PSO小説・・・洞窟


第三階層の最後の扉の前までたどり着いたというのに、モアのTPはまだ4割以上残っていた。
もえらのギルドカ−ドにメ−ルが入ってきた。

『アイシャだよ〜
とりあえず、マインドマグ新しく1匹造ってみたから、回復アイテムと一緒に特派員に持たせたからね〜
マグは平気っぽいから使ってみ〜』

アイシャ、モヨポン姉弟は、マグブリ−ダ−としてもそこそこ名が知れているのである。

『追伸
捕まってたのはわたしらハンタ−だけじゃなかったみたい。
街をつくるための技師とかがけっこう…
こっちのメドがたったら、わたしらもそっちに向かいます
                       アイシャ』

モエラがスイセイ、モアにメ−ルの内容を告げる。

「特派員…誰かにゃ?」
「来るにしても、時間はかかるだろう…待つのなら坑道の入口のほうがいいと思うんだが…」

スイセイがモエラを促す。
少し考えて、モエラが返答する。

「…そうだな、相手はウオコさんだが…」

3人とも苦笑を浮かべる。
スイセイとモアは、ウオコとの付き合いはそこそこある…故に扱い方もそこそこ心得ている。これが逆にサイレンやキ−だった場合…収集がつかなくなる恐れも考えられる。
結果的にこの状況は好転していると言える。

「よし、行こう!」

転移装置の先は、坑道に続く地下水道、その船着き場である。
通常、この水路をイカダのような作業船で移動するのだが…。

「ない?!」
「あう」
「…やはりな」

なんとなく想像がついていたのだろう、スイセイが呟いた。
と、目の前の水面が大きく隆起し、ダル・ラリ−が姿を現す!

…その頭の上に、きわどい紫のハンタ−ウェアに身を包んだ、背の高いハニュエ−ルが、仁王立ちでこちらを見下ろしている…ずぶぬれのまま…。

「はっはっはっ!まっとったで、愚民ども!…って、スイセイとモアちゃんやないか。なにしとるん?」
「…相変わらず、身体を張ってるにゃあ、うおちゃん」
「芸人の鏡だな…風邪ひくなよ…寒そうな格好だが…」

モエラは唖然として、口を開けないでいる。

「何言っとるん!芸人への道は、こういう事の積み重ねからや。
…で、なにしとるん?こんなとこで」
「坑道に行きたいのにゃ…」

モアが単刀直入に言う。続いてスイセイも、

「イカダがないようだが…坑道にいけるのか?」

それを聞いたウオコは、少し困った顔をして語り始めた。

「実はな…イカダは壊れたんや…こいつのおかげでなぁ」

ばこっ、という鈍い音が響いた…ウオコが足元のダル・ラリ−を蹴り飛ばした音である。ダル・ラリーは、一瞬びくっ、と震えただけで、依然大人しくしている…悪さをしたあとのペットのようにも見える。

「ほんま、こいつが大人しくうちの言うこと聞いとったら、イカダの半分は確実に残っとったのに…」

げしげしっ、と 再び鈍い音が響き渡る。
モエラはダル・ラリーがいつ暴れ始めるかと、先ほどからひやひやしっぱなしである。
しかし、ダル・ラリーは怒りの素振りは見せるものの、決して襲おうとはしなかった。
そんなダル・ラリ−の様子を見て、モアが呟く。

「…よっぽとひどい目にあったんだにゃあ…ぼそぼそ(ちょっと気の毒かも…)」

その呟きに、スイセイが続く。

「ボソボソ(ウオコ相手に生き延びてるだけよかった…いや、死んだほうがましだったか)」
「そこ!なにぼそぼそ言っとるんや!うちはな〜んも悪くないんやで!」

苦笑を浮かべているモアとスイセイに、ウオコがつっこむ…本来はボケ専門なのだが。

「…で、イカダはないんだな?」

モエラがウオコに問い詰める。ウオコは胸を張り、腰に手をあてて「ない!」と言い放つ。

「無くていいんや。うちは中途半端に強い連中を、これ以上先に進ませないようにここにいるんやからな」
「俺たちも駄目なのか?誰かがどうにかしなきゃいけないのは…」

モエラの台詞を遮って、ウオコが口を開いた。

「わかっとるよ…まぁ、モアちゃんとスイセイはいいとして…あんたの実力、見せてみいや!」

そう言い放つと、どこから用意したのか、二本の短剣ラヴィス=ブレイドを両手に携え、ダル・ラリ−の頭上からモエラに躍りかかる!

「くっ!」

本来なら、短剣での攻撃には、必ず6撃目の直後に隙が生じるのだが…ウオコは巧みなフェイントとステップワ−クでそれをカバ−し、モエラに反撃の隙を与えない。

「その程度じゃ、坑道に行ってもらうわけにはいかんでぇ!」

モエラもそれはわかってはいるのだが…。

「…う〜ちゃん、楽しそうだにゃあ…」
「ああ…いい表情してるよ…まったく…」

苦笑を浮かべて呟くモアとスイセイは、完全に観戦モードである…ウオコを納得させるには、モエラ自身の実力を見せるしかないからである。
この均衡を破ったのは、意外な人物だった。
ウオコには一瞬なにが起こったのかわからなかった…自分が何らかの力で凍らされ、気がつけば膝をついていた…目の前には、ノダチを突きつけているモエラがいる。

「サンキュ−、タック!無事だったようだな」

モエラは、会心の笑みを浮かべて帰ってきた後輩を見やる。

「なんとか…言語中枢がまだ不完全ですが」

この状況で、言葉を失ってしまったのはスイセイとモアである…。

「あ!?まだ一人おったんか!?」

へたっ、と座り込んだままのウオコが、唖然とした表情で大声を上げる。徐々に感情が込み上げてきたらしく、その顔に複雑な表情が現れ始めた…そのほとんどが『怒り』だが…。

「俺は気付いてたぜ…ウオコさんの間隙を突くのは、俺のノダチじゃ無理だったろうからな。
周囲の気配を感じ取るのも、実力のうちじゃないかね」

モエラは突きつけていたノダチを収めながら言い放つ。
顔を怒りで真っ赤に染めたウオコが、立ち上がろうとする…が、小さなうめき声をあげると、再び座り込んでしまった。
モエラがウオコに手を差しのべる。

「峰うちとはいえ、俺の渾心の一撃だからな…効いてなかったら、素直にここに残ってたさ」

にっ、と笑みを浮かべてウオコの手を取る。
立ち上がりながら、ウオコが口を開く。その表情に怒りはなく、さばさばとした微笑をたたえている。

「…まぁ、一撃でのされたのは事実やからな…
しっかり4人でリコを食い止めてきいや」

その台詞が終わるか終わらないかの一瞬、背後に控えていたダル・ラリ−が、ウオコ目がけて触手の一撃を放った。が…

ウオコは振り向きもせず、ただひと振りしただけで、ダル・ラリ−の触手を切り飛ばす!
ダル・ラリ−は痛々しいいななきをあげて、ウオコに頭を垂れる。

げしっ!

その頭に蹴りを入れながら、怒気を含んだ声でウオコが優しく言い聞かせるようにつぶやく。

「覚えとき…次は首やからな」
「うわ…」
「こわっ…」

モエラ達4人は、なにか恐ろしいものを見たように、思わず一歩後退さってしまった…確かに恐いだろうなぁ。

「ん?なにしとるんや?はよこいつに乗っかりや」
「は?」
「これに…」
「乗るぅ!?」
「イカダがない以上、これに乗るしかないやろ?ほれ、乗った乗った」

ダル・ラリ−の頭の上…快適ではなかったが思いのほか早かった…ウオコ以外の4人は傷だらけの甲羅にしがみついていたが…。
坑道側の船着き場に着くと、ウオコは「後は任せたでぇ」という台詞と共に帰っていってしまった。

「あの…」

タックがおずおずと口を開く。

「なんでウオコさん…同行してくれないんでしょうか」

その質問に、モアとスイセイが苦笑混じりに答えた。

「う〜ちゃん、面倒な事嫌いだからにゃあ」
「よっぽど興味ないと自分で動かないのさ」

モエラとタックも苦笑を浮かべた。

「ようやく半分…だけど、あと半分だ」

モエラが気を取り直して言った。

「やってやろうじゃないか…俺達で!」
「ああ!」
「にははっ」
「頼りにしてます」

そう言うと、4人は坑道に向かっていった…周囲の異変に気付かぬまま…。


洞窟1へ  
小説トップへ
INTERMISSION へ