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眠れない・・・。 こんな状況で寝付けるはずがない。 あの咆哮は、おそらくは彼らの気まぐれによるもの・・・しかし、いざ襲われたときのことを考えると・・・私は、護身用の小剣が枕元にあることを、もう一度だけ確かめた・・・。 ?「素直に身体を休めなさい・・・見張りはついてるから・・・」 ?「・・・ええ」 師に注意され、なるべく意識を沈めようと努力する・・・明日以降、自分が役立たずになるようなことは避けたい・・・かすり傷一つも癒せないようでは、ここに居る意味がないからだ。 ?「・・・気にしすぎよ」 私の心を見透かしたかのように言い放つと、彼女は半身を起こした。 ・・・ ?「初めての戦場、初めての実戦。あなたを追い込む要素は、それこそいくらでもある・・・でも」 数瞬だけ目を落とし、再び私の瞳を見つめ直す・・・風のせいだろうか?虫除け用の網が揺れて、その真摯な表情と、かすかに垂れ下がった耳が淡い月の光に照らされた。 ?「困難は、今、この場所にあるわけではない・・・あれこれと気に病むのは事が起こってからで十分・・・違う?」 ?「・・・」 そう言われても・・・やっぱり長命な種族って、何処か浮世離れしている気がする。 ?「(微笑)・・・何でこんな師匠に?・・・とか思ってるでしょ?」 ?「!・・・おやすみなさい」 ・・・素直に寝たふりをしよう。 ・・・ 私は毛布をたぐり寄せ、彼女に背中を向けた。 ?「(まったく、すぐに人をからかって・・・)」 普段から師は、私を何かと茶化すことが多かった。 師匠と弟子の関係というよりは、姉と弟のそれに近いかもしれない。 実際の年齢差は並の親子以上にある(当然、これは禁句だ)だろうし、子供扱いされることは、私にとって日常茶飯事である。 プライドを傷つけられることもあったが、そういった師の性格もあって、私は、家庭にも似た穏やかな雰囲気の中で毎日を送ることが出来た・・・”試行”の間際までは・・・。 ?「(やめとけばよかったかな・・・)」 ・・・ たとえ、師から『力』を扱う術を学んでいるとはいえ、いわゆる”魔法使い”になる気はない。 当初から私は、あくまでも”とある仕事”に就くための手段として、師を訪ねたのだし、彼女もそれは納得済みのはずだ・・・。 ところが・・・ある日。 ?「ねぇ、フォラン・・・この道を歩んでみるつもりはないの?」 フォラン「・・・どういう意味、ですか?」 ?「正式に『術師』を目指すということ・・・(少し顔を伏せて)・・・私も、次に弟子をとれるのはいつになるかわからないし・・・」 それは、半ば恐れていた発言だったが・・・実際にその頃には、私も師の元を辞する機会を失いかけていたのだ。 ・・・ 結局、なし崩し的に滞在し続けることになってしまった私は、『術師』になるための知識と技を、師から徐々に学び取っていく・・・。 当然、月日を経るごとに師の期待は深まる・・・私もなるべくそれに応えようとしたが、心の中には、常にわだかまりのようなものがあった。 家族との兼ね合い・・・中途半端な自分・・・いたたまれなくなった私は、ある日こう切り出した・・・。 フォラン「師匠・・・勝手な言いぐさだというのはわかっています。でも・・・私はここに長く居すぎました・・・そろそろ潮時だと思うのです・・・」 ?「(不思議そうに)・・・どうしたの?いきなり・・・」 フ「その・・・なんだか、もう引き返せなくなるような気がして・・・」 詰まるところ私は臆病だったのだ。 彼女との時間を共有することは何よりも楽しい。しかし、同時に何か重いものを背負わなくてはならない・・・若き日の私に(今でも疑わしいが)そんな甲斐性はなかった・・・。 ・・・ ?「ここの生活はつまらない・・・?」 フォラン「そんなことは・・・」 ?「・・・」 彼女はひたすらに私を見つめた・・・私は、正面から受け止めようとしたが、どうしても視線を外しがちになる・・・。 ?「・・・気にしなくていいよ。あなたには家族もあるし・・・それに・・・」 私は無意識のうちに、彼女の優美な・・・そのスラリと伸びた耳に視線を合わせていた・・・。 ・・・おそらくは、彼女も同じようなことを考えていたのではないだろうか・・・? ?「・・・でも、あと一つだけ教えておきたいことがあるの・・・付き合ってくれる?」 フ「何ですか?」 ?「(微笑)・・・実戦よ!」 ・・・ フォラン「・・・実戦?誰かと戦うって事ですか?」 ?「そうよ♪」 ・・・本気ですか?師匠? フ「あのぅ・・・」 ?「命のやりとり・・・とまではいかないけど、それに近いものはあるかもねぇ・・・♪」 何でそんなに楽しそうなんですか!?師匠? フ「そんなこと・・・私は、まだ・・・」 ?「もちろん、今のあなたには無理よ。だから・・・経験を積んでもらうの!」 フ「・・・?」 彼女は、思い浮かんだ計画がこれ以上ないぐらいに気に入ったらしい・・・先ほどの憂いをたたえた表情は何処へやら・・・今は、嬉しくて仕方ないといった様子だ。 ?「さてと・・・まずは、旅の支度をしなさい!」 フ「はいっ!?」 ・・・ ?「安心して、旅といっても国内よ」 フ「はぁ・・・」 良かった・・・彼女のことだから「大陸横断」なんてのも言い出しかねない。ツェンバー領内だったら、そんなに激しいことは・・・。 ?「近々、『黒死獣』の掃討戦がある・・・それに参加しましょう」 ・・・前言撤回、これはちょっと危険じゃないですか? ?「上の方で、傭兵を募っているのよ。まとまったお金を得られるいい機会でもあるし、あなたには−例え人間相手ではないにしても−”戦場”を見せておきたい・・・」 フ「でも、師匠・・・!」 私の反論は、すぐさま遮られた。 なぜなら、彼女がゆっくりと人指し指を顔の前に立てて、間をとったからだ。 何か重要な話をする時、彼女は必ずそうする・・・。 ・・・ ?「いい?・・・将来、あなたがいわゆる”職業魔術師”になるとは私も思っていないし、無理に望むつもりもない・・・」 だったら・・・。 ?「でも、あなたは『力』の使い方を知っている・・・兵士や傭兵が剣や斧の扱い方を心得ているのと同じように・・・これは何を意味すると思う?」 フ「・・・」 ?「・・・それだけ、厄介ごとに直面する機会が多いという事よ」 厄介ごと?初歩をかじったに過ぎない私が? ?「いろいろと”素通りできない状況”というのが増えていくの・・・あなたにも段々わかってくる・・・」 フ「・・・?」 この数日後・・・私は、師の言葉の意味を知る・・・。 ・・・ そこは、師の言うとおり”戦場”だった。 本物の戦争ほどではないにしろ、毎日誰かが犠牲になり、その数倍に当たるけが人が担ぎ込まれてくる。 私も師について、擦り傷から骨折に至るまで様々な治療を担当し、「素通りできない」状況というものを肌身に感じた・・・。 ?「”術師”がやるべき事は、治療以外にもたくさんあるよ?・・・”罠”を張ったり、敵地を偵察したり・・・」 仕事に慣れ、ようやく彼女の話を聞く余裕ができたのは、十日以上経った頃だろうか・・・。 ?「もちろん、戦場だけじゃない。『力』を持つ者は、常に何かを背負うことになる・・・世界に対して、無関心ではいられないの・・・わかる?」 ・・・ フォラン「(誰にも見つかりませんように・・・)」 私はテントを抜け出て、野営地を見渡せる小高い丘の上に来ていた。 秋口の涼しげな風と、大地を儚げに照らす月の光・・・ここはお気に入りの場所だ。 フ「(手近な岩に腰掛ける・・・軽くため息)」 ・・・どうも眠れない。 目を閉じると過去のことばかり浮かんでくる・・・師の元に身を寄せてからの出来事が次から次へと・・・。 『世界に対して、無関心ではいられないの・・・わかる?』 彼女が伝えようとしていること・・・私がこれからたどる道・・・。 答えは何処にあるのだろう? ・・・ フォラン「・・・やってみよう」 やはり、考えているばかりでは埒があかない。 この道が自分にとってふさわしいかどうか?・・・私は、”試行”の結果に賭けてみることにした。 フ「・・・(平らな地面を選び、腰を下ろす。周りに人が居ないことを確認)」 ”試行”とは正式な”術師”に至るための課題のことである。 これから挑戦するのは、先日、成功した”形成”に比べると簡単な部類に入る・・・しかし、世間一般の”魔術師”達にとっては、そのステータスにも関わる重要なものだ。 フ「(変なのが来なきゃいいけど・・・)」 そう、本来は思いつきで始めることではなかったのだが・・・。 ・・・ それに、もし目撃者が居たとしたら、私の無防備な有様に絶句したかもしれない。儀式もさることながら、”敵”のど真ん中に自分が居る可能性を、私は考えていなかった。 自分の力をやや過信したのもある。 いざとなれば斜面を駆け下りて、野営地まで逃げ延びればいい・・・そんな思いがあったことは確かだ・・・。 そして・・・。 フォラン「・・・(座り込んだまま瞑想を続けている)」 ガサッ・・・ フ「・・・?」 ・・・獣の類?・・・”儀式”が完成するにはまだ・・・。 ?『・・・ごきげんよう・・・魔術師殿』 ・・・ 『心話』!?・・・そんな真似が出来るものは、呼んで・・・。 ?『そう、俺はお前の求めに応じてここに来たわけではない・・・』 ただならぬ気配・・・私は儀式を中断して背後に目をやった。 そこに佇んでいたのは・・・。 フォラン「・・・”黒死獣”!」 黒死獣・・・不死者の使いにして自らの意志をも持つ異界の化け物。 外見は、黒い霧に覆われた大型の狼といったところだろうか。 このツェンバーでは見かける機会も多く、群をなして人家を襲うこともある・・・我々の討伐の目的も彼らだった。 ?『”力”の存在を感じた・・・魔術師よ、お前達のために我々は迷惑を被っている・・・』 感情を抑えた口振り、そして『心話』・・・彼は、もしかして・・・。 ・・・ ?『すでに群れの半数が失われたか、手負いだ・・・お前だけでは足りないが、償ってもらう・・・』 ・・・そう、数日前に聞いた噂を信じるのならば、彼は我々が討伐しようとしている群れのリーダー・・・『心話』すらも操る手練れの黒死獣ということに・・・。 ?『構えろ、魔術師よ!・・・せめて名誉の死を与えてやろう(微笑)』 ・・・まずい・・・これは本気でまずい。 今の私では、防御壁を創ることさえ困難・・・ましてや、相手に手傷を負わせるなんてほぼ不可能だ。 「(でも・・・やるしかない!)」 相手は徐々に距離を詰めてきている・・・私は、力場を”形成”する事だけに意識を集中しようとした・・・。 ・・・ 初めての実戦、命のやりとり・・・。 例え向こうが私を弄ぶつもりだったとしても、こっちは死ぬ気で行かなければ・・・むしろ、刺し違えるぐらいの勢いで・・・生半可な”術”ではやられるだけだろう。 一考した後、私は術の行使をやめ、小剣を構えた。 ?『・・・フム』 それを見て、彼の目つきが少しだけ険しくなる・・・そして 跳躍・・・(ガシッ!) 正確に喉笛を狙う動き−身体ごとかわしつつ剣の平で相手の横っ面をはたく 両者バランスを崩す−が、敵の方が復帰は早い 不完全な姿勢のまま第二撃を受ける−やむなく地面を転がって回避 立ち上がることもままならぬまま、第三撃−回避は間に合いそうもない・・・ ・・・ 組み敷かれたら終わりだ・・・ 相手は牙をむき出しにして躍りかかってくる−小剣を口中に刺・・・ ガッ!! 右肩に牙が深々と食い込む・・・関節だか骨だかわからないが、何かがきしむ音がする。 痛みは感じない。恐怖も。だが、このままでは・・・。 組み敷かれながらも、まだ自由な左手を相手の耳にあてがう−術を行使・・・『気よ、激しく震えよ』 聴覚を奪うに十分な轟音が辺りに響き渡る−相手は地面の上で悶え、私は右肩の傷が深いことを知る 互いに荒い息を吐きながら、再び中距離で対峙−半身になり、小剣を左手に持ち替える・・・ ・・・ ?『喜べ、魔術師よ・・・俺は決して手を抜いたわけではない。自分の腕・・・いや、その勇気に自信を持つことだ・・・』 ・・・そんなこと言われても・・・今は立っているだけでやっとだというのに。 肩からの出血はすでに地面へと達している・・・。 ?『私は平衡感覚・・・そして、お前は右腕の自由を失った。闘いはますます凄惨になるな・・・(微笑)』 ・・・愉しんでいる?・・・くそっ!! フ「(震える声で)殺すつもりなら本気で来い・・・手負いの獲物を弄ぶのがお前達の誇りだとでも言うのか?」 剣を構えたままなので、傷口を押さえることもできない。 精神の高揚がかろうじて身体を支えてくれている。 ・・・私の科白を聞いて相手の表情が変わった。 そして、第四撃・・・。 ・・・ 私はもう死を覚悟していた。 不思議と意識は鮮明で、相手が驚異的な速さを伴って飛びかかってくるのを、他人事のように見つめていた。 今は、その牙の一本一本までもが確認できる・・・が、身体はピクリともしない・・・左腕がわずかに反応する程度だ。 (せめて、一撃だけでも・・・) ドンッ!・・・ (・・・!?) 小剣が吹き飛び、いよいよ喉元が食い破られようとした直後、私は横から誰かに突き飛ばされた・・・たっぷり十歩分は地面を転がる。 (・・・何だ?) 激しい痛みと困惑の中、私はかろうじて顔を上げた。 ・・・ 黒死獣が・・・二体? ?『同族・・・ではないな?』 ?【・・・】 その風貌、体格、全身から漂う威圧感・・・まるで、鏡像のように二つの影が対峙している。 夢でも見ているのか? ?【夢でも幻でもない。『力』ある者よ・・・】 こいつも『心話』を?・・・そんなことが・・・ ?【”こいつ”は心外だな・・・”わたし”はお前に喚ばれて来たのだぞ?】 ?『・・・何者かは知らないが、そこをどけ!俺の獲物だ』 ?【貪るものよ。悪いが、それはできない。彼にはわたしを喚んだ理由を聞きたいからな・・・】 頭の中はさらに混乱していく・・・そんな私を置いて、二体の対決が始まった。 ・・・ 先に仕掛けたのは、”元から居た方”だった。 ”後から来た方”は、構えることもなく超然としている・・・端から闘う気など無かったのだろうか。 ?『(跳躍するもあらぬ方向に着地)・・・何?』 ?【・・・】 音もなく襲いかかるが、巧みに間合いを外され、身体に触れることすらままならない。 私が体を起こせるようになる頃には、”元”の方の苛立ちが頂点に達していた。 ?『・・・お前は俺に屈辱を与えに来たのか?なぜ構えぬ?』 ?【今ここで殺し合うことは無意味だ・・・貪るものよ。決着は戦場でつければいい・・・】 ・・・沈黙。 互いに無言の圧力が交錯する・・・。 ・・・ ”元の方”はしばらく睨み合った後、茂みの中へと消えた。 ドサッ・・・ 緊張感が解け、全身の力が抜けていく・・・私は無防備な姿勢で地面の上に崩れ落ちた。肩の傷が今頃になって痛み出す。 目の前の新たな黒死獣が敵である可能性もあるが、何故かそういう考えは頭の中から排除されていた。 それに、襲われたところで今の状態では抵抗できるはずもない。 ?【無事か?『力』あるものよ・・・】 ”彼”が私の顔を覗き込む・・・!・・・こいつ、黒死獣じゃない? ?【わたしをあのような者達と一緒にしないでくれ・・・それに”こいつ”ではない】 じゃあ、一体・・・。 ?【わたしは・・・”ワール”】 ・・・
”彼”は確かに『ワール』と名乗った。 自ら名を告げる以上、高度な知性を有し、私をある程度信用していることになる。 フ「私は、フォラン。一応、術師のはしくれだ・・・」 ワ【”一応”・・・それは謙遜か?現にわたしはお前に喚ばれて来たというのに(微笑)】 フ「もしそうなら、帰った方がいい。君のような気高い者を、私の都合で連れ回すわけには・・・」 ワ【案ずることはない。お前がわたしを必要としているように、わたしにもお前が必要なのだ】 フ「!?・・・(半身を起こし、ワールを見つめる)」 ワ【ここはわたしが不慣れな世界だ。道案内がいる・・・それに、背中を守る相棒も・・・】 ・・・ 道案内?背中を守る相棒?それなら・・・ フ「なおさら・・・」 ワ【なおさら、私には似つかわしくない・・・か?(微笑)】 フ「・・・」 ・・・こいつ。 ワ【いちいち理屈を並べ立てるのが、お前達の悪い癖だ・・・お前とわたしがここで出会った・・・それ以外に何が必要なのだ?】 野生の動物と同じく、一瞬たりとも私から視線を外そうとしない・・・”彼”の金色の双眸が月明かりを受けて、鈍い輝きを放つ。 その瞳から邪気は感じられなかった・・・私は賭けてみてもいいのだろうか? フ「・・・いらないよ、何も・・・(微笑)」 ・・・ ?「・・・で、連れてきたの?」 フ「ええ、まあ・・・」 ワ【お前達の事情は大体聞いている・・・よろしく頼む】 ?「う〜ん・・・(悩)」 野営地に帰ってきた私は、見張りを避けて真っ先に自分の天幕を目指した。 まずは、師に意見を伺った方が良いと判断したからだが・・・まさか彼女も、私が本当に”使い魔”を喚べるとは思っていなかっただろう。 ?「・・・あなた達が互いに認め合ったのなら、私が口を挟むべきではないわ・・・大丈夫よ、自分を信じなさい」 フ「・・・はい」 ?「(目線を合わせて頭を撫でる)よろしく、ワール君♪」 ワ【・・・♪(気持ちよさそうに眼を閉じる)】 師もワールも互いにまるで屈託がない・・・私は、なんだかうまくやっていけそうな気がした・・・。 ・・・ ワールが仲間に加わって数日後、討伐戦はあっけなく終わった。 おそらくはワールが関わっているのだろう・・・”あの”リーダーが突如姿をくらましたのだ。 黒死獣は群れで行動する生き物であり、そこが脅威でもある。 頭を失い、四散した彼らをこれ以上追い詰める必要はない。 師と共に帰る道すがら、彼はこう語った・・・。 ワ【奴らも自分たちの領域が侵されるを恐れただけなのだろう・・・人間と同じように】 フ「でも、彼らは人を襲った。そうなると、我々は身を守るために・・・」 ワ【わかっている(微笑)・・・どちらも正しい。だからこそ、戦いは起こるのだ・・・】 ・・・ 私とワールが師の元を辞したのは、討伐から帰って一週間後のこと。 実戦の経験は、私にかすかな自信とさらなる世界への探求心をもたらした・・・もちろん、ワールを友として得たことも大きい。 それに、ここで前に踏み出さなければ、一生後悔するだろうという想いがあったことも確かだ・・・。 ?「・・・これからどうするの?」 フ「とりあえず、ブラブラとあちこちをまわってみます。今は、そうしたい気分なので・・・」 ?「家のことは?」 フ「もちろん、それもあります。まずは、そっちの決着をつけに行くつもりです」 両親はさぞかし驚くことだろう・・・半ば発作的に家を飛び出した息子がやっと帰ってきたと思ったら、今度は旅に出ると言い出すのだから。 ?「一つだけ、約束して欲しいことがあるんだけど・・・」 ・・・ フ「約束、ですか?」 ?「(軽く頷く)これを、あなたに預けましょう・・・」 そう言うと、師は私に一冊の古びた書物を手渡した。 表紙には何も記されていない・・・。 フ「!・・・これは?」 ?「私が教えきれなかったこと、そして、次の段階で学ぶべき事がそこには記されている・・・選ぶのはあなた自身よ」 フ「師匠・・・」 ?「(手で制して)・・・進むべき道がどこに通じていようとも、ここには一度帰ってきなさい。その時に返してもらうから・・・ね?(微笑)」 ・・・私は、その笑顔を直視する事が出来なかった。 彼女の気遣いが痛いほどわかったからだ。 フ「(小考の後、顔を上げて)はい!」 ?「よろしい♪」 ・・・ その後、私は故郷を離れた。 特に目的も無い、世間一般から見れば不毛な旅。 日々の糧を求めつつ、余暇が出来たら移動する毎日・・・。 しかし、ワールは何も気にしていないようだった。これが当たり前だと言わんばかりだ。 ワ「”目的”などつくるから思い悩むのだ・・・」 達観しているいうか、超然というか・・・。 ”彼”の年齢を聞くのも恐かったが、私は本当に”彼”であるかも気になっていたりする・・・。 ま、時間はたっぷりあるのだ。追々わかってくるだろう。 フ「それで・・・いつまで私と行動を共にしてくれるのかな?」 ワ「(鼻を鳴らして)・・・お互いに気の済むまでだ、友よ(微笑)」 ・・・その気配が訪れる様子は、まだまだ無い。 |
プロフで連載していた、ワールと私の出会いを描いたSSです。 こうやって切れ切れのストーリーをまとめてみると、話と話の間に自分が何を考えていたのか・・・良くわかりますね・・・。 師匠の名前については考えていなかったわけでなく、単に作中に出てこなかったため、最後まで『?』になりました。 特に出す必要もなかったですし、この方がややミステリアスに感じられるかなぁ?と(笑)・・・他には、固有名詞の使用を極力避けたいというのがあります。 その方がややこしくないし、ストーリーの流れに集中できる・・・と考えているからです。 彼女のことやフォランの使っている魔術の体型についても、他で、もう少しつっこんで書いてみたいですね・・・。 んでは、次のSSをお楽しみに! |