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「ヤバい、忘れてた!」
「どうしました?」
「どうした?」
弁当を取り出した途端にハッとして青冷めたツナに、獄寺と、同じく昼食を一緒に食べようと近付いて来た山本が、同
時に声を掛けた。獄寺が嫌そうに顔をしかめる。
「オレさ、先生に呼ばれてるんだった・・・弁当持って生徒指導室に来いって・・・・・」
肩を落とすツナを見て、山本が気の毒そうに言う。
「マジでか?弁当食べながら説教かよ。」
「シメときますか?」
ボキボキと指を鳴らしながら言う獄寺の目が本気だったので、ツナは慌てて首を振った。
「いい!いいよ!!じゃ、オレ行って来るから!」
弁当を掴んで駆け出したツナの背中を二人で見送った後、顔を見合わせる。
「じゃあ、オレは・・・・・」
「まあ待てよ。」
さり気なく山本から離れようとした獄寺の肩を山本がガシッと掴む。
「オレも忘れてたんだよな。」
無視してもよかったが、一応聞いてやる。
「何を?」
「部室に弁当置き忘れて来ちまったんだ。」
「あーそうかよ。じゃあさっさと一人で取りに行って来い。」
獄寺は肩にある山本の手を摘んで退け、歩き出した・・・・・つもりだったが、いつの間にか前に回り込みガッチリと手
首を掴んだ山本に引き摺られていた。
「行くぞー。」
結局強引に野球部部室迄連れて来られた獄寺は、部室棟の壁に凭れて煙草を吸っていた。連れて来た本人は、部
室内に居た先輩達に捕まっている。獄寺は壁に凭れて煙草を吸っていた。目の端に写る、部室棟の奥にポツンとあ る古びた倉庫。棒倒しの棒やら大玉転がしの玉やらが入れられているこの倉庫は、めったに開けられる事は無い。
(カビ臭ぇんだよな。埃っぽいしよ・・・・・)
『野球部の各学年、一人だけ、この鍵が貰えるんだ。つまり、後の二人と重ならなきゃ、自由に使えるって事。』
そう言う山本と、あの中に入ったのは、まだ記憶に新しい。
(遅ぇ・・・・・)
途中から、カビ臭さなんて忘れる程に、山本の香りに包まれた事とか。
(遅ぇ・・・・・)
結局頭まで埃だらけになって、笑いながら互いにそれを払い合った事とか。
(遅ぇ・・・・・)
天窓から差し込む少しの明りに浮かんだ山本の、熱くて熱くて頭の芯が熔けそうな瞳とか。
(思い出すな!オレ!!)
獄寺が頭を抱えてしゃがみ込むと同時に、部室のドアが開いた。
「悪ぃ、ごくで―――――」
「遅ぇんだよ!アホ山!!」
獄寺はこの顔の熱は総て山本のせいだと、八つ当たり気味に怒鳴りつけた。いきなり怒鳴りつけられて目を丸くした
が、山本は獄寺の怒りは空腹から来る物かと、軽く笑って歩き出した。獄寺ものろのろと立ち上がり、後を付いて来 た。
(そーとー腹減ってんだなぁ。悪い事した・・・?)
急いで教室に帰って昼食を取ろうと、山本が早足で歩いていると、ツンとブレザーの後ろが引っ張られた。
「どうした?」
山本が振り返って尋ねると、獄寺はハッとした様にブレザーを掴んでいた手を放し、俯いてしまった。髪の間からチラ
リと見える耳が赤い。余りに見慣れない様子に、山本は獄寺を凝視していたが、その後ろの風景にある物に気付く と、獄寺の手を掴んで走り出した。誰も中に居ない事を確認して倉庫の鍵を開けた。中側の剥き出しになっている扉 を閉める金具に南京錠を掛けてから、獄寺を正面から抱き締める。
「昼飯抜きの五時間目遅刻決定。な?」
山本が獄寺の頭を撫でながらそう囁くと、獄寺の手が山本の背中に回され、ギュウッと力を込めてブレザーを掴ん
だ。
昼休み終了3分前に漸く説教から開放され教室に戻って来たツナは、二人が居ない事に気付いた。まだ屋上に居る
んだろうかと首を傾げたが、ハッと余り考えたくない考えに行き着いて、慌てて頭を振ってその考えを打ち消す。
(きっと、ギリギリまで獄寺君が煙草吸ってるんだ。それに山本も付き合ってるんだ。きっと。)
祈る様に自分に言い聞かせてみたが、ツナの願いも空しく授業開始のチャイムが鳴っても、二人は姿を現さなかっ
た。
「すんませーん。頭痛くて保健室で寝てましたー。」
五時間目開始から20分後。やけに爽やかに山本が教室の後ろのドアから入って来た。成績はいまいちだが、教師
受けは抜群にいいので、余り追求される事も無く、悠々と席に着く。「お前頭痛かったなんて嘘だろー?」と、からかう 声が聞こえて、教室内がクスクスという笑いに包まれる中。ツナは一人、キリキリと痛む胃を押さえていた。
(嘘!嘘!!絶対嘘だって!!だって山本、凄いスッキリとした顔してる!!)
そしてそれから10分後。ガラリとまた教室の後ろのドアが開き、獄寺がいつも通り不機嫌そうな顔をして、無言で教
室に入って来た。教師が注意しようと口を開いた所でギロリと睨みを効かせ、見ていたツナに気づくと一瞬だけ眉間 の皺を消しペコッと頭を下げてから、席に着いた。椅子に座る瞬間、獄寺の眉間の皺が深くなったのを見てしまったツ ナは、盛大に痛む胃を押さえ付ける。
(獄寺君・・・何かツヤツヤしてるし・・・・・・・・。も、ヤだ。こんな部下達要らないよ、リボーン・・・・・・・・・・)
次の休み時間に保健室に行こうと決心したが、保健医がシャマルだという事を思い出し、絶望的な気分になったツナ
は、ガクリと肩を落し、大きな溜め息を吐いた。
2004.11.21.
山獄昼休みの筈が、ツナの苦労話になっちゃったですよ。
こんなホモホモカポーな部下持ったらツナの気苦労は耐えないだろうなあ。頑張れ!10代目!!
そしてもっさんが獄を連れ込む話にする筈がどっちかってーと獄が誘ってるし。最近うちのもっさんいい目見過ぎじゃ
ねぇか?
おのれ、山本!(杜さん獄が好き過ぎて山本を少々ライバル視しています。)
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