笛の音
魔界のある丘の下で、妖狐が笛を聞いている。蔵馬だ。
魔界の者達に、[極悪非道の盗賊妖怪妖狐蔵馬]
蔵馬は、目をつぶって、ある笛の音を聴いている。
その笛の音は、とても素晴らしいものであった。
その笛が聞こえている時は、魔界の住民、誰もが静かだった。
ふと音がやむと、今度は、足音に変わり、鞍馬に近付いて行く。
そして、蔵馬の前でぴたりと止まった。
蔵馬はゆっくりと目を開けると、
「黒鵺、お前の笛はいつ聞いても心が和む。明日もまた、聞かせてくれ。」
と、うっとりと言う。
そのまま蔵馬は、ガクっと地面に倒れ込んだ。
そこを黒鵺が支える。
黒鵺は、やれやれという様に蔵馬を見ると、そのまま蔵馬をアジトへと連れ帰った。
毎日のように、これを繰り返してた。
しかし、ある日・・・・黒鵺の笛の音は聞こえなかった。
黒鵺がいつも笛を吹いている所には、誰も居なかった。
その日は、蔵馬と黒鵺がであって、ちょうど100年目の日だった。
しかし、帰ってきたのは蔵馬だけだった。
皆が蔵馬に「黒鵺は?」と聞くと、蔵馬は一言「死んだ・・・。」とだけ言った。
その会話が、蔵馬が魔界で交わした最後の言葉だった。
「・・・・・蔵馬・・・・・?」
飛影が蔵馬の顔を覗き込む。
「え?あ・・・・今、何か言いましたか?飛影・・・・。」
「・・・・どうしたんだ?ボーっとして・・・・。考え事か?」
「あぁ・・・・。ちょっと、昔の事を思い出しててね・・・・。」
「・・・・昔の仲間か?」
飛影が聞いた。蔵馬はチラッと飛影の方を見ると
「はい。あなたと同じ、黒い髪に黒い服・・・・。それと・・・・。」
蔵馬は言葉を詰まらせた。飛影は蔵馬の顔を、不思議そうに覗き込んで
「それと、何だ?」
蔵馬はニッコリと笑って、
「俺にとっての大事な人ですよ。」
と言った。蔵馬の目から、1粒の涙が零れた。