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あの頃は、完全な『何か』を求めていたわけじゃないけれど。
いつも『何か』を探していたような気がする。
あの時、頬を撫でた風も。
あの時、感じた胸の痛みも。
あの時、出会った一人の少女も。
ああ、今は全てが懐かしい・・・。
もしこれが泡沫の夢だったなら・・・。
世界が薄暗い。
もうすぐ時が終わるのがわかる。
この重苦しい宿命からもようやく解放される。
目を開くと、一人の少女が僕を見つめている。
彼女の瞳に映っている僕は一体どんな表情をしているのだろう。
今、死がすぐそこまで迫っているというのに呑気なものだ。
思わず笑みがこぼれる。
それを見て、目の前の少女が不思議そうに少し首を傾げる。
今日は良い日だった。
久しぶりに『彼女』に会えた。
最後に会ってからもう15年くらい経つのか。
いつもいつも別れの言葉を言う前に何処かへ飛んで行っていた。
いつも間の抜けたことしか言わない『彼女』。
よく立ったまま寝ていた『彼女』。
飽きもせずによく僕に話し掛けていた『彼女』。
まさか、また会えるとは思ってもみなかった。
『彼女』を見た時、懐かしさと共にあの頃の僕の気持ちが胸に溢れた。
今日僕は死を迎えるけれど、それでも今日は良い日だ。
最後に『彼女に』会えたから。
最後の時、思い出したのは『彼女』の笑顔と音程のはずれた音。
懐かしい思い出。
切ない想い出。
「ありがとう。セラ。」
今、自分の一番近くにいる少女に心の底から感謝を言う。
ありがとう。最後の最後まで僕の傍に居ることを望んでくれた少女。
もうこれ以上何も望むことはないから。
そして・・・。
「さようなら・・・・・・・。」
あの時、頬を撫でた風も。
あの時、感じた胸の痛みも。
あの時、出会った一人の少女も。
ああ、今は全てが懐かしい・・・。
もしそれが泡沫の夢だったなら・・・。
今はただ『彼女』の全てが懐かしく、愛しい・・・・・・。
Fin.
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