御伽高校草子

第壱幕 登場人物4人

高校生にしては異常に体格のよい青年が、大股で街中(?)を歩いていた。
紀州藩立御伽高校の学生章を襟元に輝かせている。
まだ、汚れていない学生章とは対照的に、その制服はところどころにほころびが目立つ。
本人はまったく気にしていないのか、無頓着なのか、貧乏なのか・・・
「こんちわ〜」
青年というよりも、少年顔の巨漢の学生はとある木造一軒家へ入っていった。
「「いらっしゃいませ」」
ほんの少しのずれも無く、おそらく一卵性双生児であろう店員が彼を出迎えた。
「伸ちゃんは?」
「いま、工房に居られます」
「金太郎君の道具が一番損傷がひどいと、しかめっ面でしたよ」
最初に答えたのが、麻葛(まくず)。次が山女(あけび)。
「うっ・・・。仕方ないやん。そういうもんなんだもん」
巨漢の青年金太郎がそのでかい身体をちぢめて、イジケテみせる。
「あほう、にあわんことすんな」
あまり抑揚のない口調で、奥から日に焼けた青年が出てきた。
怒っているわけではなさそうで、普段からこのような話し方らしい。
「お前のだけ打ち直しじゃ、莫迦たれ。もっと使い方を考えろ」
関西人にとって、罵声はコミュニケーションの一部である。本気で怒ってるわけでは・・・
「・・・ごめん」
さらにしょぼくれる巨漢の青年であった。
この工房の主(ぬし)であり、金太郎の幼馴染でもあり、高校の先輩でもある青年。
名前を大岡伸(おおおかしん)という。
何代にもわたって、自社仏閣の古具・民具・法具・刀剣などを改修・修繕を営んでいる数少ない
職人の一族の次期当主(予定)である。
ゆえに、年収壱千萬円を超えるのである!。・・・・( ゚д゚)ウラヤマスィ…
「で、ちゃんと金持ってきたんだろうな?」
金太郎が修理を依頼した道具の修繕費のことで、決してカツアゲではない。
なぜか、しぶしぶと内ポケットから封筒を取り出す金太郎。
すぐに、伸が麻葛と山女に目で合図を送る。
伸が封筒を受け取ると同時に、スッと金太郎の両横に並ぶ二人、
「えっ?!」
両腕をつかまれ、両膝を後ろから蹴られ肩を押さえつけられ身動きできない状態にされる。
「痛い、いたい、やめて〜」
二人がかりで押さえつけられながらも、はねかえされそうになる二人。
ものすごい力である。
伸が玄能(金槌)で金太郎の頭をこつく。
「痛って〜〜〜〜!><」
さすがに抵抗することを止めた。
「すぐにバレる小細工しやがって。お前のおふくろさんから全額きっちり持たせたって
連絡受けてんねん。どこへ隠したんや?」
「・・・使った」
間髪入れずに玄能が振り下ろされた。
Gho。
鈍い音というか、振動が店内に響く。
「っっって〜TT」
涙目の巨漢(少年顔)。
「莫迦になったらどうすんだ!?」
「これ以上、」
「莫迦には」
「なりません」
伸・麻葛・山女の順にまるで練習したかのように滑らかによどみなく言い放たれた。
「・・・・・」
返す言葉を失った金太郎。
伸が金太郎の後ろポケットに手をのばした。
「あ、止めて、エッチ。うご!」
何度殴られても懲りてない。まあ、伸も本気で殴ってるわけではないので当然といえば当然
なんだが。
封筒から抜き取られたお札の1枚が後ろポケットから姿を現した。
「ふん、そんな痛い思いまでしてネコババしたいんか?」
「したい!!うがっ!!!」
4発目が振り下ろされる。
ようやく、解放される巨漢の青年(童顔)数え17歳、高校1年生、遠山金太郎。
封筒と折りたたまれたお札をまとめて麻葛に手渡し、工房へ戻る職人、数え19歳、
高校3年生、大岡伸。
ちなみに、麻葛・山女は伸の縁者で数え16歳。店番兼助手。高校へは通っていない。


 紀州藩立御伽高等学校
<ここからが本章だったりするわけですが、気にしないでください。<m(__)m>>
公立にもかかわらず、学園の生徒の八割が園内の寮にて暮らしており、伸は数少ない通学派である。
いつも本鈴ギリギリの時間に登校する彼らは、全員が、全力疾走である。
ちなみに遅刻認定される生徒は、意外と少ない。
その訳は・・・。

「やべぇ。俺、あと三日しかねぇ!」
「はいは〜い、あたし、まだ十日以上残ってる〜♪」
「・・・殴っていいか?(怒)」

ちなみに、二学期が始まったばかり。
一年生ではあまり見られない光景が、二・三年生では日常的に繰り広げられていた。

「欠席可能日数の確認」

出席ではなく、欠席。
進級に必要な出席日数が足りない生徒は、すでにあきらめ組みである。
なぜなら、

「補習?じゃあ、俺の休みはお前がくれるのか?」
以上、先生の主張でした。

冗談なのだが、なぜか本気にする生徒が多いのだ。
ゆえに、二回目の三年生をした生徒も多い。
伸もその一人である。
なかには、律儀に各学年を二回ずつ経験している生徒も居たりする。
そんな中で柳生智春(やぎゅうともはる)は三年できっちり三年生になった数少ない生徒の
一人であった。
伸と同じクラスの彼女は同級生のクラスメイトがほとんど皆、年上という状況の中で、
少し、肩身の狭い思いをしながらも懸命にがんばっていた。
もっとも、同級生の先輩は皆、優しかった。

午前中の授業が終わり昼休み中に校内放送が鳴り響く。

『いろは48 いの一番隊員は今すぐ校長室まで出頭して下さい。繰り返します・・・・』

「おいおい、いきなりかよ・・・」
教室で思い思いの昼食をとってる最中の呼び出しである。

「よかった〜、俺じゃなかった」
「莫迦、喜ぶな!」
伸は最初から教室に居なかった。智春は一人、クラスの仲間からの熱い視線と応援を浴びながら、
持参の弁当箱を閉まって教室を出て校長室にむかった。

「そんな顔しないの」
いの一番隊の隊長である大岡伸(二年生を二回経験済み)は詳細をあらかじめ校長先生から、
言い渡されていた。
そんな顔とは、一言で言えば仏頂面である。
彼は、三年生を二回するつもりは、まったく無かった。
にもかかわらず、呼び出しである。
仏頂面にもなろうものだ。

《廊下を走るな!》
《廊下で騒ぐな!》
《廊下で暴れるな!》

完全無視でブレザーを着た生徒が廊下を突進(?)していた。
二年生の風間巌緒(かざまいわお)。伸や智春と同じく、いの一番隊の隊員である。
彼女はものすごいスピードで食堂へ向かっていた。
人ごみの中に、必ずあの莫迦がいるはずである。
あの莫迦=遠山金太郎。
呼び出しがあったとき、金太郎を探して連れて行くのが巌緒の最近の役割になっているのである。
当の金太郎本人はと言うと、食堂の雑踏の中にいたために放送がまったく聞こえていなかった。
腹ごなしのハンバーグ定食をたいらげた後、大盛のカレー(甘口)を半分ほど胃に収めた所だった。
Gonnn!!
かなり派手な音を立てて、食堂の戸が開け放たれた。
「莫迦はどこよ、莫迦は?!」
巌緒が叫ぶと同時に、入り口近くの生徒数名が一斉に金太郎を指差した。
「「「あそこ」」」
「え、あ、すいません、ありがとうございますm(__)m」
入り口近くにいた生徒は全員、三年生の先輩だった。あわてて、礼を言って頭を下げた後、
巌緒は金太郎の座っている席にずかずかと歩いていった。
彼は、巌緒が来たことには気づいておらず、幸せそうに残りのカレーを口元に運んでいる最中だった。
ズ〜ズン、ズ〜ズンズンズン
某恐怖鮫の登場シーンを思わせる雰囲気で金太郎の後ろに忍び寄る、巌緒・・・。
金太郎は最後の一口を今まさに口元へ運ぼうとしたその時、

Boghu!

容赦の無い拳骨が、金太郎の頭頂部に見舞われた!

Gakkin!

・・・鉄製のスプーンをオモイッッキリ噛んだ金太郎。

「うぎぐげ、だれっ?!」
怒りの表情で振り向いた金太郎の顔が、一瞬にして凍りついた。
憤怒の形相で、立ち尽くす巌緒がそこにあった。

「お〜の〜れ〜は〜、な〜ん〜か〜い〜い〜え〜ば〜、わ〜か〜る〜ん〜だ〜」(゚Д゚#)!!
「あ、あ、あ、あああ」Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)

喧騒の中にあっても、二・三年生は放送がしっかりと聞き取れていた。
ゆえに、巌緒が入ってきた時の「莫迦」だけで、それが金太郎だということが全員わかっていた。
だから一斉に指差すことが出来たのだ。

ふう、ナガカッタ。これで主役の登場人物がそろって・・・ねぇよ。
まだ、バラバラだよヽ(`Д´)ノウワァァァン(以上作者心の声)

 伸に遅れること、約十分。ようやく四人が校長室へそろった。

「はい、ご苦労様。詳細は大岡君に聴いてください。行き先は大和の柳生だからよろしく」
出席日数が危ない巌緒は行き先が近場であることに、安堵した。
伸は、さっきから仏頂面のままであった。
金太郎は・・・普段のままだった。
そのなかで、智春だけが、怪訝そうな顔で手を上げた。
「校長先生、よろしいですか?」
「なにかな?」
校長といっても年寄りではない。まだ、おばさんの域に達するか否かという(失礼)妙齢の先生である。
「依頼者は、ひょっとして」
「柳生春正殿。あなたのお父上」
「・・・あのくそじじぃ」
小声ではあったが、全員の耳に届いた。
彼女の父親との確執を全員知っていた。(もっとも、一方的に智春が嫌っているだけなんだが)
「じゃ、よろしく〜?」
語尾にハートマークを浮かべるような口調で、それでも、生徒たちに有無を言わせない雰囲気で
彼らを送り出す校長先生(性別女性・年齢不詳)で、あった。

午後の授業を受けずに、それぞれ、帰宅の準備を始める四人。
「ナムナム」
「莫迦、洒落にならんから、やめれや」
「阿保ぅ、伸やぞ?考えれっか?」
「そだな」
「明日が、土曜日でラッキーやったなぁ。休み、半日ですむで」

学友から、思い思いの声援(?)が伸と智春に送られる。
ただ、その顔に浮かんでいる表情は半分は笑顔ではあるが、半分は安堵である。
『自分じゃなくてよかったよ』・゚・(ノД`)・゚・
大岡伸、柳生智春、風間巌緒、遠山金太郎。本年、四回目の早退。彼ら、彼女らの行き先は智春の実家。
大和柳生の庄。
彼ら彼女らが何者で、何のために、何をしに行く(ゆく)のかは、おいおい・・・。