第28話
兇人
浅原琴奈、天城奈津、大丸太一の3名は走っていた。
大林が開けた電子ロックの扉を抜けて、華秦の元へと。
「はぁ・・はぁ・・・疲れた・・・」
「どうしたんだよ奈っちゃん!この位で!」
「た・・・たーさんが・・タフすぎるんじゃない?」
琴奈達は、今階段を休まずに登りつづけてきた所であった。
階数にすると10数階には及んでいるだろう。
「大体、華秦に行き着く前に体力使い果たしたらどうするのさ・・・」
琴奈がそう言いながら壁際に座り込む。
「ふう・・・。仕方ないな。少し休んでいこうか。」
太一も座り、それに続いて奈津も座り込む。
「でも、これだけ登ったって事は華秦も近いよね。」
「そうだな。お偉方ってのは高い所にいるもんだ。」
それ以降、口を開くことは無かった。
少しでも行動を減らし、体力の回復に専念する。
「そろそろ行こうか。」
太一がそう言いながら立ち上がった。
「うん。」「ええ。」
琴奈と奈津が、それに続く。
「何だ、これは・・・」
休憩後、再び階段を登っていた3名だったが、異様な部屋へと行き着いた。
「SF映画じゃあるまいし・・・。」
「ホラー映画って感じもするけど・・・」
琴奈と奈津が口々に漏らす。
その部屋は、6面が機械と言うべきか、触手と言うべきか、そのような物体で囲まれていた。
そして、先に進む通路らしきものは、それ以上は見当たらない。
「最上階・・・・だよな?」
「多分・・・」
太一と琴奈がそう確認し合うが、そこに華秦の姿は見当たらない。
「道、間違えたのかな?」
「そんな筈は無い・・・一本道だったし・・・。」
琴奈と太一は言葉を掛け合いながら、奥へと進んでいく。
その時、奈津は、壁の一部が2人に向かってのびていくのが見えた。
「・・・・何!?」
奈津が危険を察知し、すぐさま叫ぶ。
「2人共!!気をつけて!後ろよ!」
その声に反応して2人が振り向いた時には既に遅かった。
「きゃーー!!」「な・・・っ!」
触手は2人の足に絡みつき、上空へと舞い上げた。
「琴奈ちゃん!!」
奈津はそう叫ぶと、手に持った突撃銃で琴奈の行動を制限している触手を打ち抜く。
幸いな事に、強度はそれほどではなく、いとも簡単にその触手は切れた。
そして、支えを無くした琴奈は、勢い良く地面に叩きつけられた。
「・・・・?あれ、痛くない・・。」
「この床・・気持ち悪い・・・・・・。」
琴奈は床に叩きつけられたのだが、その衝撃は全てその床に吸収されたようだ。
「この部屋・・・生きてるの?」
琴奈達が太一を忘れてそう言っていると、太一は自力で触手を引きちぎった。
太一もまた、その床へと落下する。
「な・・・なんなんだ、この部屋!」
太一はそう言うとすぐにボウガンを構える。
「ようこそ、捕縛部隊の皆さん。ですが、数が足りないようですね・・・。」
「!!!!」
部屋全体に、声が響いた。その声は、紛れも無くあの華秦のものであった。
「華秦!?貴様、どこにいる!!姿を現せ!」
「ここに居ますよ。」
そう華秦の声が聞こえると同時に、自分たちの正面の壁から、1人の人間が出てきた。
しかしその姿は、人間と呼べる物なのか。その判断は琴奈達にはつけられなかった。
あくまで言わせてもらえば、『人型の』生物。
「都丸と東海林はこの世を去ったようですね・・。」
「都丸・・東海林?」
「誰だ、そいつは・・・。」
琴奈が考え、太一が問う。
「私の同胞ですよ。数少ない・・ね。」
そう言うと華秦は自分たちに背を向けた。
「油断・・していましたね。よもや、生身で兇人を打ち破る力を身に付けているとは・・。」
そして再びこちらに向き直る。
「そういえば、出来そこないの兇人も居ましたね。アイツならまあ分からない事も無いが・・・。」
「出来そこないの兇人・・・?」
華秦のその言葉に、太一が反応する。
「貴方が良く知る人物ですよ・・。ですが、貴方が知る必要も・・・無い・・・。」
華秦の目つきが変わった。
それは一瞬の出来事だった。
気が付いた時には、一本の触手が太一の腹を貫いていた。
「ぐ・・・ぐぁ・・・!!」
「たーさん!!」
琴奈が、双薙刀を片手に太一に駆け寄る。
その琴奈にもその触手が飛び掛ってきた。が、なんとかそれを双薙刀で切り払う。
奈津も、華秦に向けて突撃銃を発砲しながら太一に駆け寄る。
良く見ると、その触手は壁からではなく、華秦そのものから弾きだされていた・・・。
「では、約束どおり・・・処刑を始めますか。」
琴奈と奈津は、両手でしっかりと、各々の武器を構えた。
「きゃ!!」「う・・!!」
無数に飛び出てくるその触手は、次第に2人の体を蝕んだ。
「琴奈・・・ちゃん・・奈・・・っちゃん・・・。」
太一が、床に落ちているボウガンに手を伸ばすが、あと少しのところで届かない。
奈津は、絶えず華秦に突撃銃を撃ち込んでいるが、まるで効果があるようには見えない。
琴奈に至っては、華秦の懐に飛び込む隙さえ見つけられない。
「さあ、どうしました!」
「あ!」
華秦が伸ばした触手は、奈津が持つ突撃銃を弾き飛ばした。
それと同時に、もう一本の触手は、奈津の足を貫く。
「痛っっ!」
痛みに耐え切れず、奈津はその場に倒れ込む。
「奈っちゃん!」
琴奈は、向かい来る触手を切り払いながら、顔を奈津の方に向ける。
「よそ見している暇があるのですか!?」
今まで奈津に向いていた触手も、全て琴奈に向けられた。
2,3本までなら切り払う事ができた。
が、4本目の触手が琴奈に向かってくる。琴奈の体勢は崩れていた。
「きゃーーー!!」
琴奈の体は触手に・・・貫かれなかった。
琴奈に向かってきた触手は残らず切り落とされていたのだった。
琴奈は、自分に痛みが無い事を確認すると、ゆっくりと目を開ける。
その瞬間、華秦の体に無数の穴が開く。
それと同時に、銃声が聞こえているので、それが弾丸の跡だというのはすぐ分かる。
弾道を見ると、そこには、マシンガンを両手に構え、撃つ椎名が立っていた。
「琴奈ちゃん!」
そして、自分の横には。刀を構えた橘の姿。
「うぅ・・2人共ぉ・・」
「怪我は無いか?」
椎名が銃を乱射しながら琴奈に話し掛ける。
「私は、大丈夫・・・。でも、たーさんと奈っちゃんが・・・。」
椎名は、爆煙で華秦の姿が見えなくなると、すぐに太一の元へと向かった。
琴奈は奈津の所へ。橘は反撃に備えて、刀を構え爆煙を見つめていた。
「大丈夫、急所は外れてる。」
「こっちも。足を怪我して立てないだけみたい・・」
琴奈と椎名が、太一と奈津の安全を確認しあう。
「・・・おい、気ぃつけい!!アイツおらへんで!」
橘のその叫び声に反応して、琴奈と椎名はすぐに爆煙が晴れているその場所を見た。
確かに、そこに華秦の姿が無い。
「何処に・・・。」
3人は、武器を構え警戒する。その直後。
琴奈の背後の壁から、華秦が姿を現した。
「浅原ーーーー!!後ろだ!!!」
それを見つけた椎名が、すぐに琴奈にそう叫ぶ。
それは間に合わなかった。
琴奈は振り向く事も無く、その体を触手で貫かれた。
そして、体ごとゆっくりと、床に・・・倒れた。
衝撃は、無かった。
「浅原!!!」
「琴奈ちゃん!?」

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