当時11のカディオスは半年前に父、アリクスから武器の使い方を習い始めたばかりだった。
母ディアナは「まだ早いわよ」と言い、微笑んでいたがそれもあながち無駄にならずにすんだらしい。
「俺はすぐ戻ってくる。それまで母さんを頼んだぞ」それが父アリクスから息子カディオスへ向けた最後の
言葉になろうとは誰も思わなかった……アリクス本人でさえも……実際すぐ戻れればよかったのだろう。
しかしアリクスが戻る前に二人が待つ家には野党の手がのびていた。家の中では父に言われたからか、
幼くとも男の義務感としてか、母を後ろにし剣を構え野党と対峙するカディオスがいた。
(父さんが来るまで母さんは俺が守ってみせる。)
母を守ろうとする勇気まではよかったが如何せんまだ子供、たいした時間稼ぎにもならずついには武器まで
取られてしまった。体を盾にし、最後まで母を守ろうとするカディオスに野党の刃が振り下ろされる。
(く…)覚悟を決め目を閉じるカディオスの前が一瞬暗くなった。何事かと思い目を開けるとそこには
母ディアナの姿があった。親心からか、おそらく反射的に体が動いたのだろう。
「母さん……?」目を開け、それが母と確認したと同時に刃がディアナに突き刺さる。さらにその刃は
カディオスにまでも達していた。
一瞬胸が熱くなり、胸元から大量の血が吹き出る。…そして目の前が暗くなってゆく中で見た母の顔を
最後にカディオスは意識を失った………
「………またあの夢か………」うっすらと目を開け、ベッドから体を起こし一息つく。体に掛けていた
毛布がずれて生々しい胸の傷があらわになる。
あの惨劇から7年。母を失い、父はその後行方不明。村長曰く父は自分たちを見た後いつの間にかいなく
なっていたらしい。
3年前、意を決し父親探しの旅に出るがやはりなかなか見つからない。西方を回り、今はここオランに
立ち寄っている。他の街と違いオランは規模が違うのでしばらく前からここの宿にやっかいになりつつ
情報を集めている日が続いている。
そしてあの事件以来トラウマになっているのか、たまに見るこの悪夢。目の前で親が死ぬのを見たのだから
さすがにトラウマにもなろう。
…ベッドから離れ、窓から外の景色を見るカディオス。外は薄く明るくなっていた。夜明けである。
「…そろそろ秋か。母さんの命日だな…」
「たまには帰ってみるか、ナグラ村に……と、その前にマスターに言って宿代精算しとかないとな」
そう呟いたあと上着を着、静かに扉を開け下に降りてゆく…「とりあえず朝飯でも喰ってくるか。」