「わぁ〜〜 すっごい桜! キレ〜!!」
葉月とトールは、電車とバスを乗り継ぎ、目的の寺へと到着した。
「お前来たことあるんだよな?」
大きく高い門の下をとおりながら、トールが尋ねる。
「うん、高校の時にね。あ、トール、私は先によるとこあるから、先行ってて。」
葉月はトールの質問に答えながら、スタスタと前を歩き出した。
「はぁ!? どこいくんだよ?」
「あそこ」

葉月が指指した先には、寺の敷地の横にひっそりとある、小さな扉だった。
「あそこから階段でのぼると、上に小さな社があるの。そこにお参りする。」

「せめて荷物置いてからいけば?」
トールの言葉に、すでに数メートルまで先を歩いてた葉月が振りかえった。
「前来た時にも先にお参りしたの。い〜から先行ってて。」

笑顔で言いきってまたスタスタを歩いていく葉月を見て、トールは肩をすくめて苦笑いをした。
あの顔をした時には、自分の意思を絶対にかえない事をトールはよく理解していからだ。
だが、トールは葉月の後姿から、なかなか目が離せないでいた。
上手く言えない、切ないような苦しいような予感めいたものが、いつまでもいつまでも、
トールの心にひっかかっていたからだった。






「・・197.198.199・・・・200!!」
少し息をきらしながら、葉月は階段をのぼりきった。
「ふぅ・・・」
深呼吸をして周りを見渡す。
上から降ってくる桜の花びら。
地面にうっすらと積もっている桜の花びら。

そして、ただ一人で立ちすくんでいる自分。
幻想的な世界だった。
その桜の木の階段を上りきったところに、小さな社があった。

高校以来だが、全く何もかわっていなかった。
「ただいま・・・」
葉月は懐かしい気持ちになって、ゆっくりと社に近づいた。

──-────その時だった。

シャラン・・・

キレイな鈴の音色が、葉月の耳に届いた。

「えっ・・・??」
葉月は緊張して、意識を自分の耳に集中した。
気のせいじゃない、確かに、確かに鈴の音・・・。

シャラン・・・・・。

また音がした。
「ちょっと・・・何・・・??」

周りに鈴なんて見当たらない。
周りの景色も何もかわってない。

ただ・・・鈴の音が聞こえ続ける。

「あっ!?」
思いついたように葉月はバッグの中をあさった。
(鈴・・・今朝いれたはず!)

バッグから鈴を見つけ、白いヒモを持ち、自分の目の前のぶらさげてみた。
・・・白い淡い光が、鈴を包んでいた・・・。

「鳴らなかったのに・・・・なんで? なんで光ってるの・・・??」
その間も、鈴の音は鳴り続けている。
ただ、その音は自分の頭に直接響いているように感じた。
怖さや、気持ち悪さは感じない。
例えるなら、不思議な気持ち。今までに感じた事のない気持ちが心に広がる。
葉月は、何かに導かれるようにゆっくりと歩きはじめた。

社の後ろに、小さな井戸があった。
頭のシンがぼうっとする。鈴の音がさらに大きくなる。
井戸が、白く輝いていた・・・。

「・・・よんでる・・・?」

自分に言い聞かせるようにつぶやく。

──────私は、いかなければならない─────

確信めいたものを葉月が感じた瞬間、井戸からの白い輝きがひときわ大きくなり、
葉月を包み込んでいった。

──────我が神子─────ここへ──────

白い光と鈴の音が次第に小さくなり、何もなかったかのようにもとの景色に戻った場所には、
葉月の姿はどこにもなかった。

何事もなかったように、淡いピンクの花びらが舞っていた。
4.白い光と桜の花