このゲーム、開始してまず始めに感じるのは、MIDIから流れ出すチープな音。そして、ただスクロールするだけの何の意味も演出もないオープニング。しかも、そこに使われているCGも何となく色数が少なく、さらに1枚を除いては立ちグラを流用したのではないかと思われる代物。そして、肝心のゲームが始まれば、古風な(色数の少ない)フレームに縁取られた画面。
何もかもみな懐かしいと言えば聞こえはいいが、はっきり言うと、まるでPC−9801のゲームをWindowsに移植したかのような感じだ。そして、ゲーム本編も、その第一印象を裏切ることなく、ストーリーの流れもギャグのセンスも本当にPC−9801のゲームをしているような仕上がりなっている。ただ、このゲームの場合、悪い(古臭い)という意味だけでなく、いい意味でもPC−9801時代のゲームっぽいのがお勧めの所だ。まあ、逆に、あのノリがダメなら、いまいちのゲームにしかならないだろう。
まあ、そんな話を永遠としていても中身は伝わらないと思うので、まずはゲームの導入について説明したい。
このゲームの主人公である緒図薫は、両親がなく、田舎の祖父母の元で生活をしていた。そんな彼の元に、父方の叔母と名乗る人物から逢諒学園への推薦入学の誘いの手紙が送られてきたのだった。そして、祖父母の反対を押し切って、逢諒学園へ特待生として入学することになったのだが、実際に学園に来てみると入寮するはずの寮が何と「女子寮」。それ所か逢諒学園自体が、お嬢様が通う「女子校」だったのだ。それで、元の学校も退学してしまったこともあり、主人公である緒図薫は女装して逢諒学園に通うことになるのである。
しかし、ここで主人公が実家に電話をした所、祖父が「女子校だったんだろ! そうでもなければ反対もせんわ」と言うのだが、じいちゃん、そんな基本的なこと、分っていたら教えてくれよ、いやマジで。
兎も角、歴史のあるお嬢様学校ということで、ここは世の常識が通用しない世界だったりする。分りやすく言うと、姉妹(スール)という制度があったり、生徒会役員が紅薔薇・黄薔薇・白薔薇と名前がついていて三役がなく全員同格というローマ共和制末期の三頭政治を思わせる対立すると泥沼状態になりかねない不安定なシステムが継承されていたりする某女学院のようなものだ。
逢諒学園も、それに劣らず非常識なルールが常識化している。逢諒学園は、元々はここの領主であった逢諒家が維新の後に家臣を通わせるために設立した女学園が元になっているらしい。それで、家臣の中でも比較的地位が高かった家柄の娘は「上家司(かみげいし)」、逆に地位が低かった家の娘は「下家司(しもげいし)」、略して「上家(じょうけ)」、「下家(かげ)」と言われている。今は昔ほどではないらしいのだが、それでも、現在でも、この学園には格差が存在する訳だ。
そして、逢諒家に関係なく、編入してきた人を「外来(がいらい)」と言う。その多くが、逢諒学園卒業生という箔を娘につけたいと思った親御さんが多額の寄付金で編入させたケースにあたるので、外来は成金娘とか陰口をたたかれる始末なのだ。
それで、主人公は外来、しかも金なしという学園では最下層に位置するはずなのだが、事は非常に複雑になっている。主人公は「奥御殿寮」という名の見た目はごく一般的な寮に住んでいる。しかし、この学園ではここに住んでいるというだけで重要なステータスになるのだ。
これを理解するには、上家の家柄と一口に言っても、実際はさらに上から下まで幅がることを知る必要がある。自分も詳しい設定が分るわけではないので一部は想像なのだが、上家の筆頭は「六家」という特殊な6つの家系らしい(ただし、六家と言っても、既に一つの家は絶えているらしく実際は5つの家しかない)。因みに、学園の理事長すら、この六家のひとつである雲根家の家令の一族だったりする。
この下に、学園の理事を務める上家でも位の高い家系が位置することになる。この理事と関係の深い学生が、生徒会にあたる紅牡丹会を結成している。どうやら逢諒学園には日本国憲法とか民主主義という単語は存在していないようだ。さらに、この下に、普通の上家やら一般の教職者が位置している訳だ。
それで、それぞれ住める寮が決まっているらしく、奥御殿寮(六家以上)・牡丹寮・百合寮・そして下家は紅葉寮という区分になっている。おそらくだが、牡丹寮には紅牡丹会に入る理事クラスの一族が住んでいるだろう。
主人公は、女子校に通う男性という部分を除いても、明らかにイリーガルで浮いた存在である。さらに、学園でも羨望のまなざしで一般生徒に見られている六家の娘達(通称、「黒髪少女隊」)と、寮が一緒という訳で始終行動を共にしているのだ。まあ、主人公の方は、好きで一緒に居る訳ではないのだが、黒髪様の方が離しはしない(例えば、怪しい発明品の非検体に使われたりする)。おかげで、主人公はいらぬ問題に首を突っ込むことなる。いや、厳密に言うと、事件の方へと引きずり込まれることになる。
例えば、下駄箱を開けると妬みによる不幸の手紙が入っていたり、黒髪少女隊を目の敵にする紅牡丹会との闘争に巻き込まれたりする訳だ。
この辺りはドタバタ学園物の感じで非常に面白かった。特に、料理対決のイベントが最高と言えるだろう。まあ、このゲーム、あちらこちらにパロディネタが仕込まれているのだが、ここのは特にキレが鋭い。口から美味いぞーと光線を吐いてみたり(お前はミスター味っ子の味皇か)、「究極奥義 焔のコマ」と叫んで逆立ちして炎を出しながら調理する輩が出てきたり(今度はゲームセンターあらしだよ)、明らかに今の人のことを考えていないネタが満載だ。多分、ここのネタは5年前でも十分通用すると思う。まあ、それ以外のギャグは少しセンスは古いが今でも十分笑えると思うけど。
それで、ギャグ一本で進むかと思わせておいて、話は後半になると伝奇物に傾いていく。ここからはネタバレになるので、詳しくは話せないのだが、中々、これも面白かった。
しかし、このゲームの場合、この伝奇物の話も終わり、スタッフロールを見てからが、ゲームのプレイ時間としては、とば口にたどり着いたくらいと言うのはなんとかして欲しかった。なにせ、最後に黒髪少女隊のヒロインとの個別エンディングに達するとHシーンの超連続に引きずりこまれてしまうのだ。ヒロインが妊娠しないと終わらないのだが、これがHシーンでスロットを規定回数成功させることがフラグになっているのである。まあ、色々試していればスロットのスピードは遅くはなるのだが、それでも下手をすると1人に20分間近くかかってしまうのは勘弁して欲しい。
そして、完全クリアのためには、これに加えて、寮の下の地下迷宮をクリアしなければならないのだ。この地下迷宮がワイヤーフレームの3Dなのだが、これがどう見てもWizardryにしか見えない(しかも、「かべのなかにいる」の名台詞もあり)。ただ、この迷宮、全部で地下6階もあるとは・・・。
しかし、このゲームの最大の問題点は、これらの唐突ともいえるイベント群を制覇しまくっても、未だに本筋のストーリーが明らかに完結してないのである。多くの複線を消化しきっていないし、真の敵の正体も、六家のおばさま達が何を考えているのかも分らないのは、尻切れトンボで、ゲームが楽しかった反面、つらいものである。しかも、どうやら、ゲームの売り上げも芳しいものではなかったらしく、次回作を作品として見ることはできそうもない。後は、「はにぃぽっと」さんのOHPに掲載される拡張コンテツに期待するしかいないだろう。
それでも、声優さんの演技は上手だし、古いタイプのゲームが好きなら、ぜひプレイしてみることを勧める。
(タコマロ)
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