むかしむかし・・・といっても、そんな前ではない時のことです。
ある雨の日の朝、ある一軒家の前に、小さなかごがおいてありました。
一通の手紙とともに、くるまれていたのは。
それはそれは可愛らしい、二人の赤ちゃん、だったのです。
「い、いっけなーい、遅刻しちゃう!」
「まってアンジェ。私まだ朝ご飯食べてないー」
「何やってるのよアンジェリーク。もう、ほら、早く!」
セーラー服をなびかせながら、急ぐ少女と、
のんびり食卓についている少女のやりとりが一家に朝を告げる。
いつもとかわらない、朝の風景。
「そんなに急がなくても大丈夫だぞ?今日は俺が非番だから、送っていってやるさ」
がさり、と音をたてて新聞を読みながら、ヴィクトールは最愛の妹に声をかけた。
「そうだよ。もっとゆっくり顔を見せてほしいな、全く」
「あー、セイランに同感ですね〜」
紅茶をお湯飲みですすりながら、ルヴァもうんうんとうなずいた。
「ふわあ、おっはよー☆
なーにアンタたち、もう出かけるの?早いねえ」
軽い足取りで階段を降りてくる、早朝なのにしっかりとメイク済みなオリヴィエが
眠たそうに話しかけた。
「オリヴィエ兄さん、私たちもう高校生なんだからね、この時間は当たり前なの!」
茶色の髪をゆらして、アンジェと呼ばれた勝気そうな少女が大きな声を出した。
オリヴィエはその声にあわせて、可愛くて仕方ないというように少女の髪をくしゃっと撫でた。
「あ、リュミエール兄さん、この紅茶おいしいわ♪」
ふわふわした金色の髪を揺らしながら、アンジェリークと呼ばれた少女が微笑む。
それだけでその場が、しあわせな雰囲気に包まれる。
(というか同席していた男性陣の顔が緩みっぱなしになる)
「そうですか?それは何よりです。
あなたたちに喜んでもらえることが、何よりのしあわせですからね」
にっこり。
近所の奥様方がみたらますますファンが増えそうな笑顔を、二人に向ける。
一瞬静かになったのもつかの間。
「・・・っくしょー、遅刻しちまうぜ!!」
どたどたっと、あまり軽やかでない音で階段を駆け降りてくるのは、いつもの二人組。
「だからあんまり夜遅くまでインターネットしてるのやめろって言ったろ」
「るせー、ランディ!楽しーんだからしょーがねーだろ。
おい、メシ!早くしてくれよ!」
「はい、ゼフェル兄さん。用意できてます。ちなみに学校にいく支度も済んでます」
「お、おう・・・わりいな、ティムカ」
「いえいえ。そのかわり今度、僕のパソコン鍛えてくださいね?」
「ったくおめー、抜け目ねーよな」
「それはもう♪」
キッチンから二人分のプレートをもって、ひょいっと顔を出したのは
もうすっかり支度済みのティムカ。
「おはよう。朝から賑やかなことだな、アンジェリーク、アンジェ」
「・・・朝がきたか・・・」
「おはよう、ジュリアス兄さん。もう出勤の時間?」
「珍しいのねクラヴィス兄さん。ひょっとして徹夜なの?」
「・・・ああ・・・」
「お疲れさま。次回作、楽しみにしてるから♪
今、お茶入れるから、座ってて」
同じくキッチンから支度を済ませてでてきたのは、
スーツがこの上なく似合うジュリアスと、徹夜明けでけだるげなガウン姿のクラヴィス。
これで双子というのだから、やはり遺伝子とは個人別だなということを考えさせられる。
「ああ。この時期は予算編成があって忙しいからな。今日も何時に帰れるか
わかったものではない」
「そう、なんだ・・・宿題教えてもらおうと思ってたのにな」
アンジェが珍しく、少しだけしゅん、とした面持ちになる。
「今日は私がいますよ。私でよければ、教えてあげます」
「エルンスト兄さん!」
きらきらと輝く青の瞳に、エルンストは照れたようにこほん、と咳払いをした。
「あ、ずるい兄さん。僕だってアンジェに教えてあげたいよ」
いつの間にか後ろからぎゅっと抱きしめているのは、
最近ようやく男の子に見られるようになったと昨日喜んでいた、マルセル。
「ずるいのはマルセル兄さんだよ!じゃあ僕、アンジェリークに抱きついちゃうもん♪」
楽しそうな声をあげてアンジェリークを抱きしめたのは、燃えるような髪の色と優しい面持ちが
印象的な、末の弟のメルだった。
「・・・おいおいおまえら、そろそろ二人を離してやらないと、本当に遅刻するぞ?」
ようやく新聞をたたんだヴィクトールが、苦笑いしている。
「えー、もうそんな時間なの?」
「ゼフェルもティムカも送っていってやるから、早くしろ」
「いいよ。場所ねーだろ」
詰めえりをとめないまま、ゼフェルがパンをかじりながら鞄を抱えて走り出ス。
「でも、兄さん」
「そうですよ、二人とも。僕たちは自力で何とかしますから」
「ティムカ兄さんの言う通り。二人に遅刻させたくないから、メル、がんばって走るよ!」
「そうだよアンジェ、アンジェリーク。二人だけでも早くいきなよ」
「・・・可愛い妹に遅刻させらんねーよ。じゃ、行ってくる!」
同じ学校に通う四人の兄達は、一斉に玄関を飛び出していった。
「お兄ちゃんったら・・・」
「さすが兄だよねー」
「でも、オリヴィエ兄さん。行く場所、おんなじなんだよ?」
「何を言ってるのさ、アンジェリーク。
二人に電車なんか乗らせたくないんだよ、本当は」
メルのかわりにアンジェリークをぎゅーっと抱きしめながら、
セイランはその美しい顔を曇らせながらため息をついた。
「可愛いアンジェとアンジェリークが変な男に目をつけられでもしたら
どうするのさ。あの4人じゃまだまだ頼りないし。
僕が毎朝送っていってあげたいくらいだよ」
「しなくていいよ!」
「っていうからあきらめたけどさ・・・」
さも残念そうな顔をしているセイランに、エルンストが横から声をかける。
「というか、別に高校にいかなくとも、勉強は私とルヴァ兄さんで教えてあげられますし」
「そうですねー、二人の学校は共学ですしねえ」
「・・・余計な輩に大事な妹を見せること自体、屈辱的ですし?」
あくまでもにっこりと笑うリュミエールに、二人は頭を抱えつつも、
しかたないなという表情で、その両頬にキスをした。
「・・・あのね、お兄ちゃんたち。お兄ちゃんが心配してくれるの、私たちとっても嬉しいの」
「でもね、もう高校生なんだから、私だってアンジェリークだって
しっかりやれるっていうところ、お兄ちゃんたちに見せたいの!
いつも迷惑かけてばっかりじゃ、やだもん」
「そうだよ。お兄ちゃんたちが大好きだから、あんまり迷惑かけたくないの」
『アンジェ、アンジェリーク・・・!!』
歓喜の瞳で二人を見つめる兄達には、たぶん妹の言っていることはよく
聞こえていないと思われる(笑)。
その証拠にジュリアスは出勤前だというのに二人の鞄を大事そうに
玄関に運び、ヴィクトールは軍隊で鍛えた足で即効で車のエンジンをかけにいき、
リュミエールは二人のお弁当をクラヴィスに手渡すと、
クラヴィスはジュリアスについて玄関へと向かう。
妹のこととなると、無敵のチームワークを発揮するのであった。
そう。
これが、一家の変わらぬ朝の風景。
Continue.....
あとがき
- 記念企画の第一弾は、前から書いてみたかった、シスタープリンセス逆バージョン、しかも
- 弟ではなく全員おにいさんもの、です。これは、未稚流ちゃんと朱さんがうちにとまりに
- きてくれたときにお話してたんですが、とうとう実現しました。ありがとう、二人とも!!
- 二人がいなかったらこれはかけてません(笑)
- 私は長女なんですが、前々からお兄さんがいたらなあってずっと思っていて、
- シスタープリンセスというゲームの存在を知ったときは、
- これのおにーさんバージョンがあったら絶対絶対買うのに!!と
- 心のそこから思ったことがあります(笑)みなさまどうでしょう。
- なかなか最初ということで、溺愛ぶりがかけませんでしたが、
- これからみなさまに本領を発揮していただこうと思っています。
おまけ〜ないしょでもない(笑)設定集〜
長男 ヴィクトール 頼りになる軍隊勤めのおにいさん。あんまり家にかえってきません
次男 ルヴァ 学者。みんなの相談役
三男・四男(双子)ジュリアス 厳しいお目付け役 国家公務員 クラヴィス マイペースな小説家
五男 エルンスト 家の会計係・しっかりもの。相変わらず研究者
六男 リュミエール 音楽科・音楽大学講師 手先が器用なおかあさんがわり
七男 オリヴィエ メイクアップ・アーティスト、モデル そのまま(笑)素顔は家族のみぞ知る
八男 セイラン 気まぐれ大学生・自由業なので家にいること多し
九男 ランディ 元気な体育会系大学生
十男 ゼフェル ちょっとひねくれぎみ高校生・パソコンに強し
十一男 ティムカ リュミエールに次ぐしっかりものの高校生
十二男 マルセル 可愛らしいと評判の高校生、実は影の実力者?
十三男 メル マルセルとともに女の子と間違われるが、ちゃんと高校生
- アンジェリーク 金色の髪のアンジェ。性格は元気・ふわふわ・天然・優しげ
- アンジェ 茶色の髪のアンジェ。勝気・せっかち・しっかりもの・ホントは少し気弱
・・・あんまり設定になってませんね・・・(笑)