京の夜はとても深い。
明かりが何もない深い深い黒の世界。
たったひとつだけの黄金の月の光が、その黒の世界をさらに引き立ててしまっているようだった。

その月の光さえも届かない部屋の一室で、あやしくうごめく二つの体があった。

二人の体は、衣服を何一つまとっていなかった。
しっかりとつながった下半身を中心に、激しく腰を振る二人。
軽々と体をかかえあげられ、喘ぎ声をあげ続けながらも腰を振る女性は、
数年前に龍神の神子として、京の世界に召喚された、あかねという女性だった。

激しい愛撫に、艶のある声をだしてあかねはこたえる。
「んっ!・・・あぁ・・・いい・・・」
この声の出し方も体のくねらせ方も、すべてこの人におしえこまれたものだった。
毎晩のように体を重ね、16歳だった少女は、その人の好みの「女」になっていった。

激しく腰を振りながら、あかねは冷静に考える。

この人は私の体のすみずみまで知っている
・・・・だが、心までは知らない。
こんなにも冷めてしまっている、私の心を。

体は熱くて、乱れて、こんなにも濡れているというのに、心ではこんなにも冷静に考えている。
体が熱くなればなるほど、心の冷たさを感じる。
・・・まるで、心と体が別々になってしまったようだった。

龍神の神子として、この世界に召喚され、怨霊達と戦いながらあかねは愛すべき人に会った。
先のみえない長く辛い戦いも、その人がいるから。その人が住む世界だから。
たとえ自分とは生きていく場所が違っていくとしても、その人が生きていく世界だから。

そう思ってあかねは戦い続け、大切な人がいる世界を守ることができた。
戦いを終えた後、大切な人からこの世界に残って欲しいと請われた。
そしてあかねは、自分の生きていく世界をこの京に決めた。
たとえ今までの16年間の全てがある自分の世界より、大切な人がいる世界で一緒に生きていこうと決めた。

大切な人がいなくても、何もかもがそろっている楽しい元の世界。
大切な人がいるけれど、自分の知ってる世界とはまったく違う新しい世界。

どちらを選んでも、きっと後悔をする日は来ると思っていた。
だからこそ、自分で考え、この世界に残ることを決めた。

・・・・・自分で決めたことなのだから・・・

そう胸をはって生きていけるように。

最初は全てが楽しかった。幸せだった。
愛する人との、京での生活。
だが、この京に慣れていくたびに、日々強くなっていく元の世界への想い。

本当に些細なことで、京と元の世界を比べてしまう。
便利だったモノ。楽しいモノ。美味しいモノ。
人間は一度でもオイシイ味を覚えたら忘れられないモノ。

この人への愛情がなくなってしまったワケではなかった。
・・ただ、それだけじゃ満たされなくなってしまっただけのコト。

だが、もう元の世界へ帰るすべを、自分は知らない。
そして、この人からの愛撫から、体が離れられない。
抱かれているときにだけ、自分がこの世界にいる意味を感じている。

「ずっと、このままがいい・・・・」

体を激しく揺さぶられながら、あかねは喘ぐ。
この言葉の本当の意味は、決して相手には伝わらない事を解っていながら。

朝まで何度も求め合い、この人がいなくなると、またあかねは夜を待つ。
あの人に抱かれるその時を。

黒い黒い夜の世界。
あかねは、京の夜のような心を持ち続ける。
あの人の愛が月の光のように、さらに自分の心を暗くする事を感じながら。
夜と月