「280」、それがこのゲームの中古価格。「値段相応」、これがこのゲームの正体。そう、奴の名は、『時空探偵DD』。
このゲーム、あまりの安さに、ついつい購入してしまった。そして、その出来は、まさに値段相応と言う代物だった。
確かにこのゲームは短い。2〜3時間もあれば十分にクリアできる。まあ、これは全編、ポリゴンのアニメみたいな展開だから、こちらは許す。でも、短いなら短いなりに、それなりのストーリーを創れると思うのだが、このゲームの場合、設定およびストーリーが見事に適当である。製作者に能力がないのか、それとも努力する気がなかったのか、ともかく、どこぞの『エピソードT』よりも話が酷いというのだから目も当てられない。兎も角、その驚嘆の中身を見ていこうと思う。
キャラクター紹介
鳴神雷蔵
本ゲームの主人公。西暦2238年の住人で時空犯罪を専門にあつかう時空探偵。かなりすごい職業だが、SFならば許されるだろう。
それより問題なのは、彼の二つ名のDDだ。これがなんとドラキュラ・ディテクティブの略。それも比喩でなくて、ヴァンパイアの特殊遺伝子を持っている正真正銘の吸血鬼。取説のこの設定を読んだ時に、軽い眩暈を起こしたものだ。それにしても、ヴァンパイアの特殊遺伝子って何?
ともかく、吸血鬼の彼には特殊能力があり、それを使うためには一定のパワーが必要となる。そのために、トマトやドリンクを沢山食べる必要があるのだ。しかし、重要なシーンでは、あっさり禁じ手の吸血行為におよんで、プレイヤーの努力を台無しにしてくれる恩知らずでもある。
まあ、その特殊能力が、『空間の記憶を見る』。ぶっちゃけた話、過去が見れるわけだ。無論、こんな便利な能力を持った奴が、事件の調査など爪の先程もしないことは、十分に予想できると思う。また、その期待を裏切らないことも、ここに付け加えておく。それにしても、世界一楽な探偵だな貴様は。
霧姫・アイスマン
DDの相棒で、タイムマシンの操縦をおこなう。このタイムマシンが便利なことに、時間を航行できるだけでなく、人を乗せて空も航行できる、まさに究極の乗り物なのである。これが探偵事務所の所有というのだから、23世紀というのは実にすばらしい世紀と言えるだろう。
彼女は、史上最年少でこのタイムマシンを動かす天才女子高生らしい。しかし、登場シーンにいきなり水着で登場し、紫外線注意報が出でいる中で、吸血鬼のDDに海に連れてってとねだる大馬鹿物である。お前、いきなりDDを殺す気か? ともかく、天才と言うより、その紙一重ではないかと思われる。
レニ・ラヴァル
今回の依頼人にしてヒロイン。失踪した父の捜索をDDに依頼する。父から渡されたオルゴールに隠されたディスクに、1939年の北極に巨大な機械を非合法に時空転送させた記録があったことから、一行を300年前の過去界へと誘うことなる。
また、DDと違った種類の特殊能力を持つが、これが驚くべき伏線となっている。
ちなみに、父のクルト・ラヴァルは超電磁工学の権威らしい。それにしても超電磁工学とはヨーヨーとかロボットでも造っていたのかと思わせるが、この作品では月面のマスドライバーとか真っ当な物を設計した有名人らしい。
まあ、最初の人物紹介は終わったので、この後はストーリーに沿って見て行きたいと思う。
1939年の北極についた一行は、件の物の転送予想時刻まで時間があるので、霧姫の希望でドイツまでパフェを食べに行くことになる……。それも、映画が始まるまで近くの喫茶店で時間を潰そうクラスのお手軽さで。しかし、この頭を抱えたくなる行動が、大きな収穫を得ることになるので、このゲームのストーリーは油断ならない。
立ち寄ったドイツの酒場で、クルト・ラヴァルという人物が設計した新型飛行船のローレライ号が処女航海を行うという新聞を入手したのである。しかも、娘のレニさんも、このクルト氏の写真は年をとっているが父に似ているという。そこで、DDとレニさんは日本の新聞記者とその見習いと偽って、クルト氏が乗るローレライ号へと乗船することになる。
ここからがゲーム本編のスタートである。巨大飛行船による優雅な空の旅、時空を超えた謎、そしてDD達を密かに追跡する影、これまでの怪しい設定はさておいて、実に面白そうな舞台が幕を開けたという感じだ。
飛行船が離陸するとラウンジで船長の挨拶が行われる。そして、そこに他の乗客や主な乗組員が集まるのだが、そこでの会話は『黄金の羅針盤』などのイメージで、まさに探偵物という感じである(その期待は裏切られる)。
ここで登場人物が増えるので、それぞれ簡単に紹介しようと思う。
リヒャルト・シュトラッサー
ドイツ人の資産家で、クルト氏の二十年来の友人。娘のカーリンと共にこの航海に招待されたとDDに告げる。後で明らかになることだが、招待されたどころか、実は彼こそがローレライ号のオーナーである。
マッツォ・ベラスコーニ
招待客の一人で、イタリア人の飛行機の技術者。陽気そうな人物である。残念ながら、これ以降の登場のシーンはあまりない単なる脇役。
マリア・ヘルシング
船のディナーショーに出演するために招待された歌手。初対面のDDに対して、酒場でトマトを頼んだ変な日本人と揶揄する。DDがこのローレライのチケットが取れたのも、彼女が手配したおかげらしい。その名前のヘルシングからして、DDに対しての洒落っ気たっぷりの偽名かと思わせる謎の美女。しかして、その実体は……。
しかし、DDもいくらトマトが好物としても、酒場で注文するならブラッディー・メアリーにして欲しいものだ。吸血鬼の品位台無し。でも、1939年には、まだこのカクテルは普及していないかも(当時なら、先輩格のトマトジュースとジンのブラッディー・サムの方が一般的かな?)。
滅砂・シュミット
滅砂でメッサと読ませるドイツの新聞記者。そんな名前のドイツ人なんいない。無論、20世紀にはね。これで分かるように、彼こそが未来からDDを追ってきた存在である。これが本名なのかもしれないが、未来では漢字の名前が流行りなだろうか?
カーリン・シュトラッサー
名前から分かるように、リヒャルト・シュトラッサーの娘。過保護の父親と、それをうとましく思っている娘と言う、古今東西どこにでもある親子である。
夕日の窓辺でたたずむ彼女の元に行くと、美しいけれどもお馬鹿なシーンに遭遇できる。レニが、飛行船の外を飛んでいるハトがリョコウバトだと大騒ぎするのである。そして、それに対して、この種のハトはヨーロッパでは珍しくないと切り返すカーリン。君達両方とも違う、リョコウバトはアメリカ大陸のハトだ。鳥の歴史上もっともいたと言われる鳥だが、ヨーロッパ人の移住者に皆殺しにされた絶滅種である。それも、確か第一次大戦にはほぼ絶滅していたという記憶があったので調べてみたら、確認されている最後の個体が死んだのは1914年とされている。空間的にも時間的にも間違いだぞ、製作者。それでも、この尾羽の長いこのハトの飛翔している姿を見れたので許してやろう。
そんなこんなで、全員の話を聞くと船長が登場して、ローレライ号の処女航海はドイツ一周であることが明らかになる。この説明聞くまで、どこに行くか気にしていなかった。それより、肝心のクルト氏が姿を見せなかった方が重要に思える。
船長の挨拶も終わると、各自自室に戻って行く。依頼人のレニさんは、カーリンと仲が良くなったので、二人でお話するそうなので、これからDD単独で各部屋を訪れることになる。
そして集まった情報の中で重要なことは、あの怪しいマリアさんが、この飛行船が海の上を進んでいると教えてくれたことぐらいだ。しかし、明らかに航路を外れていると思われるのに、他のだれも気にしないのは、どうにも不可解である。飛行船の旅なのに誰も下を見ないのであろうか? それとも、他の人には、これは予定通りの進行に過ぎないか? どうも、先程のリヒャルト・シュトラッサー氏との会話で、もし外国でやり直せるとしたら、日本人の君ならどうするかという問いかけが非常に気になってくる。
それは兎も角、ここに乗船した最大の目的であるクルト氏に会うために、船長にかけ合うこと3回、なんとか夜にクルト氏に取材できるようになった。しかし、今度は肝心のレニが行方不明。それも、滅砂・シュミットの部屋に行くとシャワールームで物音がしたり、ルームサービスを2人前頼んだりしたり(それは後のことだが)、あからさまに彼が怪しいと分かるだろうに、それを理解できない馬鹿探偵DD。貴様の辞書に推理と言う文字はないのか?
しかたないので、一人で船長室に取材に赴くDD。そこには、クルト氏だけでなくリヒャルト・シュトラッサー氏と船長までいる。最初、クルト氏の話は、最初はアメリカへの亡命などと愚にもつかない話だったが、DDの話を聞くと一転して全ての真実を語ってくれる。クルト氏は、ある機械を開発したのだ。それは開発コード・ゴリアテ、惑星の地殻を自由に操作でき、地球外への移民は画期的に進めることが出来る夢の機械。しかし、ゴリアテは悪夢の破壊兵器にもなりうる。ゴリアテが犯罪組織に売られることを知ったクルト氏は、これを過去の北極に転送し破壊することにした。けれども、電力の不足から時間転移の制御に失敗し、この時代、1939年にゴリアテは転送されてしまったのだ。この時代の科学力では北極の氷の下にあるゴリアテを破壊することは出来ない。それで、クルト氏は、前もって1920年に渡り、ゴリアテを破壊することが可能なレールガンを、時間をかけて秘密裏に開発することにした。
なるほど、これまでの話の謎は解けた。しかし、過去に渡ってまで自分で決着をつけなくとも、警察などに任せれば問題はなかったのではないかと思うが、まあクルト氏は人一倍責任が強かったんだろう。ともかく、DDはクルト氏に協力することにし、レニを探し出すことになる。
そうしてもう一度、船内の捜査を行っていると、無線室でドイツ軍に情報を漏らしている奴を発見する。そいつは簡単に倒したが、すでに位置を報告されてしまった。過ぎてしまったことはどうにもならないが、一応船長に報告しに、船長室に戻ることにする。しかし、そこでDDが話す台詞は、「もう一度お話をお聞かせ願えませんか?」。違うだろ、DD! 無線のことを船長に話せよ。そして、繰り返される先程の長い長い謎解き……。このゲームは台詞をスキップすることができないので、台詞が長いシーンが繰り返されるのは、実に頭にくる。
しかし、これでもDDの対応にしては良い方なのである。もし無線室に入った時にDDの吸血鬼としてのパワーが足りないと、逆に裏切り者に無線室を追い出されてしまう。こんな事態になっても、船長室に行ってDDが話すことは前と同じなのだ。DD、君って奴は本当に探偵失格だよ。
そんな失格探偵DDも役に立つ場面がやっとやって来る。なんと、クルト氏が何者かに拳銃で狙撃されたのだ。命に別状はないが、話せる状態でないので、肝心の犯人が不明。そう、ここで彼の出番である。無論、探偵ではなく特殊能力保持者としてのDDのだけどな。ことは簡単、『空間の記憶を見る』、それだけでビジュアルシーンが流れて、一目瞭然、滅砂・シュミットが犯人と確定。やっぱ、この能力は話上、絶対に探偵が持っていてはいけないと思うぞ。
それから話は急展開を迎える。滅砂・シュミットを追いかけて彼の客室に入るが、すでにシュミットはここにはいない。それで、バスルールで物音がしたことを思い出して、その扉の前で特殊能力を使うDD。まあ、それで中にレニが捕らわれていることが分かるのだが、単に扉をぶち破ればそれですむ問題だ。どうも、こいつは特殊能力に頼りすぎだ。
さらに電源室が破壊されてしまう。このままでは、ゴリアテを破壊するレールガンを動かすことができない(レールガンは飛行船についている!)。そこで、タイムマシンの予備のエネルギーカートリッジ(危険なことに放射性物質マーク入り)を使用することになる。しかし、タイムマシンは飛行船に近づくことはできるが着艦などはもちろんできない。そこで、忘れていた所だったがレニの特殊能力が役に立つ、彼女は瞬間空間転移能力者だったのだ! それで滅砂に捕まっていた時に頭に変な装置を付けていたのか。疑問は少し解けたが、この展開には釈然としない。
もう深く悩むのはやめよう、カートリッジを手に入れてゴリアテを破壊しようと思うが、ここで邪魔が入る。この北極点にいる(!)ドイツ軍の巡洋艦からロケット攻撃されるのだ。1939年でロケット〜? 史上初のロケットのV2ロケットが開発されたのが42年、実戦配備が44年と言われるのに、ロケット〜? しかも、V2ロケットは精々ロンドンの街を目標にする位しかできない精度の低い兵器だったのに、このロケットは巡洋艦から動いている25km先の飛行船を狙える程の精度なのである。架空戦記物も驚きの展開だ。流石、ドイツの科学は世界一だね。
しかし、そこは未来兵器のレールガン、そんなロケットは簡単に破壊してしまう。今度こそゴリアテを破壊しようと思うが、さらに邪魔が入る。ゴリアテを狙う組織の大型タイムマシン(半径数百メートル?)が時間転送されてくるのだ。しかし、海底3kmのゴリアテを破壊できるレールガン、そんな空中要塞も一撃で撃沈である。そして、今度こそゴリアテを破壊して目標を果たす。
それから、レニとクルト親子はこの時代に残ると言うので、二人を残して未来へと帰還するDDと霧姫。そして、小さな探偵事務所で今回は赤字であったとぼやく二人の元に、埼玉スイス銀行の代理人が届け物を持ってくる。車のタイムマシンが出てくる映画を見たことがある人には予想がつくと思うが、300年前からの品物である。中には、レニさんの手紙と株券が入っている。手紙には、あれからのみんなの事が書かれており、それによると全員幸福でなりよりのことだ。
それより問題は株券である。これが、世界でも五指に入るおもちゃメーカーのラバル玩具の物らしいが、この300年で価値が上昇しまくっているらしく、一気に大金持ちになれるらしい。しかし、未来の技術と知識を持った人間が過去に渡り、事業に成功して、それを援助してくれた人に報酬を準備しておく。これって、立派な時空犯罪なんじゃないか、DD? お前の辞書には正義と言う文字はないのかね。
そうだ、マリア・ヘルシングさんの正体を言い忘れていた。あの人ね、実に思わせぶりな態度をとっていたけど、マジに単なる歌手だ。最初は、この人は時間警察だと思ってたんだけど、見事に予想を裏切ってくれた。さらには、この人は女性だけど吸血シーンはない。単に煙にまくだけの無駄な存在である。石を投げるぞ、製作者。
えっ、これまで延々と読んできたけど、何でこのゲームが、ギャルゲーだか分からないって? 無論、吸血鬼に性的な意味(イメージ)があるということもある。しかし、それ以上に重要なのは、このゲームでは、丹下桜が声をあてている客室乗務員のシャワーシーンを覗けるからだ! これをギャルゲーと言わずに、何をギャルゲーと言おう。そういうことで、俺的にはこれは決定事項だから文句は受けない。
今日の所はこれで終わりにしておこう。では、皆さん、今度は『時空探偵DD2』でお会いしないことを祈っておこう。
(タコマロ)
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