顔のない月


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仕様 評価
対応機種 WIN システム

6点

ブランド名 ROOT シナリオ

4点

ジャンル ADV 萌え萌え

6点

    せつなさ

5点

    素薔薇さ

5点

    C  G

10点

 


  このゲーム、あの人気原画家CARNELIAN女史が自分でつくったゲームということで、前評判は非常に高かったものです。中には、CARNELIAN=クソゲーという定説を覆すことができるか、それとも最終回答を与えてしまうのかということで、盛り上がっていた者もいたようですが。

  そんな訳で期待して、肝心のゲームの内容を見てみましょう。いやー、さすが人気原画家、CGは凄く綺麗。美麗というのに相応しいその塗り。それもキャラだけでなく、背景もとても美しい。また、Hシーンも、非常に多くのシチュエーション・パターンが用意されており、女史のファンならずとも、絶対に楽しめるものがあるはずです。

  そういうことで、女史のファンの人はこれ以降読むのはやめましょう。ほら、何だって弱点と言うか、欠点と言うものはあるものだし。ゲームの第一原理は美しいCGであるとする教えを持っている人には、このゲームこそ聖典であるのですから、あえてアラを探すこともないでしょう、ね。

  (多くの人には)肝心なストーリーの方に入りましょう。概要は、山奥の旧家の血縁である主人公が、両親が死んだこともあり、そこの養子に入ることで始まります。しかし、実際に来て見ると、本当は婿養子。急な話なので、お試し期間として1ヶ月間、仮の当主としてお屋敷に滞在することになります。さらに、ここの当主は何をしてもいいらしい、非常に含みのある言葉です。おあつらえ向きにも、この屋敷にはメイドが2人とお嬢様、それに異常に若い未亡人までがいて、選り取り見取り状態です。

  さらに、「月待ちの儀」という儀式の存在や、この屋敷に以前訪れたことがある主人公の断片的記憶、そして最近良く見る夢(白昼夢)などと、伝奇的な要素もふんだんに取り入れられて、実にエロエロな展開になっています。

  これだけ聞くと、前評判の高さも当然に思えてきます。しかし、実際のプレイはかなり違ったものです。はっきり言うと、
大風呂敷を広げまくっています。広げすぎて、その厚さが3nmぐらいになってしまい、トンネル効果でも起きたのか、ストーリーが破綻してしまっています。

  さらに、伏線多すぎ、まるで「ミレーの種まき」のごとく大量に蒔かれます。それなのに実際の話は、主人公が女の尻を追いかけているだけ。前当主の記録を見つけても、ろくに内容を確かめませんし、沢山ある文献の調査もしません。ただひたすらに、H三昧の毎日を送っていて、
強いて言うと「暗黒あゆみちゃん物語〜邪神復活編〜」という感じです。つーか、それならいらないだろう、こんなに伏線。

  そんなミスマッチに加えて、さらにやる気をそぐ要素がまだまだ存在します。ひとつは、画面の切り替えやキャラの出現時にフェードイン・フェードアウトしまして、やたらに遅いこと。また、効果音がいちいち入って、遅くなることも、イライラ感を増大します。特に、この主人公があたりかまわずにタバコを吸うのですが、その度にスキップ不能の効果音が入った日には、殺意を抱くこと確実です。

  こんな状態で、メインキャラを全員攻略しないとトゥルーエンディングが見られないという実にイカした仕様になっています。これ、実はクトゥルー神話ですか? 

  さらに、このキャラクターが実にたっていて、苦行度をさらにアップしてくれています。はっきり言うと、
登場人物は全員、人間として重要な何かを失っています。男性陣は、もれなく鬼畜です。主人公からして、ホストのバイターで主体性のない単なる種馬です。女性の顔を認識できない障害をこの屋敷に来るまで持っていたそうで、チェリーボーイを気取っていますが、それは単なるカモフラージュに過ぎません。他にも、主人公と助手を人身御供に売っておいて最後に善人ぶる教授、チャカ持って乗り込んでくる芸能関係者、毒を盛る医者など、知り合いになりたくない面子が勢ぞろいです。

  女性陣も、その真の正体は雌奴隷か妖怪です。メインヒロインからして、主人公に強姦されたのに、次の日にはいきなりラブラブになる謎の思考ルーチンをお持ちになっています(これでも比較的まともな方である)。他にも、メイド2人は一皮剥くと雌奴隷ですし、大学の助手はメッセージウィンドウの下の部分にナイフを隠して近づいて来て襲い掛かってくる大量殺人者です。

  ああ、1人ぐらいは人間らしい奴がいたかな。見た目は、まるで女みたいな男だけど、性格は善良です。こいつのエンディングもあるし。
まあ、それも、主人公がそいつのカマ掘ってしまい、最後には東京の下宿に押しかけられて同棲するというものですけどね。

  それで、全主要キャラのエンディングを制覇するまで忍耐が持てば、待望の解決編たるトゥルーエンディングに突入することができます。ここからは、特にネタばらしになるので、自分で確認したい人は読まないで下さい。

  トゥルーエンディングも、基本的には、お嬢様の攻略とほぼ同じストーリー展開で進んでいきます。ゲームの事実上のスタートが10日なのですが、それから20日までが共通部分で、もう何回目になるのか分からないお嬢のHシーンもあったりします。これで最後だから我慢してやりましたけど。

  20日まで来れば、話の展開が変わってきます。やっと、伏線の消化にかかったということでしょうか。これまでまるで手をつけていなかった怪しい倉や図書室を調べ始めてくれます。さらには、
神的存在とチャネリングしたり、過去界に遠征したり(2回も)、過去の出来事のヴィジョンを見たりまでしちゃいます。これだけすれば、世界の真理を理解しても不思議はないのですが、しかしながら、未だに伏線すら理解できません。

  なんでそんな事になっているかというと、
この期に及んで新キャラが登場してりして、話がまだまだ膨張を続けているからです。しかも、その新キャラは、お嬢様の双子の片割れ。そんな重要人物が、ろくな伏線らしい伏線もなしに現れてきます。もう少し、全体の話のバランスを考えて欲しいものです。

  さらには、双子に合わせて、人間の心は魂と魄に分かれるとか、神的存在に善悪の二面性があるとか、二元論が登場してきます。まあ、新しいパラダイムで、これまでの無関係に思われていた要素が1つに収束するのを見るのは、この手の話の醍醐味であります。しかし、それが面白いのは、悪魔でもそれが納得できる場合だけ。そりゃ、一部のものは当てはまりますが、このゲームの殆どのものが、この二元論に該当しません。この理論も、単に話を混乱させるだけです。

  そんな中、神憑った主人公は、捕まっても触るだけで鍵を開けたり、危険からテレポートして逃れたり、もう無敵状態で、突き進んでくれます。
なんたって神様、何が起きても誰も文句が言えません。プレイヤーに出来るのは、手と手を合わせて「ありがたや、ありがたや」と崇めることぐらいです。

  そうやって崇めていると、ゲームは終了します。エンディングでは、双子を連れて東京に戻る主人公。両手に花状態、実に羨ましいです。まあ、何で主人公が女性の顔が認識でない障害を持っていたのかとか、頭の中には気になることが色々ありますが、トゥルーエンディングでしか流れない歌を聞いている内に、その開放感からもうそんな些細なことはどうでもよくなってしまいます。しかし、このゲームを買った人で、この歌に来るまで耐えられた人はどれだけいるのでしょうか?

  シナリオについて書いていたらきりがないので、今度は基本的なシステムについて見てみしょう。このゲームには、下の方に椿の絵が描かれたウィンドウがあり、これは
椿窓と呼ばれます。ここを開くと、いわゆるシステム画面が開きまして、そこに椿モードというものがあります。ここで登場人物の主人公に対する思慕や情欲の度合いが一目で分かるようになっています。

  しかし、
これがシナリオの展開に関係するのはメインヒロインぐらいだけらしいです。カーソルまで椿になっているので、絶対に重要な役割があると思っていたら、すごい肩すかしでした。庭にある、椿の木のおかしな姿を見た時点で、単なる虚仮脅しと気がつくべきだったです。元々はもっと発展させるつもりだったのでしょうが、シナリオがあの体たらくでは、そんな暇はなかったという所でしょうか。

  さて、このゲームに関して思っていたことを全部ぶちまけてしまいました。しかし、このゲームの売りはCARNELIANの美しい絵と、豊富なHシーンにあります。
他の要素は、お刺身についている大根やシソや菊の花みたいなものです。そんな目で見てみれば、お刺身は最高です、目の下三尺の鯛のお頭つきというクラスでしょうか。普通では絶対に食べられない品です。

  
問題点と言えば、シナリオたる菊の花が小菊でなく大輪の大菊で、それも大量に飾られているので、せっかくの船盛がまるでお葬式の棺おけにしか見えないというだけです。それを気にしないで、お刺身を美味しく食べられる人、つまりCARNELIANファンの人なら、このゲームは絶対に買いでしょう。

  私は、お屋敷物では、ストーリーが気になってしまうので、ダメでした。まあ、雰囲気までは最高なんですけどね〜、後がイカンかったね〜。
(タコマロ)