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ボンッ!
手に持っていたからくりが小さな爆発音と共に砕け散った。
「きゃっ!・・・、あ〜あ、また失敗。」
メグは小さく溜め息混じりに言うと、砕け散った部品や破片を拾い始めた。
「何で失敗しちゃうんだろ?・・・うーん、わかんないなぁ。」
破片で手を切らないように気を付けながら一つ一つ拾っていく。
「まっ、いっか。次は成功するよね。」
全ての破片を拾い集めるとメグは立ち上がり時計を見た。
時計の針は3時を指そうとしている。
「今日は居るかな?」
メグは知っている。
彼が予定が何も無い日の昼下がり、必ず決まって屋上に居る事を。
この時間帯、屋上には誰も居ない。
二人きりになれるのだ。
メグだって年頃の女の子。
好きな人と二人きりになれる唯一の時間。
嬉しくない筈が無い。
初め、彼が屋上に来る時間帯はまちまちだった。
一時だったり、二時だったり、三時だったり。
でもある日彼は行った。
「メグもよくこの時間に来るね。・・・、そうだ待ち合わせしようか?」
「え?」
「メグとまた話の続きがしたいからね。」
きっとそれは彼にとっては他愛もない一言。
でも嬉しかった。
「三時。三時に来るよ。あ、会議とかがあったら来れないかもしれないけど。」
凄く嬉しかった。
それからだ。
彼が居る時も、居ない時もメグが決まって三時に屋上に行くようになったのは。
階段を上って屋上に出ると心地良い風がメグの頬に当たった。
「んー!良い天気ー!!」
大きく伸びをすると体の力がスッと抜けて眠気が押し寄せてきた。
でも眠るわけにはいかない。
もう少ししたら彼が来るかもしれないのだから。
「早く来ないかなー。」
空は快晴。暖かい日だった。
それから1時間後。
彼は来なかった。
空は夕焼け色に染まっていた。
「つまんないの。」
そう呟くと、心なしか夕焼け色の空の端にある闇が、少しだけ広がった様な気がした。
でも明日は会えるかも。
自分の部屋に戻る途中、メグはそう思った。
彼を待っている間はわくわくして落ち着かない。
彼と話してる間は嬉しいし楽しい。
彼が来れなかった日も、残念には思うけれど『明日は会えるかな?』と考えると、またわくわくする。
それが嬉しい。
彼に会った時の『嬉しさ』は明日までとっておこう、と思える。
「メグ?」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこには彼がいた。
「ユエさん!」
驚きと嬉しさのせいで思わず声が上擦った。
「今日はごめん。待ってた?」
「あ、ううん。へーき!へーき!」
メグはこれでもかというぐらい大きく手を横に振った。
手首が少し痛んだが、そんなことはもう気にならなかった。
「坊ちゃーん!」
遠くでユエを呼ぶ声がした。
「あ、ごめん!行かないと。」
「うん。」
「あ、そうだ。明日は行けると思うから。」
胸がドクンッ、と高鳴った。
それは喜びの合図。
「うん、じゃあまた明日、三時にね。」
溢れんばかりのその感情を隠せるはずも無く、メグは大きな声で返した。
また明日。三時に、あの場所で。
END.
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