「ごらんの有様だよ」
2008年も終わりに近づいた12月19日、そんな台詞とともに、恐るべきエロゲーが現れた。それが、この『魔法少女アイ参』である。
参ということで分かると思うが、これは3作目で、魔法少女が触手とかにやられちゃうというシチュエーションに人気があってシリーズ化していた。ただ、色々あって1・2作目の発売元である「colors」は解散してしまった。魔法少女アイの版権自体は、エロアニメで有名なミルキーピクチャーズが購入していたらしい。この魔法少女アイシリーズは、ミルキーピクチャーがOVA化していたのだが、色々な作品の中でも人気があったようなので、旨味があると思ったのだろう。
そんなこんなでお蔵入りかと思ったシリーズに、ミルキーピクチャーより再開の知らせが入る。まあ、得てしてこの手のシリーズ再開は結果的には悪いことになるものだ。ただ、原画、脚本共に前作と同じ。また発売元のミルキーピクチャーも、12月19日にゲームを発売した後、OVAでもシリーズを再開すると発表していたので、そんな酷い物が出てこないだろうと楽観視するファンもいたようだった。
ただ、主役級のアイの中の人の交代に不満を持つ者はいた(前作の声優さんは引退してしまったらしい)。ただそれよりも、全然更新されないホームページ、まったくおこなわれない宣伝に、おかしいという考えはあった。実は、これはちょっと不味いのではないか、そんな予想もあった。
しかし、現物は、そんな最悪のケースの想定すら、楽観的過ぎる所に存在していた。それは想定外の怪物だったのだ。
なにせ、パッケの製品仕様の空き容量1.5Gの発表に比べて、実際の中身は0.5G。これなら別にDVDにする必要はない。さらに、ゲームの中身を展開してみた情報によると、イベントCGがたったの14枚、しかもこれが差分含めての枚数なのだ。おかげで、エロシーンが真っ暗、さらにパッケージ裏のCGにすら前作のCGが流用されている始末。
当初、フライング情報がネット上にあがった時は、単なる偽情報と受けとめられたのも無理はない。今時、CG14枚なんて2000円の低価格シリーズにすら劣る。発売延期が即会社解散になるような弱小メーカーが背に腹は代えられず発売したのなら兎も角、この業界では大手のミルキーピクチャーが、そんな未完成品を売り出すなんて、誰が予想できたであろう。
そこそこ人気のあるシリーズのあまりのできに、多くの被害者が現れた。また、パッケージに書かれた「ごらんの有様だよ」が、このゲームを的確に表していることと、その語呂の良さから、ちょっとエロゲーファンの流行にもなった。折しも、今年のベストゲームやらワーストゲームをわいわい話し合っている所だったのも、話題を大きくした。仕舞いには、オタ系ネットニュースにも地雷を超えたブラックホール爆弾とか取り上げられる始末。
おかげで、ショップのPOPにすら「魔法少女アイ参はビジュアルノベルです」とか「劇薬」とか書かれるありさま。返品騒動にも発展し、メーカーも多くの足りない点があったことを認め、アペンドディスクを2009年2月28日に発送することになった。
実際に不幸に見舞われた人には申し訳ないが、あえて「ごらんの有様だよ」を味わいたくなって中古で購入してみた。因みに、シリーズについては名前を知っているぐらいでしかない。中立的眼で見ることができると言えば聞こえはいいが、単なる野次馬だ。
実際にゲームを開始してみると思ったほど悪くない。他の数多の地雷と違って、このゲームの場合はシステムがまともなのだ。未読・既読別のスキップは可能だし、一度選んだ選択肢は色が違って表示されるし、バックログも当然完備しており、そこで音声を聞きなおすことだってできる。ゲームをやるのに十分な性能を満たしている。
まあ、多少はバグがあるのは事実だが、別にたいしたことはない。「立ちキャラ表示アイ戦闘怒り」とかスクリプトの説明文が誤ってテキストに表示される所があったりするだけだ。しかし、これぐらいの訂正は年内にパッチを出してもらいたかった。
話を戻すとシステム以外に、背景が美しい。きっといい所に外注を出したのだろう。音楽だって悪くなく、場面毎の雰囲気が出ていと思う。立ち絵も十分に用意されている。最初に前作をプレイしてない人に向けての説明が全然ないのは勘弁して欲しいが、それ以外は順調な滑り出しだ。自分が好きな怪談というか都市伝説風の話で始まるのもいい。
最初の"ゆらぎ"(この世界の敵、化け物)の闘いまでは普通にCGの枚数がある。選択肢のミスによるHシーンも普通にCG付きだ(差分もあり)。だから、噂と違って、このゲームの全てのHシーンが暗転ではないことをお知らせしておく。ただ、CGがあるHシーンは、これひとつだけで、そのCGにも乳首もモザイクもないは事実だが。
しかし、最初の"ゆらぎ"を倒すまでに、イベントCG枚数を7〜8枚(差分付きで10〜11枚)も使用してしまっている。早くも最初の敵の来襲で、このゲームは、破断面に達してしまっているのだ。
後は落ちるだけで、それからは、本当にCGがない。Hシーンになると暗転、"ゆらぎ"が出現しても暗転、もしくは怪物をフレームに入れずに戦闘シーンが進んでいく始末。多くの人間には、音声だけで進むHシーンに不満を覚えただろうが、自分的には人間から変化した"ゆらぎ"にCGがない方が不満だった。
兎も角、こんなCGなし状態でゲームが続けられる訳もなく、『魔法少女アイ参』は大元のボスを倒せずに、ちょっとした事件を解決して終わってしまう。スクリプト解析した人の話によると、このエンディングの部分で前半終了と書かれていたそうだ。ゲーム中でも、作品の2/3を過ぎて能力者3人が集合するシーンの章の名前が「プロローグ」であることから、思いっきり途中で終わっている。
ただ、このゲーム、自分にとっては正直言って、噂ほどの地雷ではなかった。多分、普通の人間とは下のレベルのゲームに対するプレイ経験が違うのだろう。普通の人間は以下のようなゲームはプレイしたことはないと思う。
まさに真の異次元が見えるハイパースペースのゲーム群
空前絶後、麻雀できない麻雀ゲーム『おまたせ!雀バラや♪』
選択肢ミスは即強制終了、黒ヒゲ危機一髪な『よりしろ』
これぞ修羅場、一番面白いのはCD内に隠されたテキスト中の怒りの言葉にある『夏色ディスティニー』
そんな(悪い方に)一騎当千なゲームに比べると、このゲームはかなり大人しい。CGを足してエロシーンを暗転しないようにすれば、ファンには期待外れだが、つまらないゲームの前編にはなっただろう。ただ、そんな泡沫メーカーとは違って、このゲームには多くのファンがいた。確かに破壊力は小さいかもしれないが、広範囲にバラまかれて、結果としては大きな被害となったところだろう。
ただ、そんなアレなゲームに耐性がある自分でも、このゲームには違う面からやられた。それは、主人公達の行動である。
この参は、前作のダークエンドから1年後がゲームの舞台らしいのだが、そこで主人公は自分のこれからの指針について最初に説明してくれる。それによると、「頭も悪い、行動力もいまいち空回っている。それでも、そんなオレだって、何かできるんじゃないかって、そう思って、動いている」ってことらしい。もしかして、こいつは無能な働き者ではないかと悪い予感がしていたのだが、それが的中してしまう。
それどころか、このゲームの登場人物は、全員、行動がダメ。まるで、ミッションに失敗したテーブルトークRPGのリプレイを読んでいるみたいだった。兎も角、単独行動が多く、それなのにコンビが定期連絡をする知恵もなく、挙句に携帯の電池が切れた、バイトがある、話があったけど眠いから寝たと言い出すありさま。
この世界の魔法少女は、その名前と違って、愛とか正義とかで行動するものではなく、もっと殺伐とした殺るか殺られるかの魔法戦士なのである。しかし、ヒロインのアイは非情にゆらぎを倒すと書かれているのだが、実際は超感情的に、主人公に女が近づくのが嫌だと言わんばかりに、協力を拒否して単独行動。実際に能力者が3人集まって3本の矢どころか、1×3以下の性能しか出せないありさま。
これは製作側の、演出ではあると思う。ただ、これを2〜3時間も読ませられたのは苦痛だった。しかも、最終的には敵に逃げられ、仲間は一人死亡という散々な結果の所でゲーム自体は終わってしまう。確かに、このゴーイングマイウェイな話で敵を倒して終わりだったら、それはそれで納得いかないのだが・・・。
きっと、これから1〜2時間かけてグダグダと落ち込んだ挙句に、残りのメンバーで協力して大望を果たすといった所なのだろう。ただ、このゲームの続編が出ても、CG枚数とか別にして、もっとアップテンポでなければ到底やる気が出ないというのが、自分の正直な感想ではある。
追記
「ごらんの有様だよ」
この言葉で2008年のエロゲー界を震撼させたゲームの、2009年2月28日に発送することになったアペンドディスクのお話である。
普通のエロゲメーカーなら、こんな代物を発売したなら、夜逃げでもして、心機一転してまた馬鹿を騙すところだろう。しかし、今回はエロアニメで有名なミルキーピクチャーズ。まさか、こんなことで母屋を潰すわけにも、いかない。しかし、アペンドディスクの発送は、発売日からたったの2ヶ月間しかない。到底、ファンの満足のいく作品ができる時間的余裕がある訳もない。一体、どんな代物が出てくるかと楽しみにしていた。
それで、ワクワクしてサイトを2月28日に見に行くと、アペンドディスクは完成していた。ただ、残念ながらダウンロードは3/1の正午から(配布は2月28日に郵送済みとのこと)。
だだし、修正ファイルのサイズは84.9MB。ろくに圧縮しない昨今では、これでは追加のシナリオなんて望める物ではなく、せいぜい真っ暗だったエロシーンにCGがつく程度といったところだろう。まあ、予想通りってところだ。
せっかくだから、パソコンを新調したので、パソコン2台の並列でパッチ前後の両方のソフトをプレイしてみることにした。しかし、本当にパッチ前後での変化は少ない。一回完全クリアしていたので、改変部分が既読・未読判定機能で未読にならなかったなら、並列でも改変箇所を見落としていたかもしれない。それ程、変化が少なかった。
例をあげてみると、
Before「え?あぁ…うん…昨日のマンション」
After「……昨日の…マンション」
Before「ごめん!でもユキさんを放っておけないだろう」
After「ごめん!でも、ユキさんを放っておけないだろう」
2例目なんて句読点しか違いが無い。
さらに進めていくと、なぜか文章がまったく同じなのに、なぜか未読判定が出ている所があった。不思議に思いながら何度か繰り返してみたら、なんと登場キャラの表情が違っていることに気づいた。まるで間違い探しみたいだ。他にも、キャラの立ち位置を修正したり、あまり意味のなさそうな改行がおこなわれていたりする。こんな感じで、文章の違いは、あまりたいしたことはない。
それよりパッチの効果は、主にCGに現れている。なにせ新規のCGが65枚も追加された。これでエロシーンに18禁CGが追加され、ノベルゲームから脱出することができた。まあ、自分は怪物のCGがきた方が良かったが。ただ、CGの追加と言っても差分が多い。差分を除くと32枚しかCGはないので割り引いて考えてほしい。これでは最近量産されている低価格帯ゲームの方がよっぽどマシだ。
それと、当然のことながらCGモード、回想モード、BGMモードも今回は加わっている。ただ、回想シーンは6つしかないし、CGモードにはデカデカとサムネ画像4枚分使って表示された「CGをクリックすると差分ファイルが見られます。」の文字が笑いを誘うだけの代物だが。
こんなパッチでも、前回グダグダだった最終章あたりになるとマシになってくる。まあ、前回の地の文と台詞がゴチャゴチャになっていたのがアレだったのだが。でも、なぜ芋虫やら幼生という表記が蟲に変わったのかは分からない。それと、以前は触手で拘束されていたHシーンが、なぜか主にSMの拘束具と触手に変わっていたりする。こちらは、追加のCGの合わせただけかもしれないが。
しかし、最大の変化は、最後の戦闘の選択肢が削られたことだ。このゲームの場合、ほぼ選択肢=バッドエンディングの分岐=エロシーンへの導入を意味しているので、選択肢の削除とはエロシーンの削除を意味している。何と追加パッチでただでも少ないエロシーンが削られるという「ごらんの有様」が待っていた。HPには、[「PC-GAME魔法少女アイ参」を最後までお楽しみ頂けるよう最善と尽くしております。]なんて書いてあるが、どうやら、最後の最後でCGが間に合わなかったようだ。
ここまでくるとエンディング直前なのだが、あと大きく削られていたものがこのゲームにはある。スタッフロールから、魔法少女アイシリーズを書き続けていたシナリオライターの「マンサク氏」の名前も削られていたことだ。どうやら、この作品はサブライターが作ったものらしい。
結果として、核地雷級のゲームが単なるダメゲー(しかも打ち切り)に進化しただけという、相変わらず、「ごらんの有様」から脱出してない作品だった。まあ、ひとつのゲームで2回も楽しめただけ良かったと思うことにしよう。
(タコマロ)
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