第24話
KASHIN




椎名の撃った弾丸は、マホロバの胴体に命中した。
しかし、マホロバは特に苦しむ様子も無く、平然としている。
「く・・・貫通したか!?」
先ほどの巨大マホロバの中身とは思えないくらい、そのマホロバは小さかった。
そのために、椎名の『熱線』の弾丸は、マホロバの体を貫いて弾丸は通り抜けてしまったため、傷は浅い。
「なら数多く当ててやる・・・!!」
そう言って、ヨロヨロと立ち上がった太一は、連射型ボウガンを構え、撃ちはなった。
しかし、その矢は、マホロバの両手によって、あえなくはじかれる。
「ボウガンの矢を叩き落とすなんて・・。」
そう言っている間にも、マホロバは太一に向かって熱線を放つ。
「うわ!」
太一は、一度すでに熱線を受けている。もう一度当たれば、かなり危険だろう。
咄嗟に橘が、太一の前に踊り出て、熱線を受け止める。
「祐宇!」
「ちぃ・・。耐熱スーツ着とってもこの熱さかいな・・。」
そう言って橘は再び刀を構え、マホロバに向けた。
そして、太一の背後から、一発の弾丸が通り過ぎる。
奈津は、『ニードル』から口径の大きい弾丸に交換し、狙撃銃でそれを撃ち放つ。
それでもやはり、マホロバの体内に弾丸を留めるには至らず、体を貫通して奥の岸壁を砕く。
「銃を撃っても重傷にはならない・・・ボウガンの矢も叩き落とされる・・!どうすれば!!」
椎名がそう言うと・・
「私と祐宇さんが行くよ!」
そう言って琴奈が双薙刀を手にマホロバに向かって走り出した。
マホロバはそれを見逃さず、熱線を撃つ。
琴奈はそれをなんとか横っ飛びに避わしたが、耐熱スーツを通して少し熱が伝わってくる。
「ふぅ・・」
「浅原!無理するな!ボウガンを叩き落した相手だ!接近戦も通用するとは限らないぞ!」
椎名が、尻もちをついている琴奈に向かってそう叫んだ。
「多分大丈夫!あいつの足を見て!」
隊員達が一斉にマホロバの足を見る。
そのマホロバの足の下からは、無数の根が地面に無かってのびていた。
「なるほど・・あのマホロバは、前に、逃げる僕達を追ってこなかったのではなく、追えなかったのか・・?」
エリックが、そう言った。
「あの熱線は、動けないっていう短所を補う武器って事ね・・」
隣りにいる奈津がそう言う。
「だから大丈夫!それに、私の武器が止められても、祐宇さんの刀までは止められないでしょ!」
琴奈は再び立ち上がり、双薙刀を構える。
「確かに筋の通った作戦ではあるな・・。それに、耐熱スーツを着てる2人なら熱線にも多少は耐えられる・・。」
太一がそう言うと、椎名が続ける。
「・・・よし、浅原!橘!お前達に任せた!」
その声を聞くと、琴奈と橘は、一斉に左右から襲い掛かった。
そして、同時に、各々の武器を振り下ろす。
『決着』を予感していた束の間に、その『結果』は逆転する。
マホロバは、左手で一直線に熱線を撃った。
橘の、先ほどの左眼をかすった銃弾で裂けた耐熱スーツの一部分を撃ち抜いた。
マホロバは、右手で一直線に腕を伸ばした。
琴奈の右肩を貫き、上空へと持ち上げた。
「浅原!!!!!!」
椎名が、思わず声を上げる。
「そんな馬鹿な・・!」
太一が言う。
「遠くにいても熱線を撃つ・・。同時に掛かっても、全てに対処する・・。そんな奴をどうやって捕殺すれば良いんだ!」
エリックが、取り乱し、そう言う。
「祐宇ちゃん、左眼に直に熱線を受けた!それに、琴奈ちゃんもまだ苦しんでる!早く助けなきゃ!!」
奈津が隊員達に向けて言い放つ。
「しかし・・近付けば俺たちも・・・」
太一がそう言うが、奈津は聞かない。
「それでも助けなきゃ!」
奈津が走り出そうとしたその瞬間。
驚くくらい呆気なく、『決着』が見えた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!」
突如聞こえたその叫び声は、琴奈から発されていた。
「琴奈ちゃん・・?」
奈津が、足を止めて琴奈の方を見る。
琴奈は、自分の右肩を貫いている腕を、左手で鷲づかみにする。
するとたちまちその腕は黒く変色し、煙を上げて崩れ落ちた。
それと同時に、マホロバの断末魔ともとれる叫び声を聞いた。
「あれは・・・凛か!?」
エリックが咄嗟に叫ぶ。
なくなった右手を、高々と掲げ、苦しむマホロバに、凛の攻撃は止まらない。
まずは両手でマホロバの左手を全力でつかみ、高熱化する。
すぐに炭と化して崩れ落ちた。
「両手を・・奪った・・。これでアイツは何もできない・・・!」
その場にいた全員が、勝利を確信した。
そして。琴奈の姿をした『凛』は、マホロバの胴体を片手で貫くと、再び高熱化。
マホロバの全身に、焼けるような熱がほとばしり、全身を炭へと変えた。
マホロバの死を確認すると、琴奈は、ゆっくりとその場に倒れこんだ。



「大丈夫か!」
倒れこんだ琴奈と橘のもとに、隊員達が集まる。
「ん・・・私は大丈夫・・。」
「ワイも・・・眼はなんか見えにくいけど、まぁ大丈夫や・・」
ふたりとも、無事とは言えないが、とりあえず生きてはいたので安心する。
その横には、黒くなり、原型を留めていない『神獣』の姿があった。
「とりあえず良かった・・・。なんとか捕殺・・・できたんだよな・・。」
太一が、疲れ果てた表情でそう呟いた瞬間。
悪意の塊が、地表に姿を現した。
「残念だ・・。私の最後の仕上げに必要な材料を・・呆気なく消してしまうなんて・・・」
その声に全員が驚く中、エリックは何やら焦り始めている。
「ど・・どこ!?」
奈津が叫ぶ。
「あそこだ!!」
椎名が、岩壁の上を指差しながらそう言った。
そこに立っていたのは、薄いグリーンの短髪。体には、白衣をまとった長身の男。
良く言えば美形、悪く言えば貧弱と呼べる男だ。
「誰だ・・?」
椎名が不思議そうにその男を眺める。
「エリクスン・ブルフォード・・。あなたなら、見覚え・・いや、この声に、聞き覚えがあるはずですよね?」
男がそう言うと、隊員達は一斉にエリックを見る。
「あなたは・・・まさか、中央塔の・・・?」
「そう。指揮官だ。」
「ど・・どういう事?」
エリックと男が質疑応対すると、奈津はそう尋ねる。
「つまり・・・『神獣』の捕縛命令や・・今までの捕縛命令を通信で出していたのは、この方なんだよ。」
エリックがそう言うと、隊員達は、一斉に男に注目する。
「いかにも。君たちは、本当に今までたくさんのマホロバを捕縛・護送してくれた。感謝してるよ。」
「で、アンタは俺たちにその感謝の言葉を聞かせる為に、ここに来たのか?」
男の言葉に、椎名が邪見に食いかかる。
「・・・。しかし、残念な事がひとつあります・・。私の体は、今まで送られたマホロバによって、強化された。」
男の話していることに隊員達は耳を傾ける。
「あと一つ・・。最後の仕上げには、最大のマホロバと呼ばれた、そう。『神獣』の体が必要だった・・。」
「何を言って・・・。」
太一の言葉は、すぐに掻き消される。
「エリクスン・ブルフォード。確か・・・捕縛を命じたはずですが・・・?」
その瞬間男が見せたその眼光は、隊員達を震え上がらせた。
「ほ・・・捕縛する為に、つ・・つい、力を入れすぎた為か・・。こ・・殺してしまったんだ。」
エリックが、怯えながらそう言う。しかし・・。
「故意では無い・・と?」
「は・・はい。」
「馬鹿を言うな!」
突然、男は拳銃を取り出し、エリックに向けて発砲した。
銃弾はエリックの頬をかすめ、地面に激突した。
「何をするんだ!!」
椎名がエリックに駆け寄り、男に向けて言い放った。
「『そんな奴をどうやって捕殺すれば良いんだ』・・。これは、先程貴方が言った事だ。・・故意に、捕殺をしましたね?」
エリックはハっとして男に向き直る。
「神獣・・。その太古のマホロバを喰らう事によって私の肉体は完璧になるというのに・・。」
男が放ったその言葉に、隊員達は、一瞬耳を疑う。
「マホロバを・・・喰う・・・!?!?」
椎名が驚き、そう言う。
「君達には失望した。近いうち、中央塔を訪ねると良い。・・・処刑してやるから。」
そう言って男は踵を返した。
「なんなんだ、アイツは・・。」
太一がそう言うと、男は足を止め、隊員達を見下ろす。
「死ぬ前に刻め!私の名は、『カシン』!華秦だ・・!!」
そういって再び華秦は踵を返し、帰って行った。
琴奈が、その名を聞いた途端に眼を開けた。
「華秦・・・華秦って・・・。青環君が言ってた・・。」
「ああ・・。俺も聞いたぜ・・。アイツが・・・。アイツが華秦・・。」
琴奈の言葉に椎名が肯きそう答える。
「ねぇ・・、とりあえずビルにもどろう!怪我人が多すぎるよ!」
奈津の提案に、全員は承諾した。




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