クリスマスプレゼント (氷×主)


今日は理事長の家でのクリスマスパーティ
仲のいい友達と待ち合わせてでかけることになっているが、
その前に、まどかが家にやってきた

「どーしたの?」
「そろそろ出る時間やろ?
 迎えにきてん」
いつもとはだいぶイメージの違う黒いスーツを着たまどかは、それでもいつもと同じようににかっと笑って言った
「待ちあわせの場所まで一緒に行こうと思って」
「うんっ」
玄関に置いてあった白いポシェットをつかむと、ブーツをはく
立ち上がるのを、まどかが手を差し出して手伝ってくれた
「なんかホストの人にエスコートされてる気分〜」
「ホストってなんや〜っ」
ケタケタと、笑いながら外に出た
コートを羽織っていたがそれでも寒い
「ぴやー、寒いねっ」
「自分、足出してるからなっ
 でもめっちゃいいな、その服、よー似合ってる」
「ほんと?
 迷ったんだぁ〜これ」
先週、今日のパーティのために服を買いにでかけた
色んな店を見て、いいなと思うものが2つあった
ひとつは白いふわっとしたスカートに紺色のジャケット
女の子らしくて、とても可愛かった
多分、こういう「ピュア」な服装が氷室は好きなんだろうと、と思って試着してみた
そこそこ
そこそこに似合いはする
ブラウスも可愛くてトータルでとても清楚だった
女の子っぽくて魅かれたけれど、鏡の中の自分になんとなく違和感を感じる
(やっぱりこっちかなぁ・・・・)
もう一つは、ノースリーブの赤いミニのワンピース
お気に入りのブーツとよく合いそうで、首元についているファーも可愛かった
「これはモロ私の好みなんだよね・・・」
試着すると、文句なしに気にいった
最近とっても気をひきたい氷室の好みをとるべきか、
それとも自分に似合うのにしておくべきか
迷いに迷って、赤いワンピースにしたのだ
氷室に気に入ってほしかったけれど、本当の自分じゃないものを見てもらっても仕方ないと思ったから

ちゃんにはよー似合っとるわ
 その服やったらコレも合う」
言ってまどかはポケットから小さな箱を取り出した
「何?」
「俺からのクリスマスプレゼントや
 なんや今年は怪我さしたりしてもーたしな」
「えぇ?! そんなのいいよーーっ」
小さな箱を無理矢理手におしつけられ、は困ってまどかを見た
「受けとってーや、それは口実やねんから
 ほんまはちゃんにただプレゼントしたかっただけやねん」
にかっと、いつもの明るい笑みでまどかは言い、それから照れくさそうに笑った
「クラスもちゃうのに仲よーなったからなっ
 来年もよろしくっちゅー意味やねん」
深く考えんとって、と
まどかの言葉に、は笑った
「じゃあ、ありがたくいただきますっ
 開けていい?」
「もちろんや」
二人、道の真ん中に立ち止まって は包みを開けた
中には銀色のクロスのついたブレスレット
「かわいいっ」
「せやろ〜
 見付けた時に絶対ちゃんに似合うって思って買ったんや」
「わー、ありがとっ」
いそいそと、コートの袖をめくってブレスをつけてみる
「似合う?」
「バッチリや!」
嬉しそうに、まどかが笑った
も、嬉しくて笑いかえした

それから待ち合わせた数人とパーティ会場へと向かった
フロア前ではお手伝いさんのような人がコートや荷物を預かってくれた
持参することになっているプレゼント交換用のプレゼントもそこで渡した
「すごい人だね〜」
「理事長、金持ちなんやなー」
きょろきょろしながらみんなして、あーだこーだいいながら広いフロアに入った
「すげーっ」
「ひろーーーいっ、本当にパ−ティだ〜」
はじめてのことに、歓声をあげる
天井のシャンデリア
キラキラしたたくさんのグラス
フロアにはいくつものテーブルがおかれ、料理や飲み物がのっている
奥にはバーがあり、その隣にはオーケストラが音楽を奏でていた
「映画みたーい・・・・」
「か・・・・金持ちやな〜」
来ている生徒も、ドレスアップしている人が目立った
想像以上に本格的だ
「すっごーい、すっごーーーーいっ」
興奮して、騒いでいると友達が何人か走ってきた
ーー、プレゼント何にした?」
「私はねー、手作りベア」
きゃいきゃいと、はしゃきながらは遠くに氷室を見付けた
(あ、先生・・・・)
黒っぽいスーツを着て、手に何かグラスを持っている
(わーん、今日も格好いいな〜)
その姿を見たら急にうきうきして、は氷室の側へ行こうとした
だがその時に、視界にの姿が入った
クラス一成績がよく、おまけに吹奏楽部のは、誰もが認める氷室のお気に入りなのだ
よく見ると、何人かの吹奏楽部の子達が氷室の周りで何やら話していて
氷室もそれに答えていた
(・・・・チェ・・・・・・・クラブの子にはかなわないや)
急につまらなくなってはうつむいた
いくら担任だとはいっても、やっぱり吹奏楽部の子達にはかなわないと思う
氷室はクラブに力を入れているので有名だし、
皆が怖いという氷室を、クラブの女の子達は慕っているのだから余計に
せっかくのパーティだから話がしたかったのに
新しい服も見てほしかったのに
は遠くの氷室を見て、溜め息をついた
だが急に、友達がブレスレットに触って、我に返った
「これはねぇ、なんと姫条くんがくれたのだっ」
キラキラ光るブレスレット
クリスマスのプレゼント
「せやでー、オレの愛の証やなっ」
彼の冗談に皆が笑い、も笑った
(氷室先生のプレゼントが当たらないかな・・・
 じやないと先生からプレゼント貰うなんて一生ないもんなぁ)
チラ、と移した視線の先に、やはりと一緒の氷室がいた
つまらない
お気に入りの先生の一番になれないなんて、つまらない

それからしばらくまどか達といつものようなバカな話をして、クラブの友達のところへ移動した
「私は手作りのマフラーにした〜」
「私はエプロン」
は?」
「私はくまのヌイグルミ
 可愛い布見付けたから ついついいっぱい買っちゃって」
「えーいいなぁ
 の作ったやつ欲しいな〜」
「当たったらいいね〜」
きゃいきゃい、と
いつもクラブで顔を合わせているのに飽きもせずに話をして
それからテーブルに並び出したケーキをちょっとだけ食べた
「おいしー」
甘いものが大好きで、ケーキなんて聞いただけでとろけそうで、
今日はクリスマスで、おいしそうなケーキが食べ放題
「しあわせ・・・・」
感動していると、後ろで誰かがクスクス笑った
「こんばんわ」
「あ、守村くん」
にこり、
最近仲よくなった桜弥に、は笑いかけて それから彼のスーツのボタンが外れかけているのに気付いた
「どしたの?」
「さっきひっかけてしまって・・・」
困ったような彼に、は笑うとポシェットからソーイングセットを出してきた
「え・・・・持ち歩いてるんですか?」
「うん、私もよくボタン飛ばすから」
笑って、桜弥の足下にかがみこむと、とれかけたボタンをはずして、それから手早く縫い付けた
2分とかからない
「・・・早業ですね・・・・ありがとうございます」
「どうしたしまして、いつも勉強おしえてもらってるお礼かなっ」
立ち上がって笑ったに、守村も頬を染めて笑いかえす
「そんな、僕も勉強になるし・・・」
「冬休みも宿題いっぱい出たし、一緒にやろうよ」
「ええ、もちろん」
「じゃあ図書館とかでねっ、私連絡するから」
「はいっ」
にこり、
出会ったのはついこのあいだで、
だが初対面で解けなかった数学の問題を教えてもらってから、
はすっかり守村が気に入っている
わかりやすいし、何度も丁寧に教えてくれるし
何より優しげな桜弥が、一緒にいてとても楽だった
(普段氷室先生にびしばしやられてるから余計だよね〜
 わかんないものをプレッシャー受けながら考えてもますますわかんないもん)
その点、桜弥は氷室とは正反対で
どれだけわからない、と言っても怒ることなく教えてくれるのだ
優しい声で
「頼りにしてますっ、守村くん」
「僕こそ
 英語はちょっと苦手だから」
「そんなの私でよければ何でもするから〜」
「ふふ」
彼を見て、笑った先に氷室がいた
(・・・・・・)
ふと、みつめてしまった
遠くてはっきりとはわからなかったが、氷室がこちらを見ている気がしたのだ
(気のせいか・・・・)
相変わらず側にはや吹奏楽部の子達がいる
(さっさとどっかに行ってくんないかな〜
 私だって先生と話したいのに〜)
明日から冬休みだから、当分会えないのに
せっかくのパーティの夜に話もできないなんて
不満気に、はしばらく氷室をみつめた

しばらくするとプレゼント交換が始まった
中央のダンスを見ていたは、友達のところへ戻ってきてサンタ役の人からプレゼントを受け取った
「なんか重い〜」
ずしりと手に重い、深いブルーの包み紙
開けてみて、思わず声が出た
「ええ?! 氷室印?!」
周りの子達がいっせいに の手許に集中した
「うわ?! それ何?」
「数学の本?!」
「わ・・・わかんない・・・」
ぱらり、と中をめくった時、氷室のあきれたような声がした

顔をあげると、意外に近くに氷室がいて、は驚いて氷室の顔を見つめた
(あ、そっか・・・・先生の後ろにいたんだ・・・・)
自分のいる位置を確認せずにウロウロしていたから、今氷室がどこにいるかなど意識していなかった
こんなに近くにいたのか
「やっぱりこれって先生の?」
氷室印の数学書
中にはぎっしり難しそうな数学の公式や問題がつまっている
ああ、クリスマスにまでこんなものを
やっぱりこの人は、ロマンとかには縁のない人なんだろうか
こんなのプレゼントにはならないと思うのだが
「そうだ、冬休みのいい暇つぶしになるだろう」
「暇じゃないもんー」
そう、冬休みは暇じゃない
桜弥と勉強をする約束もしたし、たった2週間しかないんだから、たっぷり遊びたい
初もうでも行かなきゃならないし、宿題だっていっぱいあるのだ
「それにこれ難しそうだよー」
「普段授業を聞いていれば問題ないはずだ
 冬休み明けに提出するように」
「ええ?!」
とっと周りの友達が笑った
それから何人かが「御愁傷様」といった
これはようするに、
クリスマスプレゼントという名の宿題をもう一つもらってしまったってこと?
こんな、こんな難しそうな
パラパラとページをめくりながらふと、中の字が氷室の字であることに気付いた
(・・・手書きなんだ・・・・・)
綺麗な、ちょっと固い字
一瞬、くすぐったくなった
(先生の字だ・・・・)
それから急にうれしくなる
頑張ってみようかなぁなんて、
相変わらず単純な性格だと思いつつ考えていた
ちゃんと解いていったら、氷室は驚くだろうか
誉めてくれるだろうか
(・・・ちょっと頑張る気になったぞーー)
思った時、ふとの姿が目にはいった
氷室の側に立ってこちらを見ている
(やっぱさん 可愛いや〜)
氷室好みの「ピュア」なドレスがよく似合っている
途端に何か、言い様のない気持ちになった
(さんって氷室先生が好きなのかなぁ・・・・)
なんとなく、そう思ってしまう
氷室の側にずっといる、その様子を見ていたら
(チェ)
おかげでこっちは全然氷室と話ができなかったんだぞ、と
思った時、氷室がグラスを取り上げた
何だろう
透明な液体を一口飲んで、またそれをテーブルに戻した
「先生、それ何?」
「ん・・・? なんだったか・・・・」
一瞬氷室がを見て、がそれに何か答えようとした
(ああ、そーなんだ
 さんが取ってきてあげたんだ)
なぜかむっとして、次には身体が動いていた
「お酒じゃないよね、いただきますっ」
「は?!」
グラスをとりあげ一気に飲む
ジンジャエール
炭酸が乾いた咽を潤して、火照った頭を冷やした
「な・・・・」
一様に驚いた顔をする氷室とは笑う
「だって咽かわいてたんだもん」
「だったら自分で取ってくればいいだろう」
らしくなく、動揺した様子の氷室に満足しては笑った
「だって遠かったんだもん」
ごちそうさま、と
そして、おじやましました、と
笑って二人に背を向けた
せっかくの夜に、ちっとも話せなかったけどまぁいいや
氷室のプレゼントが当たったし、動揺した氷室が見れたし、それに

「先生の持ってるやつ、私のプレゼントだよっ」

ものすごい偶然もあったし
驚いたように手に持っていた包みを見た氷室にまた背を向けた
友達の待つ、ダンスの輪に入りあとはもう振り向かなかった
今夜は、この手の中のプレゼントと偶然だけがで我慢してやろう
のように長い髪で、
のように可愛らしい服で、
のように勉強ができたら、氷室はもう少し自分を見てくれるだろうか
自分も彼の、お気に入りの生徒になれるだろうか
クリスマスの夜はふける
期待に胸をおどらせながら


「クリスマスプレゼント、受け取ってな」
まどかってホストの才能あるかと(笑)
ホストっぽい服装好きなんです〜