第27話
『彼』は唐突に
もうすぐ、来る。
僕には解る。
知らないガキと、軟弱メガネ。
ならそろそろ僕も行くとしよう。
この程度の鉄格子・・。
どうって事は・・・無い!!
「見えてきましたよ、あれがデータバンクですね。」
エリックが、通路の先に見える端子を指差してそう言った。
「じゃあ、早いとこデータ解析して、他の奴らに追いつこうよ。」
夏幻がそう返答する。
それに応じたエリックは、急いでデータバンクへと駆け寄った。
「うーむ・・。」
「出来そうかい?」
顎に手を当てて唸っているエリックに、夏幻が声をかける。
「大丈夫でしょう。やってみます。」
そう言ってエリックは、なにやらカタカタと何かを入力し始めた。
その間夏幻は全くやる事もないので、とりあえず銃を構えて警戒する。
「兇人・・。なんだ、これは・・。」
エリックが、なにやらキーワードを導き出す事に成功したようだ。
「マホロバ憑きを越えて、やがてマホロバそのものさえも越えて産まれた存在・・?」
「なんだよ、それ。意味分からねぇよ。」
夏幻が、データバンクの液晶画面を覗き込んでそう言う。
「兇人と呼ばれるのは、3人の『ヒト』・・。一人は、都丸・・と書かれていますね。華秦もどうやらこの1人のようです。」
「もう1人は?」
「東海林さ。」
「・・・・!!」
『もう1人は?』の問いは、エリックの口からではなく、2人の背後から聞こえてきた。
エリックと夏幻は、すかさず振り向き、拳銃を構える。
そこには、隠れる様子も無く、平然と立っている一人の男が居た。
「つれない奴らだ。せっかく名乗ってやったのに。」
「お前が・・・3人の兇人の一人か・・!」
「あぁ、そうだ。もっとも、都丸は既にアンタらの仲間に倒されちまったみたいだけどなぁ?」
「椎名と橘・・・・か。」
それからしばらく沈黙が続いた。
すると、東海林と名乗る『兇人』が口を開いた。
「あんな奴でも数少ない『兇人』としての仲間だったんだよ。そいつを殺されて、黙ってられると思うか?」
エリックと夏幻は、東海林の顔つきが変わるのを、見た。
それと同時に、夏幻が素早く銃を構えるが、遅かった。
「熱っ!」
夏幻の手に、突然熱が生じた。
その衝撃で思わず銃を地面に落としてしまった。
「なんだ、あの武器は・・!」
エリックが、東海林の持つ見た事の無い武器に注目してそう言った。
「これが、現代に置ける最大級の武器・・・。『レーザーライフル』という奴だ。」
「レーザーライフル・・・!?」
「電子学の応用・・とか言ってたかな、確か。まぁ、作ったのは華秦だから俺にも詳しい事は解らんよ。」
エリックは、その武器に警戒して、少しずつ間合いを置く。
夏幻も、手が落ち着いたところで銃を拾い、距離を置く。
「あの熱線には触れるなよ!・・熱い!」
夏幻が、混乱してるのか、解りきっている事をエリックに忠告する。
「甘いなぁ・・。この銃はな、引きがねを引いている限り、永久的に熱線が生じるんだ。つまり・・・。」
東海林が引き金を引き、横に振り払った。
「ぐぅ・・・!!」「うわぁ!!!」
床と平行にスライドさせられた熱線は、エリックと夏幻を連続して貫いた。
「無限の長さの刀にもなる・・って事さ!」
東海林はエリックに向かって、縦に熱線を振り下ろす。
それをエリックは、横転して避けた。
隙を突いて夏幻が銃を東海林に向かって撃ち込むが、あまり効いている様子は無い。
「銃が効かないのか!?」
夏幻がそう言うと同時に、熱線が夏幻の右腕を貫いた。
「うぁぁぁぁ!!」
そのあまりの熱と痛みに、夏幻は思わず悲鳴をあげる。
「・・・このままじゃ・・・。」
エリックは、レーザーライフルの銃口が自分の方に向けられるのを見た。
その時。『彼』は唐突に現れた。
「うぐぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一瞬の出来事だった。
突然東海林が、右手に構えたレーザーライフルを取り落とし、悲鳴をあげている。
よく見ると、どうやら彼の右肩に長身のナイフが突き立てられているようだ。
東海林が乱暴にそのナイフを引き抜くと、息荒く言い放つ。
「キサマ・・・キサマァァァァ!この、出来そこないが調子にノルナぁぁぁ!!」
その声は、先ほど聞いていたモノとは少し違って聞こえた。
エリックはその様子を呆然として見つめる。
「一体何が・・・。」
「出来そこないに、殺される気分はどうだい、『兇人』さん?」
『彼』は、いつの間にか東海林の背後に回り、頭部に銃を突きつけている。
エリックは、その『彼』を知っていた。
「キ・・・キサマぁ・・!」
「終わりだよ東海林。バイバイ。」
『彼』は引き金を引いた。
撃ち放たれた弾丸は、東海林の頭の中で止まり・・破裂した。
その『彼』特製の弾丸も・・・エリックは知っていた。
『彼』は自分の役割を終えると、ゆっくりと、エリックに近付いてくる。
「どうして・・・・貴方がここに?」
「・・・ここの牢獄に閉じ込められてたんだよ。エリックも元気そうでなによりだ。」
「誰だい、エリック、その人・・。」
夏幻が聞くとエリックは答えた。
「この人は・・・・。元、捕縛部隊員・・・。」
エリックがそこまで言うと、『彼』は続けた。
「綾咲、双真だ。よろしくな、キミ。」
「俺はキミじゃない。夏幻だ。」
「ほいほい、そんじゃ、よろしくな、夏幻。」
そう言うと、3人は琴奈の後を追うべく、元来た道を戻った・・。

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