桜の木の下
「飛影ってさ、今いくつなんだい?」
ぽかぽかさわさわと暖かい日差し。
春も近い公園の木に寄りかかりながらぼたんが尋ねる。
もちろん独り言ではない。会話の相手に上目使いになって目線をやる。
人目につきにくい木の上でごろんと横になった会話の相手。
「俺はいつだって一人しかおらんだろう。」
数秒遅れて妙な答えが返ってくる。
「そうじゃなくてさあ・・・・・。」
苦笑い
こんな他愛もない会話をこの場所ですることになってから数ヶ月。
ちょっとした用事で自宅から少し離れたこの町の公園で偶然彼を見かけて以来、
ぼたんはほぼ毎日、ここに来ている。
飛影も何も言わずに毎日必ず、ここに来て昼寝をしている。
寝ぼけた返事をするだけ。
今日はどっかでご飯でも食べよう、 とか
家に来る? とか
下に降りてきなよ、 とか
そういう話は出てこない。ただ、
成り立ってるのか成り立っていないのかさえあやふやな会話をするだけ。
それでも毎日、ぼたんはここに通い、必ずいる飛影と一緒にいるのだった。
「今、何歳なのかなぁって。」
少し遅れてぼたんが口をひらく
「そんなもの知ってどうする。」
「こっち・・・つまり人間の世界ではさ、「誕生日」ってもんがあってさ、
その人が生まれた日をお祝いして「何歳になっておめでとー!!」とか言いながら
贈り物したりする習慣があんのさ。」
「なんだそれ・・・。俺は知らん。」
意外に早く返事が返ってきた。
「くだらん習慣があるもんだな。」
いかにも彼らしい感想。
「まーねぇ・・・。私も昔は知らなかったよ。霊界にはそんな習慣なかったしね。」
「お前らの世界も、魔界も寿命が馬鹿みたいに長いからな。」
「そっかぁ!そーだよね、「おめでとう!!一千二百歳!」なんてことになったら大変だもんねぇ。
ケーキが潰される〜」
ぼたんがくすくすと笑う。
「けえき?」
「うん、ケーキって知らないのかい?あまーいお菓子だよ。これも霊界や魔界では見なかったものだねぇ。誕生日にはケーキを焼いてその上に年の数だけロウソクをたてるのさ。そしてそれを誕生日の主役が一気に吹き消してね、最後にみんなでそれを切り分けて食べるのさ。なーんかたのしそうだろ?」
返事がない。
「飛影?」
再び上に目線をやると真剣な顔でぶつぶつ言っている彼がいた。
「どうしたのさ。」
「けえきって焼くものなのか?それじゃ硬く、熱くなるだろう・・・それの上にローソク??消すのか?食うのか?」
体を起こし、真剣にぼたんに向き合って問う。
あ・
「ぶぅっぅ///」
「なんだ。貴様」
「だって、飛影ってば今すごいのそうぞうしてるだろー??やだぁ、そんな怖いもんじゃないよ。」
ぼたんは木の下にしゃがみこんで笑っている。
「・・・っ!知らん!そんなもの。どうせ人間どものくだらん道楽だ。」
笑われたのと理解できないのとで不機嫌になり彼は再び横になる。
ぼたんはあわてて立ち上がり
「そんなことないさね、飛影、あんたもやってみたくないかい?」
「断る。」
「そんなぁ〜・・・・。」
「貴様は俺にそんなくだらんことをさせたいがために俺の年を聞いたのか。」
「う・・・・・でも・・・くだんないことかもしれないけど、けど・・。」
「けどなんだ。」
「この間ね、蛍子ちゃんが幽助の誕生日に手作りのお菓子とかあげててさ、なんか、いいなって
思って・・・。あたしも・・・」
「食い物なら前にもらったぞ。」
「前って・・・?あー!!おにぎりのこと?あんなコンビニで買ったのとかじゃなくってさー!
いや、物の問題でもなくって、誕生日ってのが大事なんだよ。」
「どう大事なんだ?」
「特別な日。何年前だか何十年前だかその人がしらないけど、その人が生まれてきたから
今ここであたしといれるっていうか、・・・・う〜ん・・・とにかく、生まれてきてくれてありがとう・・・みたいな。」
「くだらん。」
「なんでさ。」
「誰でも生きているってことはそれだけ死に近づいていってる。
それにも気づかずに馬鹿騒ぎする人間どもの習慣に染まるのか。」
「・・・・。そりゃ、そうだけどさ。」
「だったらそんなものに惑わされるより、答えはあのままでいいだろう。」
「あのままって?」
「俺が一人、ここにいる。」
空をみながら彼がつぶやいた一言。
すぅっとこころに入ってきた。
「そうかもね。」
にっこり。笑顔で木の上にいる彼の横顔を見つめる。
「飛影」
「なんだ。」
目線だけでぼたんを見る。
「・・・・あんたがそういうから、あたし毎日ここに来てるんだろうね。」
「知らん。」
再び空に目をやると静かに閉じていった。
もういちど、眠りにつくらしい。
ぼたんは木に寄りかかって空を見上げた。
もうすぐ桜も咲き始める日の出来事でした。
あとがき
かなり遅れてしまってごめんなさい。
なんとか書き終えた「飛影×ぼたんで甘々」でしたが・・・
どこが甘々なんだろう・・・・。二人、手も触れないで終わっちまったよ(泣)
こんな駄文ですがちかさん、もらってやってください!!(返却不可)
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