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「クリスマスプレゼントは何が欲しい?」
と聞かれて、私は「あの空に浮かんでいる星が欲しい。」と答えた。
ごめんね。叶わないのはわかっているんだけど・・・。
雪がちらちらと降り始めてもう一週間になるだろうか。
地面はすっかり真っ白になった。
今日は久しぶりに晴れた日だった。
外ではもう薄暗いのにも関わらず子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
「もう冬かあ。」
月日が経つのは本当に早いなあと言いかけて、反射的に言葉が止まった。
日頃自分で考えないようにしていた事実を、口に出してしまいそうになった。
言わなくて良かったと、少しほっとした。
言葉に出してしまえばもっとつらくなるとわかっているから。
まあ口に出さなくとも、一度思い出してしまえばその不安はなかなか頭から離れないのだが。
いっそのこと時間がこのまま止まってしまえば良いのに。
出来るわけがないけど。
「久しぶりだね、メグ。」
一瞬、幻聴かと思った。
でも声の先を見ると本人がいた。
「あれ?ユエさん?何でここに?」
「遊びに来たんだよ。」
「暇なの?」
「うん。暇。」
彼のそんな言い方が少し子供っぽくて、思わず頬が緩んだ。
さっきまで彼のことを考えて落ち込んでいたはずなのに、彼と少し話しただけでもう気持ちは嬉しい。
「メグは何をしていたの?」
「私?私はー、考え事、かな。」
彼はめずらしいね、と言って少し微笑んだ。
「あれ、あ。雪だ。」
彼が窓の向こう側の外を見て、呟いた。
私もつられて見てみる。
もうそとは暗くて、それぞれの窓からは灯りが漏れていた。
「本当だぁ!そういえばもうクリスマスだっけ。」
「もうそんな時期か。」
少し会話をしながらしばらく外の雪を見ていた。
幸せだった。
時間が止まるのなら、今止まってほしい。
そんなことを少し考えた。
「あ、そうだ。」
彼が思いついた様に言った。
「クリスマスプレゼントは何が欲しい?」
「えっ!く、くれるのっ!?」
予想外の言葉に動揺。
「うん。」
彼は可笑しそうにクスクス笑ってる。
「じゃ、じゃあ、こう・・・じゃない!えーっと!!」
危なかった。もう少しで「工具」と言うところだった。
そんなんじゃなくてもっと、女の子らしい物を言わなくちゃ!!
彼から貰いたい物、貰いたい物、と頭の中がぐるぐる回っている。
『いっそのこと時間がこのまま止まってしまえば良いのに。』
自分が思った言葉がまた頭の中で反芻された。
それは、絶対に出来ないこと。
なら、せめて、このわがままは聞いてくれるかな。
「じゃあ、あの空に浮かんでいる星が欲しいな。」
彼は少し驚いた顔をした。
「・・・、何年、かかっても良いの。いつか、ちょうだい?」
気づいて、この言葉の意味を。
彼は私の顔を少し見て、「うん。」と言った。
悲しそうな顔だった。
嬉しくて悲しくてどうしようもなくて。
私は彼に抱きついた。
ごめんね。叶わないのはわかっているんだけど。
こうして果たせない約束を交わしておけば、この約束は消えることはないでしょう?
毎年、クリスマスになれば一瞬でも私のことを思い出してくれるでしょう?
たとえ二人が別々の道を歩いても、きっと。
ごめんね。叶わないのはわかっているんだけど。
でもだからこそ繋ぎ止めておきたかったの。
この想いは決して言えない。
ごめんね。叶わないのはわかっているんだけど・・・。
この約束も、この恋も。
叶わないって、もうずっと前からわかってはいるんだけど・・・。
Fin.
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