達もろとも橋を燃やしてくれました。その間、我々は兵士達と戦闘です。決着がつくと、ルメールさん達はさっさと旅立ってしまいました。ひょっとして……将軍の護衛は私達にまかされてしまったのでしょうか。うう、酷い。その後騎士他数人を捕虜にし、ハール村へ戻ったのは夕方でした。
 戦争を阻止する為の戦争、なんて矛盾した戦いでしたが……橋の上で炎に包まれた魔法使い達の姿は、暫く脳裏から消えてくれそうもありません。
5月7日 出発
 一日休息をとり、森の町ガナックスへ出発する事にしました。将軍が捕虜を連行するというので、それに便乗します。街道を逸れるのでちょっと寄り道になりますが、真北のヘイズ村へは2週間かかる上に魔物が出たりしてとても危険なのだそうです。

第三話
5月13日 ガナックス
 夕刻、森の町ガナックスの辿り着きました。四千人は住むという、大きな町です。樹上にも生活空間があるので、町が森にかこまれているのではなく、森に町を作ったという感じです。中央に3本の巨木があり、それぞれ神殿・城・図書館になっています。
 私達は「樹上亭」に宿をとり、将軍達は捕虜を連れて城へ向かいました。宿の食事は木の実中心の変わったもので、グリュックさんの目が輝いていました。最近分かったのですが、どうもこの方は魔法使いである前に商人のようです。ハール村でも特産のハーブを買い付けていましたし。きっとここでハーブを売って木の実を買うのでしょう。
 宿代節約の為に相部屋に泊まりましたが、二組の旅行者がいました。
 あ、あと薬屋さんから巻物を戴きました。中にはなぞなぞのようなものが7問。……まさか、これを解かないと商品が買えないのでしょうか。私にはさっぱり分からなくて、皆さんが知恵を絞っていました。
5月14日 かいもの・しらべもの
 翌朝城へ向かうと、将軍からこれまでの報酬として500GP戴きました。という事で手分けしてお買い物&調べ物です。私は武器屋、グリュックさんは薬屋、デビドさんは占い屋へ行きました。レイスさんは何処かへ行きました。きっと情報収集なのでしょう。(すみません、ビーツの行動が思い出せません……武者)
 用を済ませて宿に戻ると、デビドさんが占い屋を廃業に追い込んだと聞かされました。明日行こうと思っていただけに残念です。何したんでしょう、彼。あと「なぞなぞ」は正解で、薬屋の奥の魔導商会に通されたそうです。でも高額なものばかりで買えなかったとか。残念。
5月15日 しらべもの
 昨日は買い物に終始してしまったので、今日は調べ物をしようという事になりました。皆さんは図書館へ向かいましが、私は一人、神殿へ。挨拶に行くのをうっかり忘れていて、三日目では今更な感じもしますが……。挨拶を済ますと、ルメールさん一行は二週程前にここを通ったと聞かされました。ああ、やっぱり遅れてますねぇ。私達。宿で見かけた神官達が奉仕活動をしていたので、少しお話をしました。
5月16日 しらべもの
 今日は皆で図書館へ行きました。昨日・今日で分かったのはだいたい以下の通り。

 ヌームの剱とは
  ・世界の鍵であり、人の扱える物ではない
 ドーンの街
  ・最後の都と呼ばれていた
  ・大災害の前から同じ場所にある
 竜神沼
  ・破壊の化身が姿を顕した場所
  ・ソーファールの北一週間のところ
  ・竜の足の形をした湖
 破壊の化身
  ・ドラゴンと似ているが、人の姿をとる事も
 世界の傷
  ・ヌームの剱が引き起こした災い
 堕ちた都
  ・神の頂き山脈の麓にあった
  ・かつて栄えた王国の首都
  ・人間がエルフやドワーフと共存し、魔法が発達していた
  ・神の怒りによってこの地から消える

 ……こんな処かな? 英雄ロレンツについては全く記述されていません。図書館には私達だけでなく、数組の団体がいました。夕方になって、少女の悲鳴が。慌てて駆けつけると、魔法使いの少女が死んでいました。調べた結果、魔法によって殺されたようで、その場にいた魔法使いに嫌疑がかかりました。勿論グリュックさんも取調べを受けたのですが、彼女よりも高位の者が使う魔法だったとかで、早々に開放されました。
 宿に戻ると、ご亭主が手紙をくれました。帽子を目深に被った男性からだそうです。レザーアーマーにクローク姿だったそうで、まったく見当がつきません。手紙には達者な字で親愛なる冒険者達へとあり、「先程のは警告だ。この街を立ち去らないと、今度はお前達が……」等と物騒な文句が書いてありました。ええ? なんでしょうね、これ。警告とは、きっと殺された少女を指すのでしょうけれど……じゃあ、彼女の仲間宛ての手紙なんでしょうか。どきどき。人様の手紙を勝手に読んでしまいました。明日にでも仲間の人へお渡ししなくては。
 草々に就寝した私達でしたが、夜半に物音がして起こされました。見れば、扉と窓からグール達が入り込んでいます。室内ですからボーラを使う訳にもいかず、あたふたしている内に傷を受けて麻痺してしまいました(泣)。皆さんでどうにか倒した後、襲撃者をよく見れば図書館で見掛けた方達でした。そういえば、殺された少女の仲間の方もいます。……すみません、警告の手紙をもっと早くお渡ししていれば、そんな姿になる事もなかったでしょうに。せめて祈祷をさせて下さい。
5月17日 厳重注意
 宿はちらかっていたので、私達は神殿で休む事にしました。目が覚めるとお昼すぎで、グリュックさんは商いをしに、他の4人は図書館へ向かいました。調べ物の続きをしていると、突然壁の一部が崩れ、帽子の男性が現れました---エルフです。そして「警告はした」と呟くと、館内に火を放ちました。床や壁に炎が広がり……瞬く間に書物にも燃え広がっています。なんて事を……。
 どうやらエルフの目的は、私達だったようです。館内が炎に包まれるのを見届けると、彼は姿を消しました。私達は煙にまかれて、避難するので精一杯でした。デビドさんもビーツさんも重傷です。後から駆けつけたグリュックさんは果敢にも中へ飛び込み、数冊の本を手に戻りました。
 その後警備の方達が来てくれましたが既に遅く、図書館は全焼してしまいました。ヌームの剱への手掛かりを奪うだけでなく、人の歴史そのものを燃やしてしまうなんて……。酷い。
 城から騎士のクレイさんが迎えに来てくれました。任務の件は知っているようで、これ以上騒ぎを起こさないよう、今後城で寝泊まりする様勧められました。……私達が騒がせている訳ではないので、ちょっと釈然としませんが。しかし皆さん火傷を負っているので、勧めに従いました。
5月18日 これからのこと
 相談した結果、これから一月、ガナックスに滞在する事にしました。デビドさんとビーツさんから武器の鍛練をしたいと言われたからです。二人はレイスさんに借金して訓練場へ出かけていきました。
 待つ間にと、グリュックさんは書写をしています。図書館で炎から救った本達です。返す際に司書の方と何かあったらしく、部屋に戻ってから猛然と写し始めました。
 私は教会へ通い、奉仕活動をする事にしました。教会の中にいると、冒険の日々を忘れてしまう程の静謐に包まれます。カーデューアから離れたい一心で始めた仕事ですけれど、思った以上に大きな話で戸惑うばかりです。ここできちんと心構えをしてから旅に出ないと、きっと挫けてしまうでしょうから。

第四話
6月18日 出発
 デビドさんとビーツさんの訓練が終わったので、ガナックスを旅立つ事にしました。目指すは北西の村ヘイズです。
6月28日
 ヘイズ村まであと1日という処で、人が倒れているのを発見しました。神皇国の騎士二人で、死後数時間という処。周囲には爆炎の後が見られます。魔法使いか、エルフか。……エルフですよね、きっと……。
 彼等の荷物をまとめ、埋葬を済ませて先を進むと、街道に馬二頭を連れた農夫二人が立ち尽くしていました。彼等は近くの村の者で、ヘイズから来た騎士に馬を見ているよう頼まれたのだそうです。けれどいくら待っても帰って来ないので、困っているとの事。どうやら殺された二人のようでしたので、事情を説明をすると、私達に馬を預けてくれました。
6月29日 街道の盗賊
 村まであと数日という処で、馬車がものすごい勢いで迫って来て、去って行きました。慌てて傍へ避けましたが、危険な人もいるものですねぇ。轢いたらどうするんでしょう。道を進むと4人倒れていて、やっぱり轢かれた人がいると思いましたが、彼等の一人が「誘拐だ、追ってくれ」と叫んだので違うようです。という事は、あの馬車に攫われた誰かがいたんですね。とはいえ私はこの方達の手当てをしたかったので、出来る限りの加護を与えて皆さんを送り出しました。デビドさんとビーツさんが馬上の人になり、レイスさんとグリュックさんが走って追いかけていきます。……こうして見ると、鎧を着ない人って足が速いんですね。
 治療を終えて暫くして、皆さんが戻って来ました。何故かデビドさんとビーツさんが悄然としています。後ろに馬車もあるので救出は成功したみたいなのですが、なんででしょうね? 攫われた方はオージェック・スミスというドワーフの職人で、馬車には我が王に献上する武具が積まれていたそうです。彼等は一旦ヘイズ村まで戻って護衛を増やし、再出発するとか。私達も村まで同行する事になりました。
7月2日 ヘイズ村
 ヘイズ村に辿り着きました。村へ入ると10軒程度の小集落だったので驚きましたが、それは旅の者用の施設で、大部分の村人の家は地下にあるそうです。
 領主ジバン・トッルッチ(神皇国の任命なので人間です)の館へ行き、職人さんを助けたお礼を戴きました。そして村内の武器屋で特別な武器を買える権利を許可されました。グリュックさんは大喜びかと思ったら、無反応です。後で聞いた処、武器は扱いたくないのだそうです。工芸的に価値の高いものならいいそうなのですが。そうそう、殺された騎士の剣を見せると、騎士アバース・フィルシュの部下のものだと言われました。
 次にドワーフの族長アルカレト・ヘッチの処へ行き、また報酬を戴きました。権力が二重構造になってるのって、ちょっと不自由そうです。ここでヌームの剱に関して聞きました。
 ヌームの剱とは
  ・世界の審理である
  ・古えの種族が所有している
  ・持つ者が世界の命運を握る
  ・ドワーフとエルフが制作に関わった
  ・目的によって、3つの形を持つ
  ・人の最後の希望の為にある(一度は役立った)
 ついでにデビドさんが手の剱を出して見せると、オージェックさんの目が光り、彼の腕を掴んで工房へ連れて行ってしまいました。族長はヌームの剱に関わる洞窟を明日教えてくれるそうなので、4人で騎士のアバースさんの処を尋ねる事にしました。
 アバースさんに騎士の持ち物と馬を渡すと、お礼をくれました。なんだか急にお金持ちになったような気分です。
 その後、領主から晩餐のお招きを受け、ご馳走を戴き、岩喰うドワーフ亭で休みました。デビドさんは帰ってきません。どうしているんでしょう……。
7月3日 洞窟へ
 朝、オージェックさんから開放されたデビドさんが戻ってきました。一晩中剱を鍛え直していたそうで、足元がふらついています。にせヌームの剱は新生にせヌームの剱にしてもらったそうです。取り敢えず宿で休んでもらって、その間に旅支度を済ませました。
 買い物中、昨晩何者かにドワーフが殺されたと聞きました。しかもこの3日連続だそうで……とてつもなく不安な感じがします。凍らせる手口もあったと聞くと、グリュックさんの顔が曇りました。例のエルフだとすると、更に強くなっているかも知れないそうです。
 宿に戻ると4つの葛篭(つづら)が贈られていて、それぞれ魔法の武具が入っていました。宿のご亭主は「3組目にして本物が来たか」と言い、秘密の部屋へ案内してくれました。まさか宿屋の地下に迷宮があるなんて。
 1組目はアングラ・マット率いる5人のパーティーで、「世界の真理を知る為」に入っていったそうです。それが3月前。2組目はルメールさん達で、1月前に通過したそうです。皆さん戻って来ないので、どうやらここは別の場所へ行く通路のようです。
 ご亭主に挨拶をして、迷宮へ踏み出しました。暫くして入り口の方で大きな物音がして、追手が来たのが分かりました。……エルフでしょうか? とにかく、先を急ぎます。
 しかし迷宮は至る所に罠がしかけられていて、なかなか先へ進めません。慎重に進みたいのに、時折後方から爆音がして……。魔法も奇跡も使い果たした頃、「最後にそなた達が必要だと思う道を進むがよい」と書かれたプレートを見つけ、『知恵』と『力』の扉がありました。私達は『知恵』を選択し……その部屋は壁にはヌームの剱について書かれていました。
 ヌームの剱
  ・神が最後の審判の為に人に与えた
  ・「護り手」「鍵」「破壊せしもの」の3種
  ・神は護り手を選んで審判をくだす
  ・444年前ドワーフは見守り手となり エルフは鍵と共に姿を消す
  ・旧都は破壊せしものと共に消失した
 にせヌームの剱にお伺いを立てると、3つが合体した姿が自分だとか言い、要領を得ません。先を進むと、ようやく地上に出れました。グリュックさん曰く、ここは魔導王国側だそうです。近くにレアー村と竜神沼があり、さらに一週間行った処にソーファール街があるとか。辺りはとっぷりと日が暮れていたので、出口から離れた場所で野営する事にしました。