そんな会話を続けながら私達が向かった先は、
本がたくさん並んだ場所。
「ここは・・・図書館?」
「正解ですよ、船長」
「わっ!!」
「すみません、驚かせてしまいましたか」
「いえ、大丈夫です。あの、貴方は?」
一歩入って整然と並ぶ本棚を見上げていた私の後ろから、
急に声がした。
その穏やかな声の持ち主は、チェーンで繋がった
レトロな眼鏡をかけている、優しそうなお兄さん。
「私の名は、藤原鷹通と申します。図書館を預かっております。
以後、よろしくお願いします。
船長は読書がお好きと伺いましたので、喜んで
様々な本を準備させていただきました」
「うわあ、ありがとうございます!本当に、すごい本ですね!」
嬉しい!宇宙船の中でも、好きなだけ本が読めるんだー♪
「はい。長い航海の間はやはり、本がないと」
「そうですねえ。本当に、ありがとうございます」
私の言葉を聞いて、クスクスと笑う。・・・なんだか、すごくあったかくなる感じ。
本も好きだけど私、お兄さん・・・鷹通さんも、なんだか好きだな。
よーし、決めた。
私、ここに通おう。
「いえいえ。その他、資料室とデータバンクも兼ねています。
何かわからないことがありましたら、すぐにお調べいたしますので、
何でもどうぞ」
「はい!」
「それではそろそろ失礼します、鷹通さん」
「ああ、シブサワ君。この間言っていた本、届きましたよ。
よければ後で取りに来て下さい」
「はい、ありがとうございます」
「はいはーい!今度俺も遊びにきていいですかっ?」
「もちろんですよ、セージ君。それでは、おいでをお待ちしていますね」
名残惜しい気持ちでいっぱいで、私は図書室を後にした。
「次は、セージが一番お世話になっているところだな」
「そうなんですよ・・・ってキャプテン!ひどいっす」
「あの、ごめんね。ちょっと聞いてもいい?」
「何でしょう?」
「さっきからセージくんがキャプテンって呼んでるの、気になってたんだけど
どうして?」
「ああ、それは」
「俺達が同じサッカーチームに所属してるからです!」
セージくんが楽しそうに、元気よく答えてくれた。
「今はこうして航海に出ていますが、帰ればチームが同じなんです」
「そうなんだ。いいなあ、キャプテンっていい響きだよね」
「そ、そういうものでしょうか・・・」
「そうだよー。ね、出発したばっかりで何だけど、
帰ったら試合の応援に行かせてね♪」
「うん、もちろんだよ!来て来て」
「・・・その時は私も、応援に行きますよ。
ああ、手当てしに、と言ったほうが的確でしょうか?」
「明智さん!」
理知的な声がしたかと思うと、そこにいたのは。
・・・どうしよう、私の理想が白衣を着て立ってる・・・!!
「ようこそ、医務室へ。
私の名前は、明智健悟と言います。
見ての通り、この船の専属ドクターです」
「Dr. 明智は、外科も内科も全てオッケーなんだよ。すごいでしょ」
「おかげでセージは何度世話になったかわからないしな」
「・・・ホントに、感謝してますです」
「いえいえ、私の仕事ですからね。
・・・さん。ああ、船長とお呼びしたほうが
よろしいでしょうか」
「いえあのっ、船長なんてつけないで下さい!」
あー、返事する声がうわずっちゃった〜(笑)
「そうですか・・・私もそのほうが、嬉しいですよ?」
「・・・(///)・・・」
「何か少しでもおかしいな、と思ったり体調を崩すことがあれば、
すぐに私のところに来て下さい。
さんのために、全身全霊をかけて治しますから」
「は、はい・・・ありがとうございます・・・」
・・・どうしよう、照れすぎてこれ以外の言葉が出てこないよう。
「もちろん、往診にも参ります。よければ、毎朝でも」
「え、あ、はい!!ぜひ!」
え、ま、毎朝?(笑)
「・・・さん、うー!ぜひ、だなんて」
「ドクターが好みなんだな、ふむふむ、この方向で・・・」
「な、何二人とも?」
『何でもありません』
「そう?あのそれじゃ、私はそろそろ失礼します」
これ以上ここにいたら、心臓がもたないもん!(笑)
「そうですか、残念ですが・・・
もちろん、何もなくてもぜひ、遊びに来て下さいね。
お待ちしていますから」
「は、はい!!」
かなり気合いの入った返事をして私達は、次の場所へと向かった。
どうしよう。
私、かなりしあわせじゃない?
これなら船長でもなんでもこーい!!って感じだよ。
われながら、現金な性格してるなあ(笑)
「えっと、次に行くのは・・・そうだ、あそこだ!さん、はやくいこっ♪」
「ちょ、ちょっと待ってセージくん、ひっぱらないで〜」
「こら、セージ。そんなに急がなくても、無くならないぞ」
「え?」
そうしてセージくんにひっぱられていった先にある看板の文字は、
「Cafe」
あ。
わかった。
ひょっとして、ここは。
「・・・お食事するところ?」
「ピンポーン、大正解〜。
正解者には、ご褒美が・・・くっくっく・・・」
ああ、どこからか三味線の音が・・・ど、どうして宇宙船の中で!(笑)
「おいひふみ!せっかく来てくれたお客さんおどしてどーすんだよ!」
「ひどいなあ、トウゴちゃんってば〜。脅してなんかないよ?
ただ僕は・・・くっくっく・・・歓迎しようと思っただけで・・・」
甘い声に、不思議な声。
振り向くとそこには、真っ白なコックさんの衣装をきたお兄さんが二人、立っていた。
なんで。
どうして。
この船は、コックさんまで美形ぞろいなのー!!
「おっ、セージじゃねーか。また来たのか」
「しょうがないっす、トウゴさん!だってトウゴさんの作るもの、全部おいしいんっすから!」
満面笑顔の、セージくん。
よっぽどおいしいんだろうなー。楽しみー♪
「で。こちらが俺達の船長?」
「あ、はい!すみません、自己紹介が遅れちゃいました。
って言います、よろしくお願いします」
「俺はトウゴ・アライ。この船のコックだ。よろしくな」
・・・うわー、すごい!トウゴさんってば、コックさんなのに
どうしてこんなに声が甘くて素敵なの。
「ん?どうした。何かおかしなことでも」
「いえ、その・・・トウゴさんの声に、聞きほれちゃって」
うそつくわけにもいかないもん。
正直に答えた私に、トウゴさんは一瞬驚いた顔をして、それからにっこりと笑ってくれた。
「ありがとな。でも、料理の腕のほうも確かめてくれよ。
声のほうは個人的に・・・そうだな、後で俺のところに来てくれれば、
何だって囁いてやるぜ?」
「・・・!」
「トウゴさん、そのくらいにしておいてもらえますか?」
「はいはい。相変わらずきちょうめんだな、カツロウは」
「いえいえ」
さりげなく私の隣に近づいたのは、気のせいじゃない・・・よね?(笑)
「そうだよ〜、トウゴちゃん。僕にも自己紹介させてくれないと、のろっちゃうよ〜?」
え、の、のろい??
私は声の主をよーく見た。
私と同じ黒髪、さらさらストレートへア。
三味線の音で登場するのが不思議にぴったりにあう、なんだか変わった雰囲気のひと。
「僕の名前は、皆川ひふみ。船長がお菓子が大好きと聞いて、いろいろ
作ってみたんだけど・・・よかったら、後で食べにきてね」
「こいつはこんな風だけど、甘いもん作らせたら右に出るやつはいないんだ」
「そうなんだよ〜。僕は、パティシエなんだ・・・くっくっく・・・」
この笑い方、なんだかくせになりそうなくらいに楽しそうなんだけど・・・(笑)
あ、でも。
「嬉しい!私、ホントにお菓子大好きなんです!!
やったあ、パティシエまでいらっしゃるなんて、夢みたいです♪」
「そんなに喜んでもらえると、僕も嬉しいよ〜。・・・これは、お近づきのし・る・し」
ぽんっと目の前に現れたのは、とってもとってもおいしそうなクッキーだった。
「あ、てめ、抜けがけ!」
「ふふーん、トウゴちゃんもがんばってね〜。くすくすくす」
「ったく、わかったよ。
えっと・・・さん、でいいか?」
「はい、もちろんです」
「こいつに負けねーくらい、うまい料理を作って待ってるから、絶対来てくれよな」
「・・・はい!」
お名残惜しいカフェを後にして、私達はクルーたちの個人部屋へと向かった。
「さんのお部屋は、私達の部屋の奥にあります。
入り口付近には警備担当者の部屋がありますので、何があってもお守りすることが
できます」
ということはオスカーさんも近くなのか・・・・別のものから守ってくれる警備のひとも
ほしいわ・・・(笑)
「何人たりとも入れないように、万全の体制にしておきますので、ご心配なく」
「・・・ま、オレ以外のやつらに、だけどね♪」
「え?」
「い、いつの間に!」
「あー、やっぱりこんなところにいたんですねっ。デッキにいないと思ったら」
「ごめんねえ。オレ、ああいう場所キライなんだよね」
なぜか私の部屋のベッドでくつろいでいる、こ、この人はいったい誰?!
「ハーイ、チャン。はじめまして♪」
「はじめまして、あの・・・」
「あ、オレ?オレはねー、さすらいの旅人・・・」
「ではなくて、この船第二の怪しいヒト、チヒロ・コバヤシさんでーす!」
「セージクン、的確な紹介どうもありがとう。
このお礼はあとでじーっくりしてあげるからね☆」
「うっこわ・・・」
あのセージくんが、ここまで怖がるなんて。
っていうかどうして、
「私の部屋にいるんですか?」
「え、これはオレの部屋だけど?」
「そ、そうだったんですか、ごめんなさい!」
やだ、入るところ間違えちゃったのね。
私ったら・・・
「そんなはずはないんですが」
カツロウくんと一緒に、
慌ててドアを確かめようと、一歩部屋の外に出た瞬間。
「・・・きゃあっ?!」
「ふふー♪ひっかかった。
・・・罠だよ?」
外に出たはずの私は、いつの間にか部屋の中で。
「開けて下さい!」
「チヒロさん、だめっすよー!それはやばいですよー!!」
・・・チヒロさんに押されたセージくんとカツロウくんは、ドアの外。
ちなみに私は動けないように、いつの間にかチヒロさんの手がしっかり肩に
かかっていたり、する。
「・・・聞こえないねえ。
罠にひっかかる君たちが悪いんだよ♪
さて、と。
・・・チャン?」
「は、はははははいっ?」
にっこり、と、笑う。
・・・かっこいい・・・
ああでも、だけど、この笑顔にだまされちゃいけないのね、きっと・・(笑)
「やっとふたりっきりになれたねぇ♪」
「・・・え?」
「オレ、ずーっと待ってたんだよ。新しい船長さんが可愛らしい女の人だっていうから、
それはもう楽しみで楽しみで。
なのに、オレに逢いにきてくれたのは最後だなんて・・・悲しいなあ」
「あ、ご、ごめんなさい!」
「ううん、いいんだよ。こうして逢いにきてくれたから。
でも。
・・・こんないじらしいオレのお願い、聞いてくれるよね・・・?」
じりじり、とせまってくるのは綺麗なチヒロさんの顔。
ああ、私。
一日目にして、絶体絶命の予感・・・・(笑)
Continue...
- あとがき
- はー、ようやく全員登場していただきました!
- みなさまのお目当ての方がでているといいんですが・・・
- おもいっきり、趣味がでていますね(笑)
- さあ朱さん。最後に登場のこの方、あなたなら
- わかってくれると信じてるからねー!(笑)
- 他の方もわかってくださる方、いらっしゃるか心配しつつも書いて
- しまいました。
-