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金髪の小柄な少年に、長い黒髪の少女が話しかけていた。
「ねーねー、コーネルくんって心の音が聞こえるんでしょ?」
コーネルと呼ばれた金髪の少年はにっこり笑って答えた。
「ええ。」
コーネルの言葉を聞くなり、少女はぱっと顔を輝かせて言った。
「わっ!すごい!本当だったんだ〜!ね、じゃあさ、私の心の音ってどんな音?」
「え・・・?ビッキーさんの・・・?」
「そう。」
ビッキーと呼ばれた少女はにこにこと笑っている。
「えーっと、ビッキーさんの心の音は、なんていうか、音程が少し変わっているような・・・。」
コーネルはしどろもどろになって答える。
「音程が変わってる・・・?どんな音?」
きょとんとしたビッキーが聞くと、コーネルは困ってますますしどろもどろになった。
「変わってる、というより、す、少しずれている・・・、ような・・・。」
「???楽器に例えると何?」
そのビッキーの問いにコーネルが答える前に後ろの方から答えが返ってきた。
「壊れた楽器。」
「え?あれ?あれ?ルックさんだ!」
ビッキーが振り返るとそこに一人の少年が立っていた。
ルックと呼ばれた少年は面倒そうに溜息を吐いた。
「くだらないこと言ってる暇があったら少しは魔法の練習をした方が良いんじゃない?」
そう言うとルックはそのまま何処かへ行ってしまった。
残ったコーネルとビッキー。
コーネルはフォローを言うにも言えず。
ビッキーはいつもと変わらないポケーっとした表情のまま、さっきのルックの言葉を頭の中で反芻していた。
そしてぽつりと呟く。
「壊れた楽器?・・・うーん、わかんない。」
ビッキーは今日もいつもの所で立っていた。
今日はリーダーの少年が城を留守にしているのでビッキーも暇だった。
ちらっと右を見るとルックもまた、いつもと同じように石版の前に立っていた。
のどかな昼下がり。
そこはビッキーとルックの他に誰もいなく、静かだった。
「暇だねー・・・。」
立っている位置を変えずに話しかけると、ルックも特に視線を変えないまま、
「そう・・・。」
と答えた。
ビッキーはこんな風によくルックに話しかけていた。
たわいもない話がほとんどだし、ルックはあまり気持ちの良い返事は返してくれないのだが、ビッキーはルックの話している時間が好きだった。
「今日は暖かいねー。」
「そう・・・。」
「眠くなるよねー。」
「そう・・・。」
「今日の晩御飯は何かなー?」
「さあ・・・。」
「あ!そうだ!」
そんな会話が何回か繰り返された後にビッキーは何かを思い出して声を上げた。
そしてルックの方を向いた。
「ねえねえ、さっきルックさん、私の心の音は壊れた楽器って言ったよね?ルックさんも心の音がわかるの?」
ビッキーがルックに聞くと、ルックは、
「別に。ただ、コーネルが言いにくそうにしてたから僕が答えてあげたんだよ。」
と言った。
「なーんだ。そうなの。」
「気になってたんだ。」とビッキーは小さく笑う。
「あ、もぅ一つ質問したいの。」
ビッキーが言うとルックは面倒そうに「何?早く言ってよ。」と言った。
「あのねー。壊れた楽器ってどんな音がするの?」
ルックはビッキーの間の抜けた問いに呆れた。
「・・・君って本当に暇だよね。もっと他に考えることはないわけ?」
ビッキーは少し首を傾げて、「今のところは特にないよ?」と言った。
それを聞いてルックはやれやれと溜息を吐く。
「変な音。」
「え?」
ぶっきらぼうに言うルック。
きょとんとするビッキー。
「だから音だよ。壊れてるんだから変な音なのは当たり前だろう。」
「壊れてても良い音がする楽器はないの???」
「・・・、多分ね。あるわけないよ。」
「ふうん。」
少し何かを考えるようにビッキーは自分の足元を見た。
「うん、でも変な音でも好きな人はいるかもしれないし、いいや。」
「・・・本当、楽観的だね。」
「うん、えへへ。」
ビッキーは笑った。
それから数分もしないうちにビッキーは立ったまま寝息をたてた。
ルックはいつもその寝方を見るたびに、ある意味器用だな、と思う。
また溜息を吐く。
そして。
ビッキーの寝顔を少し見て、ルックは誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
「まあ、僕は嫌いじゃないけど。」
END.
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