このゲームの主人公「恋川英一」は大学二年生、進級で通う校舎が変わったので、祖父の経営する銭湯に下宿することになる。しかし、彼が銭湯「恋之湯」に到着すると、肝心な祖父は36歳年下の美人と再婚し世界一周の新婚旅行に出てしまうのだ。そして残された主人公が恋之湯のオーナー代理となり、他の下宿人達等が巻き起こす騒動に巻き込まれるのドタバタラブコメディーが、このゲームである。
これに、幼い頃の夏休みに恋之湯に主人公が遊びに来た時に会って何か大事な約束を交わした初恋の少女の淡い記憶と、恋之湯を狙う地上げ屋が絡んで話が進んでいく。
自分は『ラブひな』にはあまり詳しくないのだが、それと少し共通点が多いように思える。ちょっとあざとい気もするが、別に『ラブひな』がラブコメの始祖という訳でもないだろうし、プレイヤーとしては萌える設定・展開が散りばめられていることにこしたことはない。大いにパクる、もとい成功者の手法を学ぶというのは世の中でもたくさんの本が販売されている程広く用いられている手法だ(でも、流石に『織田信長の経営塾』とかの本はやり過ぎだとは思うが)。しかも、『ひまわり』の方は、客の居ない温泉旅館でなく女性客が日常的に訪れる銭湯を舞台にしている所等、設定的にはこちらの方が上だろう。
しかも、このゲーム、この設定で原画家に「CARNERIAN」さんと「ドレン・チェリー」さんを起用。さらに、パッケージにも「フェアリーテールがおくる2002年のビックタイトル!!」と赤文字で書かれているのだ。これは期待しない方がおかしいだろう。
それでゲームを始めてみると、何とこのゲーム、メッセージスピードの調節が出来ない。これはメッセージの表示がノーウェイトだから問題は少ないが、致命的なのはAVGなのにバックログ機能がないことだ。さらにスキップも既読スキップのみで強制スキップもない。
フェアリーテール(F&C)と言えばDOS時代から続くこの業界では老舗メーカーだ。人の入れ替えはあるだろうが、当然、この辺りの操作性についてのノウハウは積み重ねていると思っていた。しかしこれを見ると、老舗と言っても実態は単に馬齢を重ねていったに過ぎないことが分かる。最近、ヒット作が無いのもうなずける話だ(ただ、それでもバグが見当たらないだけでも、この業界では十分合格点なのが泣けてくる所だが)。
話を戻すと、このゲームで悪い点はシステムだけではない。CG枚数も不足気味だ。CGモードでは90枚表示されるのだが、差分を除くと実質71枚といったところ。これで全10章+オープニング&エンディングの長丁場を攻略キャラ6人分やりくりしなければならないのだ。当然、こんな枚数ではどうしても無理がきてしまっている。おかげで、マッドサイエンティストなキャラが新開発したニュー・マシンに全体像のCGが無いという、非常なダメダメな事態が発生する始末なのだ。
それでも、立ちグラは結構豊富だし、背景もよく出来ている。特に背景は、登場人物それぞれの個性的な自室を用意している程の力の入れようだ。しかも、それらの部屋々々は各キャラの性格をよく反映している内装になっている程の芸の細かさだ。流石に、背景は外注しただけのことはある。
まあ、いくらイベントCGが少ないと言ってもラノベよりも絵の枚数は多いし、立ちグラと背景だけしっかりしていれば、シナリオだけで十分にビジュアルノベルとして楽しめる出来にはなるはずだ。しかし、その最重点のシナリオこそが、この『ひまわりの咲くまち』最大の問題点なのである。
その原因は何と言っても説明(描写)がないことにつきる。なにせ、最初に主人公が恋之湯に到着した後に6人の女性が登場する。この内、二人は主人公の幼馴染なので、まあ会話から相手の人柄等が察せられるから良い。問題は下宿人の4人だ。なにせ、彼女達は最後まで自己紹介をしてくれない。かなりステロタイプのキャラ設定なので分かりやすいとしても、やっぱり自己紹介位はして欲しいものだ。
こんなプレイヤーがキャラを把握できていないで状態で、ストーリーは恐ろしい勢いでばく進していくのだから堪らない。当然、この手の「女の園に男が一人」という展開お約束の主人公拒否コールが巻き起こる。だが、それも銘酒1本で腰砕けになり、瞬間で、これも下宿物お約束の狂乱宴会モードに突入してしまうのである。初回プレイでは、プレイヤーは完全に置いてけぼりモードでだろう。
最初、とっつき難いのは、まあライターの実力が少々劣っているだけのことかもしれないが、重要なイベントにすらろくな説明がないのはどうしたものだろう。例えば、キツい男嫌いというか潔癖症キャラある三梨凉子がバイクで事故を起こして主人公に助けてもらうイベントがある。これが、主人公が彼女に認められる始めてのシーンななのだが、これが凄いことになっている。引用すると
(凉子、恋之湯からバイトに出かける。)
SE:キィィーーーン、ドガガッシャーン
英一:「なんだあ!? どうしたんだ!」
凉子:「うっ……くっ……」
凉子:「くっ……不覚」
英一:「おい、だいじょうぶか?」
凉子:「だ、大丈夫だ……ん……ぐ……。大丈夫だ、だから放って置いてくれ」
英一:「大丈夫じゃないだろう!」
以上の引用の通り、会話だけで何の描写もないことが分かるだろう。まあ、これはテキスト上の問題で、実際のゲームは事故現場のCGや、怪我をしている凉子さんのCGがあるから状況が分かるだろうと普通の人なら思うだろう。だが、それは甘い。このゲームには、そんな所にCGを使っている余裕はない。プレイ中にあるのは、背景が恋之湯の中から正面に移るだけなのだ。当然、事故現場の様子にしても、かなり気になる女性の怪我の具合についても、当然のことながらプレイしていも全然分からない。
これは極端な例だが、エロゲーとしては重要なHシーンでも凄いことになっている。なにせ、実は約束を交わした初恋の人だったことが判明→キス→いきなり脱衣(いやそれ所かキャラによっては既に挿入済みだったりする)という急展開が待っている。いくら何でも、脱衣のCGがないのは兎も角、キスの後に服を脱がせる(もしくは脱ぐ)描写ぐらいは欲しかった。しかも、全員、判で押したように最初のHは同じこの展開なのも、どうしたものだろうか。
他にも、ストーリーに一連の繋がりがないことはドタバタギャグだから置いておくとしても、設定とストーリーが今一噛み合っていないのは少し勘弁して欲しい。話が進むと、「前は、○○は他の人を馬鹿にして相手にしてなかったけど主人公が来てから人当たりが良くなった」とか、他のキャラに言われたりするのだが、どう見ても全員、同じサークルの気のあう仲間みたいに仲良しにしか見えない。それなら、最初の狂乱宴会は一体何だったのだ。それに、そもそも、アスタントディレクターも「だんだん、希薄になった家族愛をテーマに選びました」とか書いてあるのだが、全然テーマになってないし。色々と突っ込んでいるとキリのないゲームだから置いておくとしよう。
それで、全体としてみると、このゲームには「CARNERIAN」さんの絵以外は、あまり見るところは無い。せめてもの慰めは、フェアリーテールのビックタイトルと言っても、映画の全米興行成績第一位と同程度のハッタリで、お金かけまくって大失敗してしまった映画の『ファイナルファンタジー』や『シェンムー』みたいな会社の屋台骨をぐらつかせる作品ではなかったことだ。
自分としては、金はけちってもせめて題名にもなっている「ひわまり」の本数ぐらいはけちって欲しくなかったのが残念なことかな。だって、ひまわり、銭湯の中庭にちょっぴり咲いているだけというのは、いくらなんでも寂しいだろう。
(タコマロ)
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