この『冴子さんといっしょ♪』は一般販売のソフトではない、テリオス(Terios)ファンクラブの期間限定無料配布ソフトで、2004年10月現在では一般の店舗で入手できないソフトである。去年の『宅配メイド椎子さん』と同じ系列の作品と思って欲しい。
椎子さんは『いきなりはっぴぃベル』の一番人気どころか、テリオスでも押しも押されもせぬ看板キャラだ。こう言うのは悪いが、椎子さんに比べると、今度の冴子さんは人気の面では遥かに劣ると言えるだろう。知らない人もいると思うので説明しておくと、冴子さんは、『夏色☆こみゅにけーしょん♪』(題名が長いので以下『夏こみ』と省略する)に登場する脇キャラで、主人公の家の隣に住む人妻である。
バカゲーマーとしては、夏って言葉で始まる名前自体が、『夏色ディスティニー』とか『夏館』とか思い出されて、縁起が悪いのだが、それを置いておいても、個人的には『夏こみ』は面白いゲームではなかった。(特にあの主人公が嫌いで、途中でゲームをプレイするのをやめてしまった。) 今度テレビアニメになる程の『いきなりはっぴぃベル』に比べるのは論外としても、『夏こみ』は、やっぱりファンの中の評価もいまいちって感じなのだ。まあ、ファンディスク関係を除くと、テリオスの最新作が『夏こみ』なので、本編の売り上げを伸ばす意味もあって、このゲームが選ばれたのだろう。
それは分かるのだが、しかし、なんで、その『夏こみ』の中でも、よりによって冴子さんが選ばれたのかが疑問だ。人気投票でも、確か冴子さんは一番でなかったはずだ。おそらく、『夏こみ』の登場人物の中でも、主人公のキツイお目付け役の「瀬尾明日香」さんや、ロリロリの妹キャラ「星乃つかさ」ちゃんに人気の面では負けていた気がするのだが。
確かに冴子さんは、エロゲーに出てくる人妻キャラの多分に漏れずグラマーな女性で、原画家の横田守氏の絵が映えそうなキャラである。しかし、そもそもその点に関しては、『夏こみ』の登場人物は、ロリロリの妹キャラでさえ爆乳というオールボイン体制がひかれているので、誰だって横田守氏の絵が映えるだろう。やっぱり、エロエロな人妻という設定が、ミニゲームを創りやすかったのだろうか。
一応はタダである物にあれこれ注文をつけるのもアレかもしれないが、ここのファンクラブの場合、その価値の殆どがこの無料配布ソフトに占められているので、まあ文句を言いたくもなるってもんだ。
それでも愚痴を垂れていてもきりがないので、ゲームの中身に入りたいと思う。最初に、普通なら紹介しない内容だが、このゲームを解説している他のHPも少なそうなので少しCG枚数と回想シーンの数について触れたいと思う。全部でCG枚数は15枚(基本がこの枚数で加えて色々差分あり)、シーン回想は19個ある。
ただ、シーン回想の方はHシーンだけではなく、風呂上りのバスタオルを巻いたシーンとサンオイルを塗るシーン、それに全然エロくない喫茶店の会話のシーンが各1個含まれている。それらを抜いたとしても、依然としてシーン数の方がCG枚数を上回っていることから予想できるように、この回想シーンには内容が少し違うだけのHシーンが多くある。例えば、お口での場面は、日を変え場所を変え、全部で4つもあったりする。ただ『夏こみ』の方をクリアしてない自分には、どれだけ使いまわしがあるのかは分からなかった。少なくとも1シーンは『夏こみ』の物が含まれていたが、それでも、各シーン的には悪くなかったと思う。
そしてシステム的には、前回の『宅配メイド椎子さん』とあまり違わない。その中で最大の変化としては、今回はCDレスでプレイできるようになったことだ。これはかなりありがたい、だが、依然としてスキップが少々使いづらい。通常モードのスキップでは、既読・未読の判定を見てくれないで豪快に文章を飛ばしてしまうのだ。一応、「一度読んだ文章は飛ばす」というモードがコンフィグにあるのだが、これを使うとオン/オフにいちいちコンフィグを開く必要があるので、どうも自分には合わなかった。次回作では、この辺りは改善してくれると嬉しいのだが。
それで肝心のストーリーの方となると、このゲームの主人公は演劇俳優を目指す青年。彼は、その夢の為に色々なバイトを掛け持ちでこなしながら、自活して暮らしている。こんな真面目な主人公なので、当然ながら背景世界は一緒ながら『夏こみ』の主人公の鹿島直人とは別人である。
そして、主人公が街でよく見かけて気になっていた人が、冴子さんだったのである。しかし、その左手の薬指に輝く指輪を見て、彼女の事は諦めていたのだ。しかし、ある時、宅配のバイトのミスが縁で、冴子さんとお近づきになるのである。
お近づきになると言っても、そこはそれ、エロエロな冴子さんのこと、そのミスにつけこんで(というか騙してというか、言いくるめてというか)、主人公とHな関係に持ち込んでしまうのだ。これ以降、冴子さんと主人公は、まあ所謂、不倫関係に陥ってしまうのだが、このゲームの場合には、その手のジャンルにありがちな隠微感とか背徳感はない。冴子さんからは、そんな湿っぽい空気は漂ってこずに、それはもう、オーストラリアのゴールドコーストにいるかのような、眩しい太陽の輝きが満ち溢れているのである。
実際、この辺りのノリについていけるかどうかで、このゲームが面白いか、つまらないかが決まってくると思う。超ネタバレになるが、冴子さんが、こんな行動をとる理由について最後の<ネタバレ>の所に書くので、ネタバレを嫌う人は、そこは読まないでおいて欲しい。
それで全体にまとめると、冴子さんという他に例を見ない凄いキャラについていければOK、これがダメなら最悪のゲームと言えるだろう。だが、ファンクラブの期間限定無料配布ソフトとしては、こんなアクの強い作品は避けて、もっと万人に受け入れやすいソフトにした方が良いとは思う。まあ自分は、そのアクが面白かったので良かったけど。ただ、『夏こみ』の主人公の鹿島直人だけは出して欲しくなかった。何か、アイツが話すだけで、心に嫌な感じが広がってきたのだが・・・。それだけが、嫌な点だった。
全体として見ると、『夏こみ』を少しでもやっていないと分からないことばかりだし、冴子さんがダメだと面白くないソフトで、さらに入手が困難ときているので、お勧めはできない。どうしてもと思う人だけ、プレイして欲しい。
<ネタバレ>
まず冴子さんの夫婦関係だが、夜の生活はない。それで体を持て余して主人公という恋人を造っているのだが、これが凄い事に、旦那さん公認なのだ。それって、形式上の夫婦ということだけで、双方共に相手に干渉しないという冷えた関係を想像するだろうが、二人の関係はアツアツで、それ所か、かなりバカップルな感じが漂ってくる程だ。
まあそんな事になっている原因の一つは、冴子さんの旦那さんは性的に不能なことにあるのだが・・・。普通なら、自分が勤めを果たせないのでその代わりを認めているというのを想像するだろうが、真実はそんな次元を軽く越えた所にある。なんと旦那さんは、冴子さんの愛情は誰か一人に注いだら他の人に注ぐ愛情の量が減ったりするもんじゃないと、浮気をOKしているのだ。
しかも、この設定が、このゲームのストーリーの根幹なのである。それ所か、冴子さんは愛情を注ぐ対象が増えると全体の愛情の量が増えて、個々のものに注ぐ愛情量すら増加するという凄い人なのである。なんか、もう人間というより、どこかの豊穣の女神って感じなのである。しかも、旦那さんは「願わくは自分は、おまえの帰ってくる港になれればいい」とまで言っているのである。旦那さんは、もうまるで、最後の最後まで浮気ばっかりしている相手を待っている一昔前のエロゲーのメインヒロインみたいなのである。こんな状態を見て、自分は何て言っていいか分からないのである。でも、このゲームの中心は冴子さんで彼女を中心に世界が回っているのだけは分かるのである。
(タコマロ)
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