さて、場所と時間を変えよう。
ヴィクトールのおかげでなんとか高校についたアンジェリークたちは、
ぎりぎりの時間に自分たちの教室へと滑り込んだ。
「すみません、遅れました!」
「先生ごめんなさい」
「い、いや、まだ始まってないからいいぞ。席につけ」
しっかりばっちりご丁寧な指導とお願いをヴィクトールとルヴァ、ジュリアスが行った
結果、校長はおろか先生にまでアンジェ防御網(前回の教訓がここに・笑)が張られているせいか、
先生は謝る二人に慌てて声をかけた。
『はい』
と、そこには。
2つの、見慣れない顔が、並んでいたのである。
1人は、それはもうにこにこと、怪しいくらいの笑みを浮かべた明るい雰囲気の緑の髪の青年で、
もう1人は、半分仏頂面の、それでも皮肉げな笑みを浮かべた銀の髪のアウトローな雰囲気の青年。
「?あれ、アンジェ」
「なに」
「・・・転校生にしては、大きい人たちだよね・・・?」
教室のドア付近で立ち尽くしていたアンジェリーク達に、教室内から爆笑がわく。
頭を抱えたアンジェは、アンジェリークの手をひっぱって
机に座らせると、しょうがないな、という顔つきで話しだす。
「あのねーアンジェリーク。
アレがどう私たちと同じに見えるのよっ!
どう考えたって、いいとこ教材の売り子か教育実習生でしょうが!」
「え、そ、そう?」
首をかしげるアンジェリークに爆笑しながら、二人が近づいてきた。
「ピンポーン、茶色の髪のべっぴんさん、大正解やー♪」
「クッ・・・言ってくれるな、売り子かよ俺ら」
教壇の黒板には、もう既に名前がある。
「えっと、チャーリー先生に、アリオス先生?」
「そうや、金色の髪のべっぴんさん。よろしくな!」
「今日から2週間教生としてこのクラスにきたアリオスだ・・・よろしく」
取りあえず席についたアンジェとアンジェリークは、なんとか間に合ったことに
感謝しつつ、自己紹介する二人の教生をぼんやりと眺めている。
「・・い、おーい、アンジェ」
「は、はい何でしょう先生!」
「どうした、珍しくぼうっとしているな。
すまないが委員長として、後でチャーリー先生とアリオス先生に、
クラスの説明と今後のホームルームについて相談してくれないか」
「わかりました」
しっかりもののアンジェは、何気にクラス委員長だったりする。
そのまま一限目、二限目と順調にすごして、休み時間にはいつものように
ゼフェルやマルセル、メルにティムカが遊びにきて。
そう、ここまでは普段通り、だったのだ。
お昼休みが、くるまでは。
「ごめんねアンジェリーク、今日はあの二人の先生に説明がてらお昼食べてくるね」
「うん!ゼフェル兄さんたちにも言っておくね♪いってらっしゃーい」
すまなさそうな顔で教室を出たアンジェが向かったのは、
約束の場所、なぜか屋上。
「チャーリー先生、アリオス先生?
何だ、まだ来てないの。クラスが長引いてるのかしら」
リュミエールお手製のお弁当を開くと、アンジェはぺたり、と屋上に座り込む。
(あー、空きれー・・・)
ぼうっと眺める空はとても青くて、思わず見とれてしまう。
そうして、しばらくしたころ。
「・・・って!い、今何か来たで!虫やろか」
「おいっ、静かにしてろ!」
向こうでどう考えてもばたばたしている(笑)のが、アンジェの耳に入る。
「・・・先生がた・・・?」
振り向いたアンジェの視線の先には、給水塔の影に隠れていたであろう二人の姿があった。
「ほら、ばれちまったじゃねーかよ!ったく」
「すまんすまん〜、つい驚いてもーたわ」
チャーリーがアリオスに頭をはたかれながら、アンジェに向かって歩いてくる。
「先生、来てたなら声をかけて下さればよかったのに」
「いや、な。アンタがな」
「・・・空を見つめる姿が綺麗で、見とれてた。悪いな」
「え、ええっ!!(///)」
「あー、アリオス卑怯や〜!!俺が言おう思てたんに。
てな訳で俺にも言わせてや?
アンジェがあんまり綺麗に空を眺めとったもんやから、つい声かけそびれて
しもたんや、ごめんなホントに。俺らが呼びだしたんにな」
「いえその、それはいいんですけど!!」
「んー、何でそないに顔赤いん?」
思わずうつむいたアンジェの顔を、チャーリーが覗き込む。
「だ、だって当たり前です!そんなこと、言われたことないですもん!」
そんなに褒められるなんてもう、先生口がうまいですねーなんて
呟くアンジェに、二人は顔を見合わせた。
それもそのはず。
アンジェやアンジェリークにそんな軽口を叩こうものなら、恐ろしい制裁が
待っているとほとんどの人が覚悟していたのだから(笑)。
「・・・あのな、アンジェ」
「待て。今度は俺が先や。・・・今までアンタが逢うとった男の目、
節穴やったんと違うか?
こんなに綺麗なアンジェに、そないな事もいう奴がおらへんかったなんて、
意気地無しっちゅうか、なんというか・・・まあ、ええわ。
俺らは、違うから」
「え、あの、チャーリー先生。私、先生が何をおっしゃりたいのか、わかりませんけど」
「つまりな、簡単に言えば」
「俺は」
「俺も」
『アンジェに一目惚れしたってことだ(や!)』
「・・・え・・・えーっ!!!」
真っ青な空の下、屋上の昼下がり。
アンジェの驚きの声が、空に吸い込まれていった。
「アンジェ、おかえりー。
あれ、どうかしたの?」
「・・・うん・・・でも、後で話すね・・・」
「そう?あ、もうクラス始まっちゃうよ、急ごう」
「・・・うん・・・」
珍しく覇気のないアンジェの姿に首をかしげながらも、
二人は無事に午後のクラスをこなした。
そして、放課後。
「・・・ごめんアンジェリーク、先に帰ってて。
今日、委員長会議あるの忘れてた」
「あ、じゃあティムカ兄さんと一緒だね。二人で帰ってくる?」
「うん。アンジェリークは、えっと」
「部活してくね。マルセル兄さん、今日行ってると思うから」
「・・・じゃ、例の話は今晩ね。誰にもそれまで言わないでね」
「う、うん?」
「アンジェー!!会議いこっ♪」
「レイチェル・・・」
「な、なになに?」
隣のクラスの委員長、アンジェの仲良しであるレイチェルが駆け込んでくる。
「アンジェリーク、どうしちゃったのアンジェ?」
「道すがらゆっくりお話聞いてあげて。私もまだしらないの」
「ふーん、いいけどさ・・・じゃ、いこアンジェ。悩みならこのレイチェルにおまかせだって!」
「うん・・・」
それでもやっぱり覇気のないアンジェの肩をだいてレイチェルが教室を後にすると、
アンジェリークも鞄を持って、元気よく歩き出した。
行く先は、アンジェリークとマルセルが所属する園芸部のお庭。
「えっと、今日のグランドは・・・あー、サッカー部だ♪
そういえばランディ兄さん、サッカー部だったよね。
それ以外もすごく上手だったけど」
庭に行くには、学校で一番広いグランドを横切らなくてはいけない。
アンジェリークはいつものように、グランドで活動する運動部を
眺めながら、とことこと歩いていた。
と、その瞬間。
「危ないっ!!!」
「え?」
振り向いた先には、サッカーボール。
思わず目をつぶったアンジェリークが、衝撃を覚悟した、次の瞬間。
ふわりと宙を舞う感覚があったかと思うと、痛みの代わりに
ボールを蹴る音がアンジェリークの耳を掠めた。
「大丈夫か、お嬢ちゃん!」
「ふえー・・・・??」
「怪我は!怪我はしていないか」
「あの・・・えっと、私?
・・・あー、そうか!!」
「??」
「ボールにぶつかりそうになって、
今あなたの腕の中にいるということは・・・
私、あなたに助けていただいたんですね。ありがとうございます!」
「お、お嬢ちゃん・・・びっくりしたぜ、どこかぶつけたのかと思った」
「すみません。でも、助かりましたー♪」
あくまでマイペースに微笑むアンジェリークに、
アイスブルーの瞳の動きが一瞬、止まった。
「お嬢ちゃん・・・名前は」
「アンジェリークって言います。本当に、ありがとうございました!あの、あなたは?」
「・・・すまない、俺としたことが先に名乗らないなんて、
よほど動揺してるようだ。
俺の名前はオスカー。サッカー部の顧問だ。
本当は大学の講師をしているんだが、しばらくの間後輩に頼まれた」
「そうなんですか」
「ボールはサッカー部の一年が蹴ったんだ、すまない。
でも・・・感謝しなくてはいけないかも、しれないな」
「え?」
オスカーと名乗る赤い髪の青年は、全ての女性が惚けてしまうであろう微笑みを、
腕の中のアンジェリークに向けて囁いた。
「・・・まさかこんなところで、君みたいな人に逢えるとは思っていなかったぜ、お嬢ちゃん?」
Continue....
- あとがき
- すみません、遅くなってしまいましたが、ようやく本筋に入りました!(笑)
- お兄さんとして登場しなかった残りの三人に登場願いましたが、
- カップリング的にみなさまの予想はあたりましたでしょうか?
- さてさてお兄さんたちは今回出番なしでしたが、次からの反撃やいかに・・・
- 誰に誰を当てようか、書いてて楽しみですっ(笑)
-