「・・・ただいま・・・」
「ただいまー♪」











『おかえりアンジェ、アンジェリーク!』




家の扉を開けると、声が揃ってかえってくる。
そこにいたオリヴィエが、早速アンジェの様子がおかしいことに、気がついた。





「あれ、アンジェ。今日委員会じゃなかったっけ?」
「あ、うん・・・行って、きたよ」
「そう?なら、いいんだけど」
「私、ちょっと部屋にいるね」








ふらふら、と自分の部屋に入っていくアンジェを訝しげに見ている
リビングの面々であった。



「今日も疲れたよー」
「はい、どうぞアンジェリーク」
「わあ、セイラン兄さん、ありがとう!」
「あ・・・れ、アンジェリーク!!これ、どうしたの!!」
「あ、いけない」

ティーカップを差し出したセイランの目に入ったのは、
少し血がにじんた足と、埃のついたスカートだった。めざとい・・・(笑)
ではなく。








「怪我、してるじゃないか!」
「なにいっ、怪我だとうっ?」



玄関から声がしたかと思うと、いつの間に帰ってきていたのか
ヴィクトールがリビングに駆け込んできた。






「一大事だ!薬箱だ薬局だいや医者だ!!」
「落ち着け、ヴィクトール」

そういうクラヴィスの手にはなぜか意味もなく絆創膏が握られていたり(笑)。
「そうだよ兄さん。ああでもどうしよう、アンジェリークが怪我したなんて、
メル泣いちゃうよう」
「わあ、泣かないでメル〜」
「あ、あの私、だいじょうぶだよ?」
「何いってるのさ!ああ、こんなになって・・・(涙)」



オリヴィエとマルセルも入って、あっという間にリビングは大混乱の様相を呈してきた。
と、次の瞬間。








「・・・ただいま戻りました」
「ただいま帰りましたよ〜」

『二人とも、いいところに!!』




エルンストとルヴァが、リビングに入ってくると、残りの面々は
安堵したように声を出す。
ちなみに二人とも医者の免許を持っていたりする。








「アンジェリークが、アンジェリークが大変なんだ!!」
「どうしたのですかランディ・・・って、ああ!」
「なんてことだ・・・アンジェリーク、すぐに私が治してあげますからね。
ルヴァ兄さん、すぐに支度を」
「ええ、わかりました」








「・・・私、だいじょうぶなんだけどな・・・」





かけずりまわる兄達をよそに、アンジェリークは一人ぽつんとリビングに
取り残されていた・・・(笑)。



















「さて、と。これで大丈夫です。後も残りません」
「本当か、エルンスト」
珍しく顔色が青いヴィクトールに答えると、エルンストは残りの包帯を巻き終えた。






「でも、どうしたのですか〜?」
処置用具箱をしまいながら、ルヴァが心配そうにたずねた。

「別に何があったわけでもないんだけど、どうしたのかなあ。
・・・あ!
そっか、あれかも」

『あれ?!』













「・・・あのね、私、今日ね」
「続きは私がお話しましょう、アンジェリーク」






にーっこり。
笑顔の割には笑えない声音がしたかと思うと、
しずしずと音もなくリビングに入ってきたのは、誰あろうリュミエールだった。
その笑顔に、皆一様に何かがあったと察知したのか、
こくこく、と頷いた。




「え?リュミエール兄さん、どうして知って」
「帰ったぜ!!おい、大変だ!!・・・って、あれ?
どうしたんだみんな、黙っちまってよ」
「あ〜、ゼフェル。お帰りなさい。
実はリュミエールが、大事な話があるそうなんですよ」
「んだよ、俺もすげー大事な話があんだよ!アンジェのことだっ」
「アンジェの?確かにあの子、さっきの様子はどう考えてもおかしかったね」
「え、そうだったの!?
ごめんねお兄ちゃん、私、アンジェのところにいってくるね」
「優しいな、アンジェリーク・・・では、頼む」
クラヴィスに頷くと、アンジェリークはリビングを後にした。

「・・・アンジェリークは同席していないほうが都合よかろう」
「おう。
丁度いい。ジュリアスも戻ったな。これで全員揃った」
「ただいま戻った。
どうかしたのか?」
「まずはこちらに、ジュリアス兄さん。僕もアンジェについては、元気がないと思っていたんです」
ティムカの発言に驚いたジュリアスは、背広のままリビングの椅子に腰掛けた。










「一体、何が起こったというのだ?」
「・・・まずは私からお話させて下さい。
先ほどまで、ご近所の奥様方と偶然お会いして
少しばかりお話してきたのですが」
「偶然っていうか、いつものことだよね」
「・・・ランディ?」
「あ、はい、口挟んじゃってごめん兄さん!」

再び微笑むリュミエールに、ただごとではないと悟ったランディは
慌てて口を閉じる。






「なんと今日、アンジェリークが赤いスポーツカーで帰ってきたのを
見た、とおっしゃるのですよ」






『・・・え?』
「アンジェリークは優しい子ですが、だからといって警戒心がないわけでは
ありません。
そのアンジェリークが見ず知らずの人間に送ってもらうはずなどありませんから、
私はその相手の特徴を聞いてみました。
・・・ジュリアス兄さん。
覚えていらっしゃいますか?
兄さんの大学時代の後輩で、私やオリヴィエと同学年だった、紅い髪に青い瞳の」
「オスカーか!」
「えっ、何でそこでオスカーがでてくるわけ?!
っていうか、あいつは・・・」

「そう。まさに『女たらし』の代名詞として名を馳せていた、オスカーです。
・・・考えられませんね、アンジェリークに近づくなんて・・・」




一変してものすごい形相(笑)になったリュミエールに皆戦慄を覚えたが、
危機感は全員同じである。

「でも、どうしてそこにオスカーが出てくるのだ?」
「あ、そういえば俺の部活のコーチしてくれてるけど」
「なんだとランディ、それは本当か!」
「はい、ジュリアス兄さん」
「そうだったんですね・・・思わぬところに潜んでいたとは」








既にまるで悪人扱いである(笑)。




「僕も覚えてるよ、数々の女性と浮き名を流してたあのオスカーさんだよね?」

皮肉げな視線でセイランが呟いた。
「どうして送ってもらっていたかはわからないのですが、ランディの話から
学校で何かあったのは一目瞭然です。しかもアンジェリークは、
怪我したというじゃありませんか。
これは、調べてみる必要がありそうだと、そう思いませんか?」
『その通り!』

満場一致である(笑)。
















「それじゃ次は、ゼフェルの報告といきましょうか〜」
「おう。
・・・アンジェについてだ。
今日俺のクラスの奴が、さぼって屋上にいってたらしいんだけどよ」
「お前じゃないだろうな」
「ちげーよ!
それで、聞いちまったらしいんだ。
・・・アンジェが、誰かに告白されてたって」
「それは・・・一体、誰にですか?」
ティムカの瞳がきらーんと光った(笑)。
「それが、二人だっつんだよ。
しかも、教生。
ほら、最近来ただろ?
アリオスと、チャーリーっての。妙に背ぇ高くって気にいらねー奴ら」
「それはゼフェル兄さんにとって、でしょ。
二人ともかっこよくて優しいって一日で評判じゃない」
「それは本当ですか、マルセル?」
「うん、ルヴァ兄さん。すごく素敵だって。僕も、とってもいい先生だって思ったよ。
・・・でも。
アンジェに手をだそうとするなら、話は別、だよね・・・ふふふ」
「ですね」
「だよな」




にこにこにこ、と笑う年少組を頼もしくもあり怖くも思う兄達だったが(笑)、
それはさておき、ヴィクトールが心配そうな表情で口を開いた。









「そうか、それは大変なことになったな。
アンジェも、アンジェリークも」
「これは対策を練らないといけませんね〜」
「ルヴァのいう通りだ。
皆、これから時間はよいな?
作戦会議を開きたいのだが」
「意義無し」
「意義なーし!」






リビングに集まる兄達の長い夜と長いたたかいの日々が、はじまろうとしていた。


Continue...






あとがき
本当に久しぶりの更新となりました(年内にできてよかった・・・笑)シスプリアンジェ、
いかがでしたでしょうか?
今回はブラックリュミ様が活躍気味でしたが、これからどんな作戦が練られることに
なるのでしょうか。楽しみです。
それにしても、シスコンのお兄さんって、書いてて楽しいですねー(壊し具合が・・笑)。