PSO小説・・・森最終章


夜半過ぎ、焚火の火が消えかかった頃、近づいてくる話声に、はっと身構える。

「あはははっ!そりゃあんた、あほだわw」

「うん、そのあほの姉はだれかな?w」

「わたしか!あははっw」

無警戒に近づいてくる
声の親近感と緊張感の無さに、思わずモエラに笑みがこぼれる。

「よぉ!アイシャ!モヨポン!」

近づいてきた黒いレイキャシ−ルと赤いレイキャストの姉弟…二人とも、モエラの同期のギルドの一員である。

「お、モエラじゃん。お〜っすぅ」

「なにしてる?こんなとこで?」

「…街のありさまは見たろ?俺たちは、あれの黒幕を追ってる」

モエラの話を聞いて、アイシャとモヨポンは顔を見合わせてほくそ笑んだ。

「な?役に立つ、って言ったろ?」

「ちょっと良心が咎めたんだけど、最悪この先モヨと二人だけ、って可能性もあったからさぁ…(^^;」

モヨポンが降ろした荷物をひろげながら、苦笑を浮かべたアイシャがひとりごちる。
出てきたのは…大量の回復アイテム。

「お、おいおい…火事場ドロボウかよ?!」

あっけに取られながらつぶやいた。

「まぁまぁ、非常事態だからな。ありがたく使わせてもらおう」

ぶ然とした表情のモエラの肩を、なだめるように叩きながらスイセイが言った。
そのセリフに反応して、アイシャがスイセイに話しかける。

「そうしてくれたほうが助かりますよ…でないといつまでたってもドロボウ扱い(^^)…あ、自己紹介がまだでしたね(^^;わたしはアイシャ、あっちがモヨポン…わたしたち、姉弟なんです」

「よろしくです…あ、挨拶ついでにいままでの経緯も教えてください」

アイシャの横にきたモヨポンが、スイセイとタックに説明を求める。モエラを含めた3人は、ここまでの経緯をアイシャたちに語りはじめた。



「ふぅん…転移装置がないのね」

「ああ、それでここで足止めくらってる」

モエラからの説明を終えたアイシャが、怪訝な表情を浮かべながら、

「でさあ、ここに来たときにちょっと気になってたんだけどね…リコのメッセ−ジが無いのよ、あそこ」

アイシャが指差した先は、セントラルド−ムの入口…破壊されたハッチの前で、もよぽんが膝をついて何か調べている。

「まぁ、黒幕がリコだっていうなら、関係ないかもしれないけど…って、最後まで人の話を聞きなさいよぉ〜!」

アイシャを残して、4人はハッチを調べ始めた。
普段から転移装置に慣れ過ぎていたための、完全な盲点だった。 調査をはじめて3時間…わかったことは、ハッチの歪み具合と、メインモーターへの電力供給不足による動作不良…タックとモヨポンが、声をひそめて何か相談している。程無くしてタックが口を開いた。

「このハッチは、まだ死んではいません、開きます!…ただし、条件付きですが…」

「条件付き?」

言いよどんだタックにモエラが問いかける。タックが説明しづらそうにしているところをモヨポンが引き継いで続ける。

「簡単に言うと、おれかタックさんがカギになるってことだな」

「ど−してそうなるのよ?!モヨはともかくとして、タックさんがなんで?!」

憤りを含んだ言葉が、アイシャからこぼれる。

「それはオレも聞きたいな」

「同感だ。納得出来る説明をしてくれ」

スイセイとモエラも同じように問いかける。

「えと…まず開けるための操作ですが…」

タックがおずおずと説明を始める。

「先ほど、漏電もとを断ちましたので、電源が必要になります。モ−タ−に通電したところで、歪んだハッチを力任せに開けます。ここまではいいですよね」

一同がうなずいたのを確認して、先を続ける。

「なぜここまでを一人でやらなければならないかと言うと…通電直後の逆流の可能性と、アンドロイドのオ−バ−ロ−ドを使うからです」

「!」

「!!」

「?」

アイシャとスイセイには、タックの言ったことの意味がわかったらしい。

オ−バ−ロ−ド…アンドロイドの永久機関を暴走させ、一時的に全能力を増大させる。ただし、その時間はごく短く、直後には全機能が強制終了、ときには今までのメモリー(記憶)が消えてしまうこともあるという。

「それに、奥で何かあったときに、退路が確保できていないと、まずいですし…」

タックの説明を補足するように、モヨポンが口を開く。聞き入っている三人のぶぜんとした表情を察したのだろう。

「スイセイさんは、最前線で戦ってもらわなきゃならない。モエラは論外として…アイシャは、タックさんが『女性にやってもらうわけにはいかない』って…けっこう強情だわ、このひと」

モヨポンの苦笑いのあと、沈黙が5人を包む。

「…他に…他に手はないのか?」

うめくようにもえらが声を上げる。
太陽は昇りきり、周囲にさわやかな光をそそぎ始めている。

「…やるしかないんだ!!」

誰へともなくつぶやくと、タックはハッチへと向かっていく。
誰も…何もできなかった…。タックのやろうとしていることが、最善の方法だと判ってしまったから…。
肩口から伸ばしたコ−ドをハッチの操作パネルに繋ぎ、ゆがんたハッチに手をかける。

「モエラさん…全てが終わったら、わたしの回収たのみます」

タックが言い終えた直後、ゾンデとは違う青白いスパ−クがほとばしり、タックの全身を包む。
その刹那、剛音とともにハッチが開いた。

タックは、ハッチの間に立ち尽くしたまま、全機能を停止した…まるで人柱のように…。

開いたハッチの中からは、熱気と冷気の入り混じった空気が流れだしてきている。
スイセイを先頭に、4人は慎重に中へ進んでいく。
セントラルド−ムは、もともとラグオルの地表に街を拓くための仮の都市として建造された、直径2kmほどの巨大なド−ム状の建造物である。
が、4人が入ってきた建造物は、とてもそれとは思えなかった。
天井には巨大な穴があき、中には都市どこるか、建物ひとつない。視界に広がるのは、だだっぴろい空間と巨大な生物の影がひとつ。不意に、巨大ないななきが4人を襲う。
さらにド−ムの外…天井に空いた穴から、巨大な影が飛来してきた。

「ちっ、やはりか…」

「2匹かよっ!」

すかさずモエラがシフタ、デバンド、ザルアジェルンを使う。

「まずは下だ!下を仕留めるっ!」

「了解!」

「うい」

「まかせて」

4人は微妙に散解しつつ、地上のドラゴンを包囲しにかかる。ところが、包囲の輪を狭め、近接戦闘に入ろうとすると、地上のドラゴンは空中に舞い上がり、空中のドラゴンが地上に降りてくる。
3回目の補助テクニックの後、アイシャが叫ぶ。

「みんな、銃に持ち替えて!このままじゃダメ!」

「了解!」

「OK!」

飛ばれる前に集中銃撃を、と考えたのだろうが、今度は2匹とも空中に飛び上がり、炎と冷気の拡散ブレスの雨を降らせる!

「くっ!」

「うそ〜ん(^^;」

しばらくしてブレスの雨がやむと、今度は2匹とも地中にダイブ…こうなると手も足も出ない。
なんとか2匹の突進攻撃をかわしながら、反撃の期をうかがう。
地中から飛び出した2匹は、そのまま空中にとどまり、再びブレスの雨を降らせる。

「え−い、埒があかん!」

痺れを切らしたスイセイが、赤のソ−ドで待ち構える。地中へもぐる一瞬を捉えるつもりらしい。
それを察してか、ドラゴンの動きが変わった。スイセイに近いほうのドラゴンは、空中からのブレス攻撃、離れたほうのドラゴンは地上に降りたち、周囲のモエラ達を蹴散らしに来たのである。

「モエさん、ノダチもって飛んでるほうへ!ブレスを引きつけてくっさい!スイセイさんは銃持ってこっち!」

モヨポンが何か気付いたのだろう、指示を出す。
この陣型になって数分、地上をかっぽしていたドラゴンを撃破。
その直後、まんまと地上に降りてきたドラゴンの撃破には、さほどの時間はかからなかった。

「よし!」

「!!!」

「やったね!」

「おけおけ」

がらんとしたド−ムの中央に転移装置が出現した。
4人は安堵と共に、この場に残ってくれている戦友に、再会の約束を誓うと、転移装置に入っていった。


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