第21話
神の獣と呼ばれるモノ




5年前、大量の人間を殺したマホロバがいる。
固い甲羅で覆われた、その巨大な体は、一度見たら忘れないだろう。
数年前、有害指定生物と定められたそのマホロバを捕縛するために、部隊は動いた。
しかし、捕縛することができず、その有害指定生物を逃がす事態となってしまう。
捕縛はおろか、捕殺でさえも出来ない事だろう。
そいつを覆う固い甲羅には、剣身はもちろん、銃弾すら貫く事を許さない。
その最凶最悪のマホロバが、すぐ近くに迫っているという。
捕縛部隊は、出動のために準備を進めていた。



時は10月の頭。
琴奈の休暇が終わって1ヵ月後の事であった。
「刀や銃は大抵効果無しと思っとけ。全員、手榴弾・・・・もしくは、グレネードを持つんだ。」
太一が、自分の装備をしっかり確認しながら全員に向けてそう言い放つ。
「ちぇ・・。せっかくのこれも使えないのかぁ・・。」
琴奈が、溜息まじりにそう言った。
『これ』とは、長薙刀に代わって、橘に再び作ってもらった『双薙刀』。
少々短めの鉄の棒の両先端に曲刀型の刃が一つずつついた武器だ。
「当たり前だ。そんなので甲羅を貫ける訳が無いだろう」
椎名が冷たくそう言い放った。
「・・・ところで、気になってたんだけど、手榴弾って効くのかな?」
琴奈が、椎名の言葉を軽く無視して、そう尋ねた。
「さぁな。まだ試したこと無いからな。」
「実際、手榴弾で傷一つ付かないようなら、私達には打つ手無しですよ。」
椎名の言葉に、エリックが更に追い討ちをかける。
「殺しちゃう訳にもいかないからね・・・。」
中央塔からの命令は、またも「捕縛」。
「捕殺」であれば、がむしゃらに攻撃をしかけることでなんとかなるかもしれないが・・・。
「捕縛」の場合、「動く事ができないが、生きている」状態を保たなければならない。
正直、試したことのないグレネードでの攻撃で死んでしまったとしたら、アウトだ。
「ともかく、銃でダメなんだから、手榴弾使うしか方法ないんだってば」
奈津がもっともな事を言った。
どうあがいても、捕縛作戦は翌日に迫っている。
無駄な話をするくらいなら、装備の最終点検をした方がまだマシだ。
そうして、全員は黙々と装備を点検し始めた。



「でかい・・・。」
「でかいな・・・。」
翌日の正午、荒野に開く大穴におびき寄せた、そのマホロバは、とてつもなく巨大であった。
全長20〜30mくらいだろうか?高さも、自分たちの10倍近い。
隊員の一人が、その巨大なマホロバに対して、一発銃弾を撃ち込んでみる。
銃弾は、鋭い音を立てて弾かれ、そのまま地面へと落ちた。
「でかいし固い・・・。どうすればいいんだろうな?」
太一が、答えられる訳も無い質問をする。
「と・・とりあえず、手榴弾持ってきたんだし・・・。使おっか。」
奈津が促すと、全員はうなずき、すぐにグレネードの準備をする。
準備が済むと、グレネードの銃口をマホロバへ向ける。
「いくよ!せー・・っの!」
奈津の合図で一斉にグレネードから弾が発射される。
それぞれの銃口から打ち出されたグレネード弾は、マホロバに向かって弧を描いて飛んでいく。
そして、マホロバの体に当たったそれは砕け散り、爆風を起こす。
「どうだ?」
太一がそう呟いて注意深くマホロバを見据える。
マホロバの周りを取り囲む煙のせいでまだ視界がはっきりとしていない。
少し待つと、その煙が少しずつ晴れ、マホロバの姿が影となって見え始めてきた。
「おい、あれ見てみぃ!」
橘がマホロバを指差して叫び、全員がマホロバに注目した。
「傷ひとつ付いてない・・・?」
琴奈が見た巨大なマホロバの体は、まさしく無傷と言える状態であった。
「とても、『殺してしまうかも』なんて心配してたとは思えないな。」
椎名がそう言うと、琴奈も深々と肯く。
その時、耳を刺すようなすさまじい、音波のような音が聞こえてきた。
「な・・なんや、これ・・。耳痛いわ!」
橘が両耳を抑え、そう言う。
「な・・鳴き声です!!!」
「鳴き声・・?あのマホロバの?」
「皆さん、ここは危険だ!一旦退きましょう!」
エリックが全員を手招きして後ろへ退け、地面に伏せた瞬間。
何か熱いものが高速で自分の上を通り過ぎるのを感じた。
飛んできたそれは、隊員達を通り過ぎ、先に立つ樹木に当たると、一瞬にして炎上させた。
「何、あのマホロバ・・・。火の玉でも飛ばせるワケ?」
「熱線・・・。火とはまた違う熱源体のようです。」
「どうするんだ?グレネードが効かない以上手の出しようがないぜ?」
「一旦退くしか無いでしょう。幸い、あのマホロバは、低地から上に上がれないようです。」
琴奈がそれを聞くと、もう一度マホロバを覗き見る。
マホロバは、2度目の熱線発射の準備の為に、体を傾け、今まで地面と接していた部分をこちらに向ける。
どうやらあの熱線の発射口は腹にでもあるようだ。
「あれは・・?」
エリックが、誰にも聴こえないような声でそう呟く。そして、すぐにハッとすると。
「皆さん!早く逃げるんです!」
そう言って、隊員達と共に、その低地を後にした。




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