『テリオス』のこれまでの作品と言えば、戦闘シーンはおろか変身シーンすら省略して戦闘後のHシーンに流れ込む魔法少女物『まじかるカナン』。ワインには良い葡萄と水が必要だと断言するボケ爺の話し相手する『ELYSION』。そんな突っ込み所満載のゲームの製作を続けて来た『テリオス』の新作が、このゲーム『いきなり はっぴいベル』である。(ちなみに、ワインは水を極端に嫌うので、葡萄の取り入れは秋晴れの乾いた日の朝露が乾き始めた頃から始める程だ。)
前作までは、申し訳なさげに後ろに隠れていたバカゲー要素だが、今回は最初から120%全開で大噴火。何せ、主人公の親父が許婚とは親が勝手に子供の結婚相手を選ぶものだが、しかし、それではあまりに可愛そうだと、勝手に主人公の許婚を5人も決めてしまったのだ。パパ、許婚という熟語の意味知っている? それに5人はいらんだろ5人は。
こんな旧大日本帝国海軍の様な「大は小を兼ねる」思想で、主人公のパパ様は一代で財をなしたらしい。しかし、バブル崩壊の余波で莫大な借金を残して、パパはこの世を去ってしまう。
そして、家も失いボロアパートに引っ越した主人公を待っていたのは、父のメイドの「鷺ノ宮椎子」。彼女は、父の遺言として、主人公に5人の許婚を紹介し、今度の日曜日の結婚式までに相手を選ぶように要求する。
鷺ノ宮大隊長、既に本日は月曜日でありますが、実質たった五日で伴侶を選ぶんでありますか? それは我が隊に、ここを死守しろということですか? そんな日帝並の、出鱈目な戦略と戦術が脳裏に浮かんでしまう位、バカな話だ。
そんなバカストーリーを、横田守画伯の美しい原画、大きな問題のないシステム(既読スキップ機能は欲しかった)で楽しめるのだから、ハリウッド級のバカゲーであると、私は断言する。この業界も、狙った豪華なバカな作品が現れるとは、実に円熟したものだ。後は、『テリオス』が『カロルコ』の様に豪快に破産しないことを祈るだけだね。(カロルコ社は「ランボー」でヒットを飛ばし「カットスロート・アイランド」で咽喉笛を切られた大味な映画会社。有名人を使い、膨大な制作費と宣伝費をかけるハイリスク・ハイリターンを地で行って、最後は数回連続でコケて見事に破産した。)
そんな話は置いておいて、主人公の5人の許婚を順番に見ていこう。
第一許婚、篠沢花梨。主人公のクラスメートで学園のアイドル、更に実は本物のアイドル。5人の許婚の中では、比較的まともに見えるが、その頭脳は他の者と同じく理解不能だ。
主人公の部屋を訪れた第一声から、実は主人公を婚約者と知っていたと分かる演出はニクイ。だが、自分から現れたのに逃げ回ってばかり。そして、他の人が選ばれそうになると、「私だったら即オッケーなのに」と後押しする所から、実は主人公を嫌いと見た。でも、フラグを立てれば、昔から好きだったとか、ずっと見ていたとか、信憑性0の言葉を吐いて結婚式に突入。その言動は、某有名ゲームの親しくない幼馴染を思い出させる。ある意味、女らしいと言えば女らしいキャラ。
第二許婚、クーヘン公国、第一皇女パステーテ。なぜ二つの「こう」の字が違う? いきなり第一声から突っ込み所満載のお姫様。加えて、クーヘン王家の血を引くらしい。そんな馬鹿な、と思うが、この血は主人公にも脈々と流れているので、その突っ込みは強力な自爆技だ。
兎も角、高飛車な彼女の話が一番のバカ話。猫に跨る身長30cmの騎士団を連れた彼女の祖国は、きっと塚の中か、海の底にあるのだろう。
第三許婚、後藤美智子先生、主人公の担任で倫理担当。少々ボケているが、比較的まともで、一番可愛いと思う。簡単に結婚可能だが、真のハッピーエンディングは難しい。しかし、苦労するそれも、学校でH後、プロポーズの言葉を全校中に放送し、生徒が盛り上がる中、義理の父上が屋根の上から花吹雪を蒔くという、前衛芸術並みのエンディング。はっきり言って、これを始めて見た時は、あまりの既知外ぶりに眩暈がしたものだ。
第四許婚、天国宙。ダークマターを媒介として伝達する流星電波が、ある日、宇宙からやってきて、許婚になったらしい……。もう完全に異次元の電波女。常に腹話術人形を持っており、一人漫才をしたり、都合の悪い事を話させたりしている。
普通なら近づきたくもない彼女だが、ある意味最初からこの世の物ではないと覚悟して取り掛かるので、一番普通に見えるのは不思議だ。このゲーム、バカゲーらしく、普通に見える人間が急に異空間な行動を取るのに唖然するが、彼女に関しては電波なりに(理由は不明だが)、予想できる行動を取るのが許せる。
しかし、金平糖を自作して昼飯にする彼女は凄い。金平糖製作には、1日9時間かけて約10日間も要するのだ(マジに)。しかも、その間、常に熱した鍋を傾けた状態で回し続けなればならない。自動の装置がなければ、絶対に非力な人間には製作できない菓子が金平糖なのだ。もし金平糖を不恰好ながらも自作できたら、金平糖を造る店に弟子入りしよう。どんな名人職人でも、「ああ、私が存在している理由は、この子に金平糖造りを教えるためだったんだ。」と己のレゾンテールを確信させること確実だ。
第五許婚、向坂つぼみ。主人公と結婚するために、はるばる田舎から汽車に乗ってきた。汽車が走っているとは、田舎は印度とか伯剌西爾(ブラジル)とか言うのであろうか?
開始早々、主人公と正面衝突し、以後寄ると触ると喧嘩する彼女が、このゲームのメインヒロイン。素直でないというのは、この手のヒロインのお約束だが、彼女のレベルは他を超越した螺旋階段級。いくら対人関係の乏しい生活を送っていたとしても、普通なら許せる程度ではない。
第六許婚、三間坂ちこり。許婚は5人だろ、どうして6人もいるのかと疑問に思うかもしれない。私だってそう思ったさ。まあ、隠れ許婚とでも思ってくれ。この勢いで、さらに暗黒許婚六人衆とか現れて、合わせて許婚が十二人になるのかと心配したものだ。
ちこりちゃんは、主人公の義理の妹で、許婚で、●学生。もうここまで来ると、矢でも鉄砲でも持って来いという感じ。しかも、流石バカゲー、ゲーム中で●学生、●学生と連発するとは……。でも、そんな●学生の妹の家に遊びに行って、直にHを迫る主人公は絶対に鬼畜だ。
最後にメイドの鷺ノ宮椎子、最近流行りのボロアパートに棲息するメイドだ。彼女は意外にも許婚ではないが、エンディングが存在するので一応紹介する。
主人公に許婚を紹介し、結婚式の準備を進める彼女が、この話のパペットマスター。つまりは元凶なりし者。何の疑問の無く、こんな馬鹿な事を実行できる彼女が、真っ当な思考をする訳が無い。美人で面倒見は良いのだが、正直言って結婚するのは勘弁だ。しかも、彼女の話は異常に生々しいというか、暗い話だし。
このゲーム、全体で見ると非常に話が急ピッチ。何せ、たった5日間(火〜土曜日)で相手を攻略する必要があるのだ。しかも、会えるチャンスは昼飯時と、放課後、上手く行けばそれに加わる夜の1日3回だけ。さらに、木曜日の晩には相手を選んで金曜日には告白する必要があるので、相手の好感度を稼ぐのは、わずかに3日間。
たった3日間なので、主人公は意中の許婚のストーカーをし損なうことは無論のこと、選択肢を間違える余裕も無い。しかも、この選択肢、主人公の行動と相手の反応が予想つかないので、変な物が正解だったりして油断ならない。流石『テリオス』は違う、ビシビシとバカゲーの核心を突いて来る。
無論フラグが足りなければ、どんないい感じで告白しても「御免なさい」だ。昨日までの雰囲気は何だったの、理由は何と聞いてみたいが、答えは当然バカゲーだから。(いや、便利な言葉だな、バカゲーだから、これで森羅万象全てが説明できる。)
また、期待していた許婚の女の争いはまったくなし。つーか、メイン以外のヒロインは、生存していること位しか情報は入らなくなる。まあ、こんなに短過ぎる期間の話に、そんな修羅場を入れている余裕は無いのかもしれないが、これは私としては非常に残念だった。
まあ最後に結論を言うと、横田守画伯なら他は何でも問題にしない人か、バカゲーファン以外は買わない方がお勧めだ。それ以外では、キャラの性格設定がコロコロ変わるゲームをしても全然気にならない奴なら楽しめると思う。
(タコマロ)
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