ハプニング (姫×主)


夏休み
まどかの追試が晴れて終わった次の日、とまどかは約束のデートにきていた
、水族館好きなん?」
「うん」
バスに乗って、ちょっと遠出
行き先は、の希望で水族館になった
「そーなんや、魚が好きなんか?」
「なんか・・・水の中にいるみたいで素敵だなぁって」
が頬を染めて恥ずかしそうに笑って、まどかはふーん、とあいづちを打った
水族館でもどこでも、まどかにとったら同じ
とのデートなら大歓迎で
今回は、なりゆきでかからあっさりとデートにOKがもらえて御機嫌だった
テスト明けの一週間、ずっとに勉強を教えてもらって
まどかの中で少しだけ、への想いが形を変えた
最初は興味本位で
可愛い女の子を見付けたら声をかける、というお調子者の本能に従い
ポリシーに従い「仲良くしよーな」などといっていたのだが
のような可愛くて人気のある子と仲良くなれたらいいなぁ、なんて
いつもの軽い感覚で「落としてやる」なんて思っていたのだが
(なんかちょっと・・・ちゃうんよなぁ・・・)
はオシャレで、センスも良くて、頭もいい
まどかのまわりにたくさんいる女の子達と違って、軽さがないだけで
話題もチェックしているものも、最先端だったりするのに
いつも親身で、いつも優しくて
このあいだだって、しなくてもいい勉強をまどかのために一緒にしてくれた
他の子なら、遊び優先で
自分がパスした試験の追試になんか、つきあってはくれない
都合のいい時にだけ「遊んでよぉ」なんて甘えた声で言って
それで終わり
のように、自分の時間をさいてまで まどかのために何かをしてくれているのを感じたことがない
それでいいと思っていたし、
まどかも、その程度にしか相手に接していなかった
遊びたい時にだけ遊んで、
いらない時にはいらない、と
あっさりしたもので、
今迄もぉ何人の女の子とつきあったか知れないけれど、いつも長くは続かなかった
そういう子には、すぐに飽きてしまうから
流行と同じ
ハマっている間は好きだけど、自分の中のブームが過ぎたら終わり
つまらなくなって、特別じゃなくなる
新しい女の子に、心が動く
それを繰り返して、今迄きた
も同じで、
今迄の女の子達とはちょっとタイプが違って
おとなしそうなのに、そうじゃなくて
よく笑って、優しく人の話を聞いてくれて、頭が良くて
まどかには新鮮だったから、
他の男達への見栄みたいなものもあって、
を絶対に落としてやる、なんて思っていたけれど

「ほな、いこか
 オレはとやったらどこでもええから」

本気で、そう言わせてしまう程に 今にハマっている
そして、それは今迄とは少し違うような気がする
だいたい、こんなにも押して、
こちらから好意を寄せているのに乗ってこない子は初めてだし
を見ていたら
軽い自分の気持ちが見透かされているような気になってくる
どうせ遊びなんでしょ、と
そういう声が聞こえる気がする
は違う、と
今は思っているけれど、
それでも自分の性格上、絶対に違うとは言い切れなくて
もしかしたらもブームが去れば飽きてしまうかもしれず
結局まどかは、いつもの軽口でその場を流すばかりなのだ
今が楽しければいいや、と
戸惑いに似た想いにフタをして

はよっぽど水族館が好きらしく、
ついた途端に駆け出さん勢いで 水槽に張り付いた
「いいなぁ・・・」
キラキラ光る深海の魚に目を輝かせる様子に おかしくなってしまう
「なんや、変なもん好きなんやなぁ」
今迄に何度かここで他の子とデートしたことがあるが、こんな風に嬉し気に魚を見る子は初めてだ
「だって、こんなに沢山・・・キラキラしてる」
「せやな〜たしかにきれいやな」
張り付くの手を取って、先へ促した
「・・・・」
途端、の顔が真っ赤になって それでうつむいたのに まどかが苦笑する
「デートなんやし、ええやろ?」
そういえば、こないだのデートでも手をつないだら真っ赤になっていたっけ
これくらい、まどかにとったら当然で何でもないことなんだけれど
は恥ずかしそうに、うん、と小さく返事をした
それを、可愛いと感じてまどかは笑う
「良かった、オレのこと好きやからちょっとでも触ってたいねん」
「・・・・っ」
もぉ、と
がねめつけるように小さく声を上げたのが心地よかった
じれったいほどに幼いデートだけれど、
不思議と悪い気はしない
相手がだからかな、と
嬉し気に水槽を見入っているについて歩きながら まどかはひとりごちた

そろそろ出口付近にさしかかった頃、館内放送が流れた
「12時より、イルカショーを行います」
そういえば、この時期はそんなショーがあるとネットで宣伝していたっけ
「せっかくやから見てこーか」
「うんっ」
嬉しそうに返事をしたに、まどかは満足してその手を引いて屋外の特設テントへ向かった
パラパラと人が集まり出した中、前の方へとを連れていく
「やっぱこーゆうのは前で見るのがええやろ」
そして、二人してわくわくしながらショーのはじまりを待った
我ながら、子供だと思いながらも楽しみである
隣をみやると同じように 頬を染めて目をキラキラさせてが目の前の巨大な水槽を見ていて
それでまどかはいい様のない いい気分になった
こういう風に、一緒にいる時間を楽しんでくれるのが嬉しい
の、こういうところが 自分は本当に好きだと感じる

ショーは素晴らしいものだった
3匹のイルカが飛んだり跳ねたり、輪っかをくぐったり
ピィ、という笛に反応して上空の玉を弾いたり
「すごいもんやなぁ・・・
 あいつらオレより頭いいんちゃうか〜」
「すごいねっ、すごいねっ」
二人して子供みたいにきゃあきゃあ、と
ショーはあっという間に終わりに近付き、
最後にイルカ達が 客席に向かってジャンプした
彼らの挨拶
透明な水槽に、ザプンッと跳ねたイルカ達が水に戻るのが見えた
その瞬間

ザッパァーーーーーーンッ

「きゃあっっ」
「うわっ?!」

3匹の巨体によって溢れかえったプールの水が大量に客席へと飛び散った
「だ・・・だいじょうぶか・・・・・」
毎回のことなのだろうか
見渡せば、大抵の客は水のかからないギリギリのあたりに座っていて
マトモに水をあびたのは、まどか達を含めて3組程だった
「び・・・びっくりした・・・・」
「うわー、大丈夫ちゃうなぁ・・・・」
なかば呆然としているは、胸の辺りがずぶ濡れで
まどかも腹のあたりが水浸しだった
「びっちょびちょや〜・・・たまらんなぁ・・・・」
とりあえずを立たせて、まどかは苦笑した
白いキャミソールを着ていたは、今やすっかり下着が透けて それはそれは、そそる格好になってしまっている
「・・・・それは・・・・嬉しいけど、問題アリやな」
突然のことに、らしくもなく赤面して、まどかは暑いからといって脱いで腰に巻いていたシャツをに渡した
「え・・・」
「着替えといでや
 まる見えやで、オレは嬉しいねんけどな」
それで、はじめて気付いたのだろうか
は自分の有り様に、真っ赤になって腕で胸の辺りを隠すようにした
そして、慌てて側にあったトイレへと駆けていった

(あーあ・・・・らしくないなぁ・・・)
が着替えているのを待ちながら まどかはドキドキしている自分に苦笑した
女の子の身体なんて見なれていると思っていたのだけれど
とっくに初体験なんて済ませてしまっているし、
下着が透けたくらいで、ドキドキするようなことはなかったのに
「なんか・・・調子狂うなぁ・・・」
の、そういう姿に恥ずかしくも動揺してしまった
いつもなら、ヒュ〜とからかうか
抱き寄せて触れてみたり、するのに
当然のように、そういうことがにはできなかった
(オレは純情君か・・・・)
苦笑した
まったく、どうにかしている
でも、本当にドキドキしたのだ
の、そういう姿を想像したことなどなかったから
そんなこと、まだ考えてもみなかったから
相手には

「ご・・・ごめんね、おまたせ」
しばらく後、が戻ってきた
着ていたものを脱いで、今はまどかのシャツを着ている
大きすぎるシャツは、ぶかっとしていて違和感があったけれど
なんとなく、自分のものをが着ているというのはくすぐったくて悪い気はしなかった
「姫条くんも濡れたのに・・・これ、借りちゃっていいの?」
「ええよ、
 あんな格好で帰られへんやろ
 オレはすぐ乾くから平気や」
季節は夏
ずぶ濡れになったTシャツは 軽く絞った
そのうち乾くだろう
「なんやびっくりしたなぁ
 そーか、イルカショーは一番前で見たらあかんねやな
 勉強になったわ」
「あはは、そーだねっ」
冗談めかしく言った言葉に、が同調して 二人で笑った
とんだハプニングだったけれど、これはこれで楽しかった
夏の暑い道
相変わらず手を繋いで、二人は帰っていく
「また来よーな」
「・・・うん」
照れたように、それでも肯定の返事をしたに、まどかは破顔した
いつまで好きかなんてわからないし、
自分がいい加減な奴だってことは、よーく知っているけれど
今は、の側がいい
こうしているのがたまらなく楽しいから、
まどかはと手を繋ぐ
夏の、帰り道