The song of the small love



カタカタカタ・・・ッ。
キーボードを叩く音が暗い整備員詰め所に響いている。
疲れてきたので手を止め、ふと時計を見ると時刻は午前一時。
辺りは静まり返っていた。
いつもだったら整備士が明け方頃まで残って整備をしているのだが、最近は違う。
人類は優勢を保っていた。整備士にも僅かながら休む時間が与えられたのだ。
人類が優勢を保っているのは我が小隊の三番機パイロットの働きによるものだと言っても過言ではない。僅か二週間で戦況を人類側優勢に傾かせたのだ。
二週間前、部署のシフトが行われた。
オペレーターの瀬戸口が三番機パイロットに移動したのだ。部署をシフトした理由を聞いたら、「恋人と日夜一緒にいたいから。」と言っていた。
あの時の青ざめた芝村の顔を思い出すと、思わず芝村に同情してしまう。
残った速水は誘導技能を持っていたのでオペレーターに移動すると思っていたのだが、何故か二番機整備士に移動した。理由を聞いたら「好きな人と同じ部署になりたかったから。」と言っていた。
まったく、うちの連中は何を考えているんだか。呆れ過ぎて言葉も出ない。
大体、そんな私情を仕事に持ち込むこと自体間違っている。
残ったオペレーターの部署。まさかあんな小さな東原ののみ一人に仕事をさせるわけにもいかず、ちょうど無職だった僕やることになった。天才技能様々と言ったところか。
 「もう、一時か・・・。」
無意識に溜息混じりに呟いた。プログラム作りに熱中していて時間を忘れていた。
最近忙しい日が続く。
オペレーターになったのは良いが仕事が溜まっていたのだ。
僕がオペレーターになったのはつい一週間前。
そう、瀬戸口が三番機パイロットになってから一週間くらい、オペレーターの部署が一つ空いていたのだ。もちろん東原も頑張って仕事をしていたのだが、一人では間に合う筈もなく、仕事が溜まってしまった。
 「帰るか。」
誰ともなしにそう呟いて、僕は立ち上がり詰め所を出た。
冷たい風が目に凍みて、疲れた目が少し潤んだ。
ふうっ、と溜め息を一つ吐き鞄を取りに教室に向かった。
夜の教室は不気味なほどひんやりとした空気に包まれていて、ぞくっとした感覚が背中を通り抜けた。
そんな自分を心の中で自嘲し、自分の机に行ってそこにある筈の鞄に手を伸ばした。
が、無い。鞄が無い。
確かここに置いておいた筈なのに。
一体、どこにあるんだ?
まったく見当がつかなかったので、仕方なく裏庭へと向かった。
もしかしたら仕事が終わった後に置いてきてしまったかもしれない。
裏庭に向かい、仕事場に目をやった。
その時、僕の視界に入ったものは、僕の鞄と・・・。
僕の鞄を持ったまま、すやすやと寝息を立てている東原ののみだった。
何でこいつがここにいるんだ?と言うか、何で僕の鞄を持っているんだ?
こんな夜の、しかも外であどけない顔で寝ている東原を見る。
どうしたら良いのか分からず、とりあえず彼女から鞄を取ろうとそっと近づいた。
そして鞄に手を触れたその瞬間。
 「ふぇ・・・。ふぁ、あれぇ、だいちゃん。もうお仕事終わったの?」
いきなり東原が声を上げた。
思わず、ビクついた。
 「な、なんだよ。起きたのか。」
慌てて鞄から手を引っ込める。
 「うん。ののみ、だいちゃんのこと待ってたのよ。はい、だいちゃんのかばん。いっしょにかえろー。」
そう言って東原は鞄を差し出した。
何だ。僕を待ってたのか。
 「だったらこんな所で寝てんなよ。風邪ひくぞ。」
東原は嬉しそうに笑うと僕の後をとことこついて来た。
 「ねえねえ、だいちゃん。」
後ろから東原が声をかけてきた。
僕が振り向くと、東原は満天の笑顔で言った。
 「明日も一緒にお仕事がんばろーね!」
胸が高鳴った。
しまった。僕もあの二人の事を言えないじゃないか。
オペレーターになった時、内心すごく嬉しかった。
そうだ。自分も私情を仕事に持ち込んだ一人だ。
悔しいが認めざるを得ない。
高鳴る鼓動を感じながら僕は答えた。
 「ああ、また明日な。」



END.
これ、かなり前に授業中に書きました。
茜は森でもいいんだけど、やっぱりののみの方が好き♪だって可愛いんだもん〜!!
ほのぼのお子様カップル大好きさっ!
これを書いた時はGPMにすっごいはまってたんだよなー。
ああ、懐かしい。