1.リアルな夢
明るい、明るい、光の中に葉月はいた。
(・・・・ここは、夢だ・・・)

自分が夢の中にいる事は解っていた。
だが、今まで見た夢よりも、何もかもがリアルだった。

自分が感じる感覚も。目に見える光も。

本当は、夢なんかじゃなく、現実なんじゃないかと思える程、「リアル」な夢。
だが、葉月にとって、そんな「リアル」な夢は初めての体験ではなかった。
ここ最近、毎日のように「リアル」な夢を見る。
だが、内容は何もない。
ただ、いつも同じ光の中にいるだけ。

しかし、今回だけは違っていた。
「何か・・・聞こえてくるんだけど」
思わず独り言を言う。
自分の声さえも、悲しいくらいにリアルだった。

遠くから、聞こえる「何か」の声。
認めたくはないが、自分を呼んでいるらしい。
(・・・・なんか、ちょっと気味が悪いんだけど)

いくら「リアル」な夢に慣れているとはいえ、さすがに自分が呼ばれる夢は初めてだった・・が、
このままだと目が覚めない事も、薄々感じていた。

「行けばいいんでしょ、行けば!」
大きくため息をつきながら、葉月は前へ歩きだした。

もうここが「夢」だろうが「現実」だろうが関係ない。
何か自分に危害を加えようとするヤツがでてきも、得意の格闘技で叩きのめすだけだ。

葉月は覚悟を決めて、声のする方へ歩いていく。
周りは光に包まれているため、どれくらい歩いたのかすら、解らない。
しかし、確実に「声」がハッキリと聞こえ始めた。

「・・・・・神子・・・・・我が神子・・・・」

(ミコ・・・?? 我がミコ・・・って??)

葉月は他の言葉を聞き取ろうと、立ち止まって必死に耳を声の主に傾ける。

「・・・・・神子・・・・・我が神子・・・・」

だめだ、同じ言葉しか聞こえない。
それに、なんか反響してんのかなんだか知らないが、妙に聞き取りにくい。
それなら・・・・・
葉月は覚悟を決めた。

(喋らないなら、こっちから聞くまでよ!)

「ちょっとアンタ!! 勝手に人の夢に入ってきて何なの?? ここ最近見る夢ってアンタの仕業?? なら、ソッコーで止めてくんない??
こっちは睡眠不足で、ホント大迷惑なんだけど!!!」

少し恐怖も手伝ってか、葉月は一気に大声でまくしたてた。
声の主の反応を息を呑んで待つ。
さらに、すぐに体を動かせるように身構えた。

「我が神子・・・・・・時間がない。 早く我をその体に宿せ・・・・」

葉月の質問には何一つ答えず、声の主は意味不明の言葉を葉月に伝える。

「こっちだって時間がないんだってば!! 明日は朝早いんだから、睡眠とらせてよ!」

葉月の質問には一つも答えはなかったが、一応会話らしき事ができた事で、葉月は少し安心した。

「時間がない・・・・黒・・・・・が召喚され・・・・我をその体に・・・宿し・・・京の・・・・均衡を・・・・って・・・・」

声が遠ざかっていく。
いや、正確には声の主が遠ざかっていく。

それに比例して、葉月は自分が夢から覚める感覚を感じた。
意識が遠のいていく・・・。


(やっぱり最近の夢はこの人の仕業だったんだ・・・)

葉月は、唯一解った事実を考えながら、遠のく意識の中、最後の力で声を出した。

「結局、アンタ・・・・誰・・・なの・・??」

「・・・・・我は・・・・白竜・・・・・」

やっと最後に自分の質問に答えた「ハクリュウ」という人物の声を聞きながら、
葉月は遠のく意識に身を任せた・・・・・。