序章
目を覚ました。真っ暗だ。
どれくらいの時間が経ったのか?何がどうなったのか?
まるで見当もつかない。
頭に、酷い痛みを感じる。あとは、右手に何か握っている・・。それは、分かる。
なにやら、両手の甲にパサパサした感触がある。
草。草だ。そして、俺は倒れているわけではない。
何かに、もたれて、座っている。感触からして・・・木だ。
車の・・・走る音が聞こえる・・・。
助けを呼びたい・・。声は・・・出ない。
何が、起こったんだろうか・・?記憶を探ってみても、思い出せない。
頭の怪我のせいで、部分的に記憶が飛んだのだろうか?
しかし、視界に何も移らない漆黒の闇は、考える気力を奪う。
その時。
頭上から、月の光が差し込んできた。
少しだが、視界に周囲の状況が映し出される。
ここは・・・。森。車道から、数メートルと離れていない・・・。森だ。
目の前には・・・。自分が乗っていた警察車、それに、警察帽が転がっている。
警察車の扉は、吹き飛んでおり、激しく車体はへこんでいた。
車道から、落ちた?
いや、違う。そのくらいであそこまで破損するものか。
ふと、何かを握っている、自分の右手に視線を移す。
瓶・・・?中に、なにやら手紙のようなものが入っている。ビンセンか・・?
思い出せない・・・。この手紙を誰かに届ける途中に、何かが起こったのか・・?
考える間もなく、目の中に、何か液体のようなモノが流れ込んできた。
手が動かない。だが、頭に感じる痛みから、それが何なのか、容易に想像できる。
血だ。頭から、予想以上の出血をしている。
意識が、薄れていく。
「エリク・・・スン。エリ・・ク・・スンに・・・この事を・・・。」
声は、外に出る事なく、自分の脳に響く。
意識が薄れていく。真っ暗だ。
