第17話
彼女の休暇
凛が、私の中にいる。
と、いうことは、みんなの話を聞いて実感してる。
あれから2週間経ったけど、凛は、でてこない。
やっぱり、彼女は、ただのお節介焼き、なのかな?
今私は、鑑町(かがみまち)駅に向かう電車の中。
初めて貰った、夏の短気休暇。
5日間の、休暇をもらった。
その時間を利用して、私は実家へと戻っている途中だ。
「ただいまー!誰か居るのー?」
琴奈は、玄関の扉を勢い良く開けると、大きく叫んだ。
すると、奥からよろよろと、一人の少年が出てくる。
「おかえり、お姉ちゃん・・。」
出て来たのは、4つ下の弟。浅原竜樹(たつき)だ。
「ただいま。何、竜樹。よろよろしちゃって。また、風邪でもひいたの?」
「うん・・。一昨日から、学校休んでる。」
「貴方ねぇ、出席日数とか、足りてる?成績だって、良い方じゃないんだから。」
「大丈夫だよ。それに、良い方じゃなくても、悪くもないし・・。」
竜樹は、そう言って奥へ戻ろうとする。
「おーい、竜樹ー。明日香は(あすか)は?」
浅原明日香。琴奈の、2つ下の妹。
「明日香姉ちゃんは、まだ学校だよ。琴奈姉ちゃん、来るの早いし・・。」
「そっか。竜樹、もう昼ご飯食べた?」
「まだだけど・・・。」
「そんじゃ、姉ちゃんが何か作ってあげようか。」
「いいよ・・。母さんが用意してくれてるし・・・。それに、これ以上風邪が酷くなったら・・」
竜樹の言葉は、途中で、琴奈の鉄拳によって断ち切られた。
「母さんが用意してくれてるんなら、仕方ないわねー。私の料理は、有害だとでも、言いたいの?」
少しも仕方無さそうではない口調で、そう言う。
「そこまでは、言わないけど・・・。」
「・・・・ま、いいや。姉ちゃん、一階でテレビでも見てるから。あんたは上で寝てなさい。」
そういって琴奈は居間の中へと入っていく。
居間に入った琴奈は、テレビのスイッチをつけ、昔あってたドラマの再放送を見ている。
部屋の中に、大雑把に置いてある座布団を半分に折って、枕がわりにして、畳の上に寝転んだ。
(あっついなぁ・・。)
夏なのだから、当たり前なのだが。
とりあえず琴奈は扇風機の電源を入れるために3回ほど右に寝たまま転がる。
横に手を伸ばし、扇風機の電源を入れた。
が、その扇風機の首は、あまりにも上を向きすぎている。
結局首の角度を低くするために、立ち上がるハメになった。
そして、また枕もどきのもとへ駆け寄る。
ふとそこに、足が見えた気がしたので、首だけをその方向へと向ける。
さかさまに映るその顔は、先程玄関で会った竜樹。
左手には、なにやら大きめの器1つと、小さ目の器2つ。
右手には、琴奈が持ってきた白い布包みを持っていた。
「姉ちゃん?これ、玄関に置いたままになってたんだけど・・・。」
「あ、ごめんごめん。気をつけて扱いなよ。」
琴奈は、竜樹から布包みを受け取る。
「それ、何?」
竜樹が、布包みを指差しながら、不思議そうにそう尋ねた。
「これ?これは、長薙刀。私の武器だよ。」
「へぇ・・・。一応、警察やってるんだね。」
「一応とはなによ、一応とは。」
「別に・・深い意味はないよ。それと、これ。母さんてば、姉ちゃんの分まで作ってたみたい。・・食べる?」
竜樹の左手には、氷水に入ったそうめん。
それと、つゆを入れるための小さい器が2人分抱えられていた。
「せっかくあるんなら、もらっちゃおうかな。」
そう言って琴奈は、つゆと、小さな器を受け取る。
竜樹はテーブルに、そうめんの入った大きな器と、自分用の小さな器を置くと、持ってくるのを忘れた箸をとりにキッチンに戻った。
琴奈は、風鈴が鳴る音で目が冷めた。
時計を見ると、夕方の4時を回った所であった。
琴奈は、大きな欠伸をしながら起き上がると、あたりを見回した。
しばらくボーっとしているうちに、玄関の扉が開く音がした。
琴奈は、玄関からこの居間に入るために必ず通るふすまの方を見る。
少し待つと、ドタドタと走ってくるような足音が聞こえてきた。
そして、すぐに勢い良く、琴奈が見ていたふすまが横に開く。
「琴奈ねーちゃん!半年振り!・・だっけ?」
「4ヶ月・・・くらいなんだけどね。まぁ、大体半年・・かな。」
勢い良く飛び込んできたのは、浅原明日香。
今年高校に入学したばかりの1年生。
「どう?警察って、楽しいの?ねぇ。」
突然、唐突な質問をぶつけてくる。
「うん、まぁ・・。退屈しなくて、結構楽しいかな。」
「へぇ〜・・・。あ、そうだ!昨日水守(みもり)先生に会ったよ。」
「水守先生に?」
水守先生というのは、琴奈が専門学校時代に世話になった教師の事だ。
「で、なんか言ってた?」
「へへへ、今日姉ちゃんが来るって事を言ったら、夜にでも電話する、って言ってたよ〜」
「そっか。でも、電話するって事は、何か用事でもあるのかな?」
「さあ?それは電話があったときに、本人に聞きなよ。」
琴奈は、それにうなずいて答える。
「それでそれで、琴奈姉ちゃん。今日さ、部活でねぇ・・。」
琴奈と明日香の2人は、姉妹、そして家族らしい会話を続ける。
母親と父親も帰ってきて、夕飯の置かれたテーブルを家族で囲んでいる頃。
電話のベルが鳴った。
琴奈は、電話の相手、水守となにやら話をする。
「私が、合同訓練に参加するんですか?」
『あぁ、お願いしたいのだが。お前は、我が校から出た、エリートだからな。生徒達の士気も高まるだろう。』
「私は別に構いませんけど・・・。具体的には何をすれば良いんですか?」
『何、逃げてくれればいいよ。君には、仮想の捕縛対象となってもらう。』
「私が、捕縛されるんですね。なんかいい気分はしませんよ。」
『心配するな。一部、身体能力の高い者もいるが君なら恐らく逃げきれるだろう。』
「自信はないんですけど、お役に立てるなら・・・。」
『そうか。良かった。突然で悪いのだが、訓練は明日だ。』
「ホント、突然ですね・・。」
琴奈はそうぼやいた。
『まぁ、心配はするな。異種生命体捕縛部隊から、一応ひとりだけ応援を求めている。』
「捕縛部隊から?」
『あぁ・・・確か、椎名とか・・・言ったかな。』
「み・・・みー君だし・・・。」
『ん?何か言ったか?』
「いえ、なんでもないです;では、明日行きますね。」
『あぁ、よろしく頼む。』
そう言って、琴奈は受話器を置いた。
「何の電話だったの?」
「ん、ちょっと。明日、学校に顔出しに行ってくるから。」
「えぇ〜、明日せっかく休みなのにー!」

「ゴメンね、明日香。」
「ちぇっ。」
そんな会話をして、二人は食卓に戻った。
明日の合同訓練が、ただの訓練にはならない。
そのことを、まだ琴奈は知らない。
巨大なそれは、地中で獲物を待ち続けていた。
人が喰える。マホロバ憑きが喰える。・・マホロバが、喰える。
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