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いまやわれわれはだれなのか? 民族の問題はアイデンティティの問題である 集団の一部であるという「カテゴリーとしてのアイデンティティ」に頼らずには 僕達は自己を定義できないのだろうか。集団に含まれているという感覚では無く、 集団から離れ、自分を集団とは対等の関係として意識する、 そうした相対化の中で「関連性としてのアイデンティティ」を構築することは できないのだろうか。 おそらく、同質性ではなく差異を意識することから、 共存の可能性は生まれると感じるのだが。 ヴァミク・バルカン 概略 トワイライト・ガン・スモークの舞台となるのは、東中欧・バルカン半島的な文化を持つある半島ボーム。ボームは東方大陸とわずかな陸地で繋がった、亜大陸とも言うべき広さを持つ地域です。 東はもうもうたる蒸気を上げて沸騰する、高熱の温水の海−−沸騰海。西方と北方を荒々しい波頭から凶馬海と呼ばれる荒海によって閉ざされ、残る大陸との接合地にさえ絶望壁という高さ3000メートル級の山脈によって遮られるボームは、あまりにも外部と隔絶した大地でした。 その閉鎖環境に変化が生じたのは、実に46年前のこと−−「大襲来」によってです。 西方旧大陸の大国、ゲランシュタインは実に数万の征東軍を派遣。その高度な技術力によって、瞬く間にボームを制圧したのです。国家として未熟に過ぎ、封建制さえも充分に機能しているとは言えない状況にあったボームは、この帝国の侵攻になす術もなく、その支配を受け入れざるを得ませんでした。 それまでは複数の民族、複数の豪族によって構成されていたボームは、植民地として「ボーム」と言う一個の単位に押し込められ、帝国の文化、帝国の法、帝国の宗教によって統治されることになったのです。 ですが、たったの46年という歳月でそれまでの何千年の歴史を覆すことは出来ません。反抗の火の手は次々と上がり−−そして次々と揉み潰され−−、人々は内に抵抗の志を秘めています。 しかし一方で、ボームに固有の文化という物は、その大半が再生不可能なまでに破壊されてしまいました。多くの者は帝国の文化に毒され、帝国の技術によって造られた家に住み、帝国の様式になる服で生活しています。すでに帝国語しかはなせない子供たちがほとんどで、ボームの諸民族の言葉は方言としての体しかなしていません。 それぞれの民族も帝国の行政区分によって居住地を規定されてしまったため、中にはそのルーツさえ不明となってしまった者達も居ます。そうでなくても、ほとんどの民は何らかの理由でその故郷の土地に住めなくなっているのです。 長年、崇拝され続けてきた信仰もあるいは禁止され、あるいはその形態を変えて帝国のそれと習合させられました。元々、帝国のそれもボームのそれも起源は同じ東方大陸北方のそれであったようなのですが、長く隔絶された歴史は両者を似ても似つかない代物へと変えていたのです。 帝国の人間達は悪魔だ、と。 その噂を聞いたボームの人々は、せせら笑うように囁き合いました。 「連中は悪魔に決まってるだろうが。何をバカなことを言ってやがる」 同じく、帝国の駐留兵はこう言ったのです。 「警備を強化する必要があるよなぁ。……また連中、反抗集会とやるのかな。蜂起とかは勘弁だぜ。俺、任期があと2ヶ月で終わりなんだよ」 そして、総督府に集う弁務官はこう呟きました。……ぞろりと並ぶ牙を見せて。 「……秘密を知った者は、我々のディナーに供さんとな」 噂は真実だったのです。 少なくとも、帝国の中でも一握りの支配層に限って言えば。 貴族、高等官僚、上級騎士、将軍……。 それらが人ではないなど、誰が信じるでしょうか? しかし、彼らは人ではありません。 ボームの伝説にも語られる、新月の民、満月の民と言う魔物達。 野の獣を支配し、易々と人の身体を引き裂き、夜闇に咆吼する化け物達。 そしてPCこそ、その真実を知る者達なのです。 「あいつらは人間の皮を被ってるが、本当にバケモノなんだ!! 信じてくれ!」 と叫ぶ反政府運動家が路上で処刑される光景。 それを横目に「そんな事、誰も信じはしない。バカなヤツだ」とうそぶき、自らは密かに化け物達を倒すために夜と昼の狭間に潜んで戦い続けるヒーロー。 そんな黄昏の戦士達こそが、PCの置かれた立場なのです。 |