第26話
数分間の斬闘
夜が明けた。
私たちは、装備の最終点検を済ませ、今中央塔の正面入り口の前にいる。
今まで、私たちに指令を送りつづけてきたと思われていたその中央塔は、思いのほか静か。
私達、舞台を総括する建物ならば、もう少し騒々しいはずなのに。
この中央塔の中に潜む物は、私たちの上官でもなんでもないのかもしれない。
それを知ったら、どうすればいいんだろう?
その答えは解らないけど、私たちが知るべき事だと、思う。
だから私達は一歩ずつ足を踏み入れた。
今まで誰も中の様子を語る事の無かった、中央塔へ。
正面入り口から入ってすぐ、通路は3方向へ分かれていた
「エリック、どの道に進めば良いの?」
「私の調査では、左はデータバンク、右は制御室。正面は上階層へと進む通路のようです。」
エリックが、それぞれの通路を指差しながら、そう説明した。
「じゃ、ワイと大林のオッサン、椎名は右の通路に進むで。」
橘が、右の通路を指差しながら、そう言った。
「じゃあ、私とたーちゃん、なっちゃんは正面だね!」
琴奈がそう言う。
「私は左の通路からデータバンクへ進みます。夏幻君、君もこっちだ。」
「解った。」
エリックが左の通路へ足を踏み出しながら、夏幻を手招きする。
「とりあえず、琴奈さん達は電子ロックが解除されるまで扉の前で待機して下さい。」
「ん、分かった!」
エリックと琴奈はそう会話を交わして、それぞれ3方向へと散って行く。
「あれやないか?」
橘が、通路の先にある機械のようなものを指差しながら大林に話し掛けた。
「エリクスンが、こちらの通路に電子ロックの解除装置があると言ったのです。
そして、私達は右の通路へと進み、その先にコンピュータの端末を見つけた。
その機械が電子ロック以外の何であると言えるのでしょうか?
考えられる例は・・・。」
「やかましいわ!!電子ロックの解除コードなんやな?さっさと作業に取り掛からんかい!」
橘が、大林の長話を途中で断ち切る。
「それは良かった。実を言うと、考えられる例なんて無いのだよ。
あの後どう言葉を続けようと迷っていたんだ。」
「・・・今みたいに続ければ良かったんじゃないか?」
椎名が口を挟む。
「遊んでる暇は無いんや。大林のオッサン、早く取り掛かれや!」
「分かってる。少し時間がかかるが、待っていてくれたまえ。」
大林が端末に近付くと同時に、橘は道を譲る。
「椎名。すぐに背後にお前のマシンガンを乱射せい。」
椎名の横に来た橘が、小声で話し掛けた。
「・・・・わかってるさ。」
椎名もまた小声で、そう返答すると、静かに引き金に手をかける。
次の瞬間、椎名は素早く振り返ると、引き金を引く。
椎名が『熱線』を改良して作ったお手製のマシンガン。
その銃口から、嵐のように弾丸が飛び出して行く。
その銃弾の激しさから、煙の壁が舞い上がる程。
「やっぱ誰かおるで!金属音がした!油断するんやないでぇ!」
橘が、腰に提げた刀を抜き取り、中段で構える。
爆煙の中から、銃弾の反撃が来る事はなく、ゆっくりと人影が近付いてきた。
それと同時に、手を打つ音・・・拍手が、ゆっくりと聞こえてきた。
「なかなか良い気配察知能力だ。感心するよ。」
だんだんと爆煙が薄れ、その影は次第に輪郭を映し出してくる。
その人物もまた、刀を構え、こちらに近付いてくる。
「まさか・・・・。銃弾を刀で弾きやがったのか・・!?」
椎名が驚いて一歩下がる。
しかし、自分の目で確かめるまで信用できないのか、もう一度その人物に向かって銃を撃つ。
爆煙が立たない程度に抑えておき、その様子をしっかり眺める。
やはり、推測のとおり、その人物は、上段、中段、下段へと素早く刀を動かし、銃弾を全て弾き飛ばした。
「く・・・こいつ・・・。」
椎名は、遠くに下がり、マシンガンをしまった。そして変わりに散弾銃を取り出す。
「誰や、お前は・・・!」
橘は、しっかりと刀を構え、近付いてくる人物に問う。
「私は都丸。華秦の右腕・・・。近距離戦闘型兇人、都丸です。」
「・・・・兇人?」
椎名が、不思議そうにい聞き返す。
「貴方達が知ることではない。ここで死体になって頂こう。」
そう言って、都丸は橘と椎名に向かって、走り出した。
そして、走りこんだ勢いに乗せて、思い切り刀を振り下ろしてくる。
「うぉぉぉぉ!!!」
橘が間一髪、それを自分の刀で受け止めて、弾き飛ばす。
それと同時に椎名も動く。素早く都丸に近付き、散弾銃の引き鉄を引いた。
銃口から発射された銃弾は都丸の横腹に命中し、その体を吹き飛ばす。
「・・・人間にしては結構優秀な武器を使いますね。」
至近距離で、散弾銃の弾を全て受けたにも関わらず、都丸は尻餅すらつかない。
「・・・お前、人間じゃないな!?」
椎名が再び距離をとってそう問い掛けた。
「人間ではありません・・・が、マホロバでもマホロバ憑きでもありません。」
都丸がそう言うと、椎名が続ける。。
「そんな・・・でも人型の生物なんて他に・・。」
「兇人・・・やな。」
橘がそう言った。
「そうです。私たちは『兇人』と言う新人種なのです。最も、それを知るのは私と華秦、それに緋村だけですがね。」
「緋村?」
椎名が、聞いたことのない名前について聞き返す。
「それも、貴方達が知る事ではありません。それでは、続きをはじめましょう。」
そういうと都丸は、再び一直線に走ってきて、刀を振り上げた。
縦に振られてきたその刀を、橘が横に受け止める。
と、その時。橘の体に電撃が走る。
「う・・うぉ!!」
思わず刀を振り払い、尻餅をつく。
「刀を伝わらせて電撃を送ったんです。どうですか?これが兇人の力です。」
「バケモノか・・・!」
「橘!一旦退くんだ!」
それを聞いて、橘は落とした刀を素早く拾い、距離を取りなおす。
「どうする、椎名。」
椎名の横に立った橘が、小声で話し掛ける。
「・・・銃は効かない。お前の刀で仕留めるしかないな。」
「しかしあいつ、刀も簡単に受け止めやがるで?」
「受け止めるって事は、当たったら多少の傷を受けるんじゃないか?」
「・・・でもどないしてアイツに近付くんや?」
「簡単さ。俺が囮になれば済む事だ。」
「椎名・・!そいつは・・」
「俺がアイツに隙を作る!後は思い切り斬っちまえ!」
橘の言葉を聞かずに、椎名は一目散に飛び出した。
「馬鹿め・・!」
都丸が刀を中段で構えようとしたその時。
椎名がマシンガンの引き金を引いた。
「おらおらおら!!」
都丸に向かって発砲を続けながら、円を描いてとまるの周りを回る。
「この程度・・・子供騙しだ!」
都丸は、動きを読み、椎名が居るであろう方向に刀を向けた。
「橘!!目を閉じろぉー!!」
そう叫んだ次の瞬間。自らも目を閉じた。
そして、『閃光』の引き金を引いた。
辺り一面に、まばゆい光が放たれた。
「ぐぁぁぁぁ!!き・・・キサマぁ!!」
都丸の目の前で放たれた閃光弾は、都丸の視界を確実に奪った。
それで気が動転したのか、都丸は椎名に向かって、お粗末に刀を振り回してくる。
その隙を見逃すはずもなく、すぐに橘が自慢の刀で都丸の背中を思いきり切り裂く。
「ぐ・・ぁ・・」
都丸の最後の断末魔は、最後まで聞く事なく、消えた。
「よし、後は大林のオッサンが解除し終わるのを待つだけやな。」
橘がそう言うと、大林が口を開いた。
「待つ必要は無い。私がここに残れば良い事だ。
君たちが中央の電子ロック扉に辿り着く頃には解除も終えているだろうさ。」
大林が珍しく簡潔に言うと、椎名と橘はゆっくりと肯いた。
そして、元来た道を急いで戻り、琴奈達の後を追う。
一方、エリックは・・・。
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