オマケ (氷×主)
「ドライプをしよう
君に話したいことがたくさんある」
氷室がそう言って、二人であの教会から出てきた1時間後
おだやかな春の海に、二人はいた
「気持ちいい〜」
時間は昼前
誰もいない堤防で、が大きくのびをした
こないだ氷室とここに来た時には とても寒かった
まだポカポカとはしていないが、
それでも大分暖かいと感じる
心が、こんなにも晴れやかだからだろうか
少し後ろには、大好きな人がいる
卒業式、
氷室からの思いがけない告白に、は戸惑った
真剣な顔の氷室を見上げて、出てきた言葉はたった一言
「嘘だ・・・・」
先生が私を好きなはずない、と
つぶやいたら、呆れた様に苦笑して
「嘘ではない」
静かに、そう言ってくれた
そして、繰り返したのだ
君を、愛している
喜びは、あとからあとから溢れてきて、
二人で学校を出て、海までドライブしてきたけれど まだ実感が湧かない
ただ、卒業後もの側には氷室がいて
彼は優しく笑っている
「ねー、先生」
遠くに、きれいな色の鳥が見えた
なんていう鳥だろう
指さして、目をこらした
「先生っ、あの鳥なんて名前?」
何を見てもキラキラしていて、
何をしていても、楽しい
が氷室を想っていたように、彼もまた自分のことを想っていてくれたということ
「私も、先生が好き・・・・」
自信なさげに、そう答えたに、驚いたような
それでいてどこか、ほっとしたような
複雑な顔をしていた
彼もまた、自分のように 卒業で別れることが不安だったのだろうか
夜も眠れない程に、切ない想いをしたのだろうか
こんな、子供みたいな自分を相手に
「先生、あれっ」
もう一度、指さした
二人でいることが、嬉しくて、くすぐったくて、幸せだった
「あれ・・・・」
ふわり、
急に、後ろから氷室の手が回された
「鳥には詳しくないからな」
耳もとで、囁かれてドキン、と
心臓が跳ねた
氷室に、こんな風に抱きしめられるのは初めてで、それでどうしようもないくらいにドキドキした
「せ・・・先生・・・・」
動揺して、振り返ると 長い指が頬に触れた
「いつまでも、先生と呼ぶな・・・」
「え・・・・・?」
そのまま、
を腕に抱いたまま
屈み込んで、氷室はに口づけた
には、何が起こったのかよくわからなかった
「・・・・・!!」
軽く、甘く、くちづけられ
やがて解放されると、は真っ赤になって氷室を見つめた
今、
今、
彼は自分に何をした?
「せ・・・・・・せんせ・・・・・」
心臓がバクバクいっている
思わず握った氷室のスーツをまだしっかりと掴んで、
はどうしようもなく動揺した
「君が以前質問したことがあっただろう」
「え・・・・?」
「どういう風にキスするのか」
「あ・・・・っ」
悪戯に、氷室の目が光った
あの時は答えてくれなかったこと
どうやってキスをするの?
どういう時にキスをするの?
困ったように、はぐらかされて その質問は二度とさせてもらえなかったけれど
「どういう時に、するのか」
頬に触れたままの氷室の指が、す・・と唇へすべってきた
ドキン、
まるで飛び出しかねないほどの勢いで、心臓が鳴り
今度は、ゆっくりと唇が重ねられた
身を固くして、
それでもは、目を閉じた
手にしっかりと、氷室のスーツをつかんで
2度目のくちづけは、少し長かった
頭を真っ白にされて、離れたとたんにはうつむいて顔をかくした
恥ずかしくて、氷室のことが見れない
きっと真っ赤になっているはずだ
まるでのぼせたみたいに、熱いから
顔も、身体も
「君が愛しくてたまらない
そういう時に、する」
うつむいたままのを 軽く抱き寄せて氷室は微笑した
腕の中の少女
今はもう、手に入れたのだ
焦がれて、想いつめた恋の相手
あんまり愛しくて、歯止めなどきかなかった
我慢する必要など、もうないのだけれど
自分は堂々と、を想っていると言えるのだけど
「」
「え・・・・?!」
氷室の腕の中で、必死にドキドキを抑えていたは 突然名前を呼ばれて顔を上げた
、と
今、氷室はそう呼んだか
教師である氷室は当然、を名字で呼んでいたのに
「な・・・なに・・・・先生」
それだけでドキドキした
せっかくおさまってきたものが、また熱が上がるように顔が赤くなり
その様子に、氷室は微笑した
可愛くてたまらないのだ
の、こういうところが
らしくなく、真っ赤になって動揺しているところが
「先生と呼ぶのはやめてほしいな
君は卒業して、俺は君の先生ではないんだから」
苦笑して言ったら いっそうは真っ赤になってもごもごと何か口の中でつぶやいた
「そ・・・そうだけど・・・」
たしかに、氷室はもう自分の教師ではなく
今日の日から、恋人というものになるのだから いつまでも先生と呼ぶのはおかしいのだろうが
だからといって、3年間も呼び続けたものを急に変えろと言われても
「癖で・・・」
さすがというか、何というか
氷室は顔色ひとつ変えずに、さらりと自分をと呼んだ
そして、
いつのまにか、自分のことを俺、と
そう言っている
彼はもう完璧に切り替えている
「そんなすぐには変えられないよぉ・・・」
そもそも、何と呼べばいいのか
「君が呼びたいように呼べばいい」
「う〜・・・・・」
悩んでいると、氷室が意地悪く微笑した
そのまま、屈み込んで 今度は頬にキスされた
「?!!!」
言葉もなく、見上げると 楽しそうに彼は笑った
「では君が早く呼び方を変えられるように、先生と一度呼ぶたびにこういうことをしよう」
「ええ?!」
ドキン、
また心臓が跳ねた
先生と、呼ぶたびにキスされるということ?
それでなくても、生まれて初めてのことで
相手は大好きな人で
こんなことを何度もされたのでは身がもたない
今にも心臓が爆発して壊れてしまいそうなのだ
「れ・・・零一さんっ」
真っ赤になりながら、呼んでみた
彼の名前
それで、満足そうに氷室は笑った
そう、それでいいと
春の海で二人きり
恋人になって、初めてのデート
はじめてキスをして、初めて名前を呼んで
二人はこれから、同じ時間を重ねていく
3年間で、つもった想いをそれぞれに抱いて