「獄寺君、昼御飯は?」


ツナは獄寺の手に何も無い事に気付き、尋ねてみた。


「あ、オレ何も持って来てないんで購買行って来ます。先に食べてて下さい。」


獄寺はそう言うとシュタッと手を上げて、ダッシュで教室を出て行ってしまった。

(授業中に寝過ぎだよ。体力有り余ってるじゃん。あれで成績が学年トップ何て詐欺だよな〜、何時勉強してんだ
ろ。)

ボーッと獄寺の消えた方を見てそんな事を考えていると、肩にポンと手が置かれた。


「ツナ!行こうぜ!」


山本が親指で天井を指していた。最近は煙草を吸う獄寺の為に屋上が昼休みの定位置になっていた。ツナは弁当を
取り出すと急いで立上がり、山本と二人で多分リボーンも先に行っているだろう屋上へと向かった。




















「獄寺だ!!」

「獄寺君よ!!」


昼食を求める生徒達でごった返していた購買だったが、獄寺が姿を見せた途端、売り場まで一本の道がサーッと出
来上がった。男子は獄寺恐さに、女子は獄寺ファンゆえに、道を空けるのだ。

(あー楽だ。)

獄寺も慣れたもので、その道を悠々と進み、パンの並んだ所で止まる。

(お、最後の一個。コレでいいか・・・。)

獄寺がカレーパンに手を伸ばすと、横から物凄い速さでもう一つの手が伸びて来て、カレーパンは獄寺とその人物の
二人の手に、ほぼ同時に握られた。


「離すがいい、タコヘッド。」

「てめーが離せ、芝生メット。」


手の主は笹川了平。獄寺とセットにすると確実に殴り合いが始まる人物の出現に、辺りには緊迫した空気が流れ出
した。


「オレのが先だった。」

「馬鹿者、オレに決まっているだろう。」

「オレはどうしてもカレーパンが食べたいんだ、てめーは焼きソバパンにしとけ!芝生!!」

「生憎だが、オレの腹はもう、カレーパン以外は受け付けん!!引け、タコ!!」

「下級生相手に大人げ無ぇぞ!!」

「貴様こそ、年長者に対する敬いの心は持ってないのか!!」


手に力を入れて睨み合う両者に、カレーパンが潰れやしないかと、群集はハラハラしていた。そして、何時になったら
自分達は売り場に近付く事が出来るのだろうかと、泣きそうな気持ちになっていた。その時に、救世主が現れた。


「ちょっと!!あんた達!他の生徒さん達の邪魔になるから、喧嘩はあっちでやっとくれ!!」


全く仕事が進まない購買のおばちゃんは、獄寺と了平のブレザーの首元をムンズと掴むと、「御代は勝った方から頂
くからね!?」の言葉と共に、ポイッと売り場前から二人を放り出した。

(おばちゃん、ブラボー!!)

空きっ腹も限界に近い生徒達は心の中で拍手喝采であった。そして、獄寺と了平は放り出されても、どちらもカレー
パンからは手を離さず、更に戦いをヒートアップさせていた。


「諦めろ・・・・・!!」

「絶対ぇ離さねぇ・・・・・!!」


カレーパンを挟んで、ギリギリの距離で睨み合う。と。


「あ、悪ぃ!」


二人が退いた売り場目掛けて走り寄った生徒の一人が、了平に軽くぶつかった。

ブチュ

お約束通りに、近距離だった二人の唇は、重なってしまった。目を見開き、固まってしまった了平に対し、獄寺は目を
弓形に歪め、素早くカレーパンをもぎ取った。


「イタダキだぜ!!じゃあな、極限バカ!!」


嬉しそうにそう言って、購買のおばちゃんに硬貨を投げて走り去る獄寺を、了平は白く燃え尽きて呆然と見詰めてい
た。




















「おかえり、獄寺くん。」

「やけに時間掛かったな?」


凄い勢いで屋上に飛び込んできた獄寺は、そのままドカッとツナと山本の前に座り込むと、不機嫌丸出しの表情で、
煙草を吸い始めた。


「聞いて下さいよ!10代目!あ、ついでに山本もな。さっき購買で・・・・・・・・・・・」


獄寺が煙を吐き出しながら話始めた時。


「獄寺隼人----------!!!」


バタンッという扉の開く音と、それに負けない大音量の声が屋上に響いた。


「ん?笹川兄?」

「き、京子ちゃんのお兄さん・・・!」

「!!!!!」


ポカンとする者と、驚く者と、額に青筋を浮かべる者。鬼の形相でズカズカと歩み寄って来た了平に、額に青筋を浮か
べた獄寺が、カレーパンを片手に立ち上がった。


「しつこいぞ、てめー!!カレーパンは絶対ぇ渡さねぇって・・・・・」


しかし、了平はカレーパンには目もくれず、獄寺の手を握り締めた。


「ぎゃ!!な、何なんだてめぇ!気でも狂ったか!?」

「オレは責任を取ってお前を嫁に貰う!!!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「「はぁ!?」」」


妙に長い沈黙の後、ツナと山本と獄寺が、声を揃えた。


「事故とは言え、オレがお前の純潔を汚したのは事実だ!オレも男だ、潔く責任を取ろうではないか!!」

「ちょ、待て!メット!!落ち着け、そんなたかがあんな事如きで・・・・・・・・」

「ムッ!煙草は吸うなと前から言っているだろう!!丈夫な子供が産めなくなるではないか!!」

「てめ!また煙草消しやがったな!!・・・じゃねえ!!引っ張るな!手を放しやがれ!!」

「今更照れる仲でも無かろう!沢田、コイツは貰ってゆく!!さあ、愛を育むぞ、獄寺!!」


一応ツナに了承を得ながらも、意見を聞く気などはさらさら無い了平は、すでに獄寺を引き摺る様にして、屋上の出入
り口に歩き出していた。獄寺が蹴りを入れてもビクともしないし、パンチはことごとく避けているのが流石である。


「10代目!!助けて下さい!!この際お前でもいい!助けろ!山本〜〜〜〜〜っっっ!」


パタン

余りの出来事に弁当箱と箸を置く間も無かったツナと山本は、互いに目を合わせない様にしながらまた箸を動かし始
めた。


「・・・・・いいと思うんだけど、山本は?」

「ちゃんと『獄寺隼人』って言ってたしな。」

「そうだよね、オレなんて『沢田ツナ』だったもんね。獄寺君、愛されてるよ・・・・・。」

「獄寺に子供は産めないって教えた方が良くないか?」

「あの人なら、作ると思う。」

「そうだな。」


そこで言葉を切って、二人は今の出来事に蓋をする為に、食べる事に集中する事にした。黙々と弁当をかき込む二人
と屋上のドアの間には、カレーパンがころん、と転がっていた。




2004.10.24.  AM6:35
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了獄。勢いで書き切りましたYO!!後から加筆修正しそうだなぁ・・・。
難しいんだ、了獄。だって、「タコヘッド」「芝生メット」で愛は語れないから・・・(爆
後は頼みました・・・御三方!!
全文揃ってからUPする予定がフライングです。ので、後はもう、書けた物からUPします。