第22話
見つけた一点




「それで、どうやってあのデカいのを捕縛するんだ?」
太一がそう話し掛ける。
「・・・。捕殺なら、できるかも知れませんよ。」
エリックが口を開き、隊員はそれに注目する。
「捕殺?でも、弾とか通らないし・・・。」
「あのマホロバがあの熱線を放つ姿を貴方達は見ましたか?」
エリックがすかさずそう答えたのに、太一と奈津は、ポンと手を叩き、納得したように肯く。
「どういうこっちゃ?ワイも見たけど突破口は開けそうにもないで」
橘がそう言うのに、エリックは苦笑いを浮かべ、説明をはじめる。
「マホロバが見せた底部には、目のような物がありました。と、いってもとてつもなく小さな・・・ですが。」
「目?ホントに?」
琴奈は不思議そうに聞き返す。
「えぇ。あちらから先には攻撃を仕掛けて来なかったのもそのためでしょう。」
「弾が当たった方向に、熱線を撃ってた訳だな」
椎名が言うと、エリックもそれに応え、深く肯く。
「その目に、こちらの攻撃が通じると言う保証はあるのか?」
「あのマホロバが、人の眼に届かぬ場所に目を持っているのは、恐らく弱点を守る為・・。やってみる価値はあります。」
隊員達の顔に、少し希望が見え始めて来たが、エリックはまだ浮かない顔をしている。
「問題は、あの小さな眼に正確に弾を打ち込めるか・・ということです。」
「椎名、お前は無理か?」
太一が、椎名に向かってそう言う。
「無理だな。俺の銃は狙撃用には作っていない。それに、俺よりも狙撃に適役な奴は居るだろう?」
椎名はそう言うと、奈津の方に向き直る。
「え、私?」
「狙撃役は・・お前だろ。」
「む・・無理だってば!私には!」
「大丈夫だって。と、いうよりもお前以外に出来る奴もいないんだ。」
「わ・・私の銃を椎名君に使ってもらえば・・・。」
「悪いが、スナイパーライフルは扱った事が無いんでね。お前がやる方が良いだろう」
そう言われると、奈津は少し沈黙する。
「あー、なんだ。集中して狙えば、お前なら絶対当てられる。自信を持て。」
太一が奈津の肩をポンと叩き、そう声を掛ける。
すると、奈津の顔に、少しだけ笑みが浮かび、応える。
「・・分かった。少し、銃の調整の時間をちょうだい。万全の状態で挑みたいから・・・。」
そういうと奈津はロビーから出て、橘の武器工房へと向かった。



「・・・暇だよ・・。」
一人ソファーに寝転んでいた夏幻がそう呟いた。
あの一件以来、さすがに夏幻の作戦参加は認められる事は無かった。
その為、特にする事もなく、ひとり部屋で時間を持て余す毎日を送っていた。
「夏純の所に行くかな・・・。」
思い立つと、夏幻は足を持ち上げた反動で起き上がり、外出の準備を始めた。
ある程度の準備を終えると、夏幻は部隊のビルを出て行った。
元々夏幻は、あまりお金を持っていなかったのだが、エリックから多少の資金を貰う事で少しずつ溜めている。
とりあえず、贅沢はできなくとも、電車で移動するくらいの事はできる。
・・・が、それでも電車の乗車賃でも夏幻にとっては高いようだ。
なんとか夏純が居る家の付近の駅まで来たは良いが、所持金の半分以上を使ってしまった。
帰りにも同じ額の金額が必要になると言うのに、どうするつもりだろうか?
「えっと・・・・。」
駅の前で立ち止まると、夏幻はビルからもってきたメモの紙切れを取り出す。
その紙切れには、伊緒の家への道順が記されている。
紙切れを見ながら、ゆっくりと町並みの中を歩いていく。
すると、目の前に大きく目立っている一件の家がそびえ建っていた。
地図と周囲を見比べると、どうやらそこが目的地のようだ。
「うわ・・。なんか凄・・。」
田舎者のように、その大きな家を見上げて夏幻は立ちすくんでいた。
上を見上げて固まっている夏幻の背後から、声が聞こえてくる。
「・・・誰?」
その声を聞き、夏幻は驚いて後ろに振り返る。
「うわ、誰だ!」
「いや・・・キミこそ・・・。」
夏幻は、すぐに、自分に話し掛けて来た人物の横にある人影に気が付いた。
「夏純。」
「お兄ちゃん、どうしてここに居るの?」
「いや・・別に。」
そう夏幻が答えると、伊緒は。
「お兄ちゃん・・・?そういえば・・あの人たちのビルの中に・・キミ、居たような気が・・?」
「何?お前、あのビル来たの?」
3人の中に、少しの静寂が流れる。
「ねぇ、2人共忘れてるの?」
夏純の指摘に、伊緒と夏幻は苦笑するしかなかった。



「・・・え、もう帰るの?」
「ん、あぁ。」
そこは、伊緒の家の玄関の前。
会話した場所から数メートルしか進んではいない。
「キミ、一体何しに来たの・・・?」
「・・別に。」
すると、一言、夏純に別れを告げて、再び駅に向かって歩き出す。
「お兄ちゃん・・変なの。」
夏幻は、歳の近い伊緒の家に入る事は、どうしても出来なかった。



夕方、伊緒と夏純は手に包みを提げて、家を出た。
「夏純ちゃん、喜んでもらえるかな?」
「うん、大丈夫だよ、多分!」
2人は微笑みかけあいながら、駅に向かって歩き出した。
先ほど近くの百貨店で買ってきた道具を使い、クッキーを焼いたので、部隊へと届けるつもりらしい。
だんだんと駅に近付くにつれて、駅の入り口に座っている人影が浮かんできた。
「・・・・。お兄ちゃん?」
「え?」
その人影が、夏幻である事に気付くと、夏純はその人影に向かって走り出す。
「お兄ちゃん、どうしたの?待っててくれたとか?」
「いや、別に・・。」
後ろから追いついてきた伊緒が、座っている夏幻を見下ろす。
「キミ、帰ったんじゃ・・・?」
「・・・いや・・。」
「じゃあ・・・電車が事故かなんかで、止まってんの?」
「別に。」
何を聞いても、夏幻は『別に』としか答えない。
「電車、動くんだよね、夏純ちゃん、お兄ちゃんも何か用事があるのかもしれないし・・先に行こっか?」
「え・・ぁ、うん。」
先を行く伊緒の手に引かれながら、後ろを申し訳程度に振り返って夏純は先に行く。
「あ・・・。」
すると突然、夏純が立ち止まる。先で手を引いていた伊緒は、勢い余って少しバランスを崩しかける。
「どうしたの、夏純ちゃん?」
夏純は、その質問に答えずに、夏幻のもとへと走り出す。
「お兄ちゃん。」
「・・・ん?」
夏幻が夏純の方に向き直る。
「・・・・お金、ないの?」
「・・・・。」
しばらく夏幻は黙ると、恥かしそうに静かに肯いた。




「どう、奈っちゃん。イケそう?」
缶コーヒーを飲みながら琴奈が奈津に話し掛ける。
「ん、大丈夫。銃の調整も充分にしたし・・・。」
隊員全員分の夕食を準備しながら奈津がそう答えた。
美味しそうな料理が、隊員達が囲むテーブルに並べられていく。
「お。美味そうやな!」
橘が、すぐさま料理に箸を伸ばそうとするが、すぐにそれは奈津の平手によって弾かれる。
「ダーメ!まだ夏幻君が帰ってきてないでしょうが!」
「どこ行ったのかも解らんのに待ってられるかい!どっかで食ってきとるかもしれへんやんけ!」
『どこかで食べてきてるかも』には奈津も少し納得しかけたが、
「夏幻君に与えてる資金では、外食はできないでしょう。出来たとしても、帰りがここまで遅くなる事もありませんでしょうしね。」
「まさか、夏幻君の身に何か・・・!?」
琴奈が、背後に雷鳴でも走っていそうな形相でそう言う。
「何かって、何や?あれでもアイツはあの歳にしてはワイら隊員ビックリなくらい戦えるで?」
隊員達が、夏幻失踪について議論していたが、すぐにその議論の意味も無くなる。
部屋の扉が開いたと思うと、すぐに夏幻が入ってきた。
その後ろには、包みを手に持った伊緒と夏純。
「夏幻。どこ行ってたんだ?」
奈津と橘が議論している隙に、一人黙々と料理を平らげていた太一がそう尋ねる。
「別に。俺がどこに行こうと関係・・」
「お兄ちゃんは、私に会いに来てくれたんだよね。」
素っ気無い返事をする夏幻を、夏純が急いでフォローする。
「妹も大変だな。」
椎名が密かにそう言う。
「聞こえてるぞ、椎名。」
「呼び捨てにされる覚えは無いな。」
椎名と夏幻が、睨みあいながらそう言いあっている。
「まぁまぁ・・・。なんか、2人共そっくりって感じ・・。」
「おい、俺がこんな奴とそっくりだと!?」
「はっ!僕がこんな奴とそっくりだって!?」
椎名と夏幻が同時にそう言うと琴奈は。
「・・・・ゴメン・・・。やっぱそっくり。」
椎名と夏幻は一度睨み合うと、再び目を反らした。



深夜。
明日には再びあの巨大なマホロバの捕縛へと向かう事になる。
その為に、奈津はひとり黙々と銃の再点検を続けていた。
「んっと・・。スコープも・・特に異常ないし・・・。弾も充分補充したし・・・。」
銃関係の器具をガサゴソとあさりながら、奈津はそう呟く。
すると、器具の山の中から、まだ開けてない弾丸の箱が出てきた。
「これ、ニードル・・?」
奈津がニードルと呼んでいるその弾は、口径が小さく、弾の先端がとても細いので『針』と名付けられたのだ。
『ニードル』は、弾が当たった時の衝撃は大した事無いのだが、その細さ故、貫通力はトップクラスだ。
「あの大きさだと・・。貫通させて体の中に弾丸残した方が良いかもしれない・・」
そう言って、奈津は自分のサックに、その弾丸も詰め込んだ。
そして、夜は明ける。



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