第30話
世界は光に




琴奈と双真は飛び込んだ。
左右から飛んでくる触手と両腕をかいくぐって。
華秦の顔が近くなる度に、少しずつではあるが、攻撃を加えていく。
「調子にノルなぁーー!」
華秦が叫ぶと、触手が再び無数に伸び、双真の元へと伸びる。
琴奈はその隙に華秦の前へ跳躍するが、華秦もそう無能ではない。
琴奈の拳を片腕で止め、振り払い琴奈の体を大きく吹き飛ばした。
双真はナイフで一部の触手を切断出来たが、数本は自身の体をかすめ過ぎて行く。
「それ!!」
触手が華秦の元へ戻る前に、なんとか引き金に指をかけ、額に銃弾を撃ち込んだ。
額に食い込んだ弾丸は破裂し、その肉を大きく抉ったがまだ核らしき物は見えてこない。
「随分と奥深くに隠しこんでいるようじゃないか」
双真はすぐに距離を置く。
触手は絶えず琴奈の元へも伸びているが、琴奈を護る熱壁はそれの侵入を許さない。
「早くしないと、どんどんアイツの体、再生してるよ!」
「分かってるさ!でもうかつに近づけないんだよ!」
「同時に行けば!!」
琴奈はそう言うと、両拳を深く握り締めた。
「同時攻撃・・・それしか無いのかもね。」
双真もそう言って納得すると、ナイフと銃を構える。
「今よ!」
琴奈と双真は、同時に華秦に向かって走り出す。
「抉れろーー!」
双真が華秦の額の近くでホローポイント弾を撃ち込んだ。
大きく肉は抉れた。そこに琴奈が追撃をかけるために飛び込む。
「行っけぇー!」
「甘い!!」
再び触手が琴奈に向かって突き出された。
琴奈は咄嗟の事に、熱壁を生じさせる事ができない。
「しまった!浅原!」
床に着地した双真が、琴奈を見て叫ぶ。
「きゃぁーー!!」
突き出された触手は、琴奈に突き刺さる前に止まった。
「・・・琴奈・・!!」
「・・・・!!みー君!」
咄嗟に飛び出した椎名が、琴奈をかばい、その触手を受け止めていた。
「マホロバ憑きは馬鹿だから仲間をかばう・・・って言ったけど・・・。人間の馬鹿な所も見せてやるよ!」
そう言うと椎名は、ゆっくりと散弾銃を華秦の額に向けた。
引き金を引くと、それは密集した3発の弾丸。
椎名が自己流で改造した散弾銃。密集同時撃ちの散弾銃。
圧縮されたその弾丸は、華秦の額に当たるとその肉を大きく抉った。
その奥に、鈍く光る物体が確認できた。
「浅原!!そいつが核だ!いけ!!」
双真が、華秦の額をみながらそう叫ぶ。
「はぁぁぁぁ!!」
琴奈は、最大限まで拳に熱を込めた。
琴奈は、最大限まで力を出し、拳を握った。
そして、打ち抜いた。
その時、最後の捕縛は終わりを告げた。



「華秦。」
その部屋には、4人の人間が居た。
浅原琴奈。椎名三鈴。綾咲双真。そして、倒れ込み、力を無くした華秦。
「・・・俺が死んだら、マホロバはおしまいだな・・。」
華秦が、弱々しい声でそう言う。
「どういう意味?」
琴奈がそれに対して問う。
「マホロバがいつこの世界に現れたか、それをお前達は知っているか?」
「・・・さぁね。僕が産まれた時には世界はマホロバだらけだったよ。」
この中で恐らく一番年上の双真がそう言ったので、琴奈と椎名も肯く。
「正解は、大体50年前・・。作ったのさ、私達が。」
その言葉に、3人の隊員達は驚いた。
「作った・・・!?何のために・・・。」
「・・・・。正確には・・・違うな・・・。」
華秦はそこまで言うと一度咳き込み、血を吐いた。
「私達が、作り変えた・・・と言うべきかな。」
「・・・?」
「50数年前のマホロバは、凶暴な生物では無い。むしろ、人々の生活に欠かせない存在だったのだ。」
「なんだ・・と?」
椎名が傷口を抑えながらそう言う。
「・・・私は、人々を制する力が欲しかった。人々からの信頼が欲しかった。」
「・・・・。」
「・・だから作り変えたのさ・・。今まで従順だった生物が自分たちに襲い掛かる・・・。
 その危険となった生物を、私や仲間が排除する。それだけでも信頼は頂けたよ・・・。
」 「そんな・・・。」
「私が死ねば、マホロバ達も元あるべき姿に戻るだろう。」
「元あるべき姿?」
琴奈が聞くと、華秦は数秒の間沈黙した。
「『マホロバ』。その言葉の本当の意味を考えれば良い。それが、元あるべき姿だ。」
「本当の・・・意味。」
双真がその言葉を紡ぎ出すと同時に、中央塔が大きな振動に襲われた。
「な・・・何!?」
「爆破装置だ・・・。早くここから出ることを・・・勧める。」
華秦の最後の言葉は、それで終わった。
「2人共、急ぐぞ!!」
「うん!!」



この日、この世界から中央塔は姿を消した。
太陽の光と煙に包まれたその中央塔が崩れ去るのを、捕縛隊員達は見ていた。
中央塔が崩れ去るのと同時に、琴奈は何やら気持ちが落ち着くのを感じた。
「・・・帰ったんだ、凛・・。」
「華秦が・・・死んだな。」
双真もそう確信する。
「琴奈さん!!」
先に脱出していたエリック達が琴奈達3人の元へと駆け寄る。
怪我をしていた隊員も、応急処置でどうやら動けるようにはなったようだ。
「終わったんだね・・・。」
奈津がそう呟いた。
「・・結局、何だったんだろうな・・。」
「さぁな・・ワイにもサッパリわからへんわ。」
太一と橘もそう言った。
「・・・マホロバが居なくなったんだから・・・この部隊も解散・・?」
「だな。」
琴奈が言い、椎名が肯定する。
「別に、会えなくなる訳でも無し。帰りましょうか・・・。とりあえずは、ビルに。」
エリックがそう言うと、全員が肯いた。
浅原琴奈。
椎名三鈴。
天城奈津。
大丸太一。
橘 祐宇。
エリクスン・ブルフォード。
宵原夏幻。
綾咲双真。
大林光貞。
8人の人間は、朝日に包まれたその瓦礫の山に背を向け、歩き出した。
彼等の戦いは終止符を打った。





うわぁー、手抜き絵ー。 ※ブラウザの戻るでお戻りください。