ドラゴンの肉を求め、ドラゴンズヘブンの奥へ意気揚揚と進む佐祐理(と嫌々ついていくあゆ)

太陽が傾きかけた頃、二人はついに念願のドラゴンに接近遭遇した。

もっとも望んでいたのは佐祐理だけだが…。







プリンセスさゆりん
〜あははーなお姫様の諸国漫遊記〜

佐祐理編 ドランゴラ
激闘! メインディッシュ決定戦










大きさは…ちょうど納屋一戸分といったところ。

鋭利にとがった牙と爪、その体躯を包みこめるほどの大きな翼、

細くつりあがった目が佐祐理たちを品定めするかのようにこちらを見ている。

眼の奥に明らかな敵意と狂気をこめて…。


「で、ででででででででで、出たー」

「ここで会ったが100年目、ですよ〜。」

「こんなところで食べられるなんて嫌だよぅ。」

「さぁ、おとなしく佐祐理の胃袋に収まってくださいね〜。」

「ボクたちなんか食べてもおなかいっぱいにならないから見逃してよぅ。」

「これだけあればお城のみんなで食べ放題できますね〜。」

「佐祐理さんがメインディッシュとして、ボクはやっぱり前菜…?」

「大丈夫。エルフはきっとデザートですよ〜。」

「やっぱり食べられちゃうの〜!?」

こんなときでもボケとツッコミができる二人。

だがドラゴンは漫才目当てで来たわけではないので、黙って見ていてはくれない様子だ。


「あゆちゃん、下がっていないと焼き鳥になっても知りませんよ〜。」

「う、うん。」

「さて…それじゃあいきますよ〜。」




その言葉が戦闘開始の合図となった。


佐祐理が剣を構える。

と、同時にドラゴンはゆっくりとその長い首を持ち上げると、

矢のような速さで首を突き出し噛み付いてくる。

佐祐理はそれを横に跳んでかわすと、すかさず剣で斬りつける。

が、鉄の硬度を誇るといわれているドラゴンの皮膚は

鍛えられた佐祐理の剣でも浅く傷つけることしかできない。

振り向きざま、ドラゴンが腕を振り回して攻撃してくる。

その隙をついて幾度となく剣を振るったが、結果は全て同じだった。



「鉄の皮膚というのは本当みたいですね〜。」


らちがあかないと考えた佐祐理は、狙いをドラゴンの首から上にしぼることにした。

しかし、丸太のような太さの首を斬りつけても動脈に刃はとどかず、

かといって顔面を狙うほどの余裕はない。


ドラゴンはその爪と牙で容赦無く襲いかかる。

人間の体など紙切れのように引き裂くであろう、

その一撃が近くをかすめるたびに、佐祐理の頬には冷たい汗が流れ、背筋が凍りつく。











もうどのくらい戦っているのだろうか。

しかし未だドラゴンが炎を浴びせてはこなかった。


「どうやら生食が好みのようですね〜。」


軽口こそ言うものの、佐祐理の表情には明らかに疲労の色が出ていた。

逆にドラゴンのそれには疲労の色は全く出ず、

ちょこまかと逃げ回る獲物に対する憎悪だけが色濃く出ている。







しかし、なかなか捕まらない佐祐理に腹を立てたのか、先に焦れたのはドラゴンだった。

大きく息を吸いこむと、炎を浴びせてくる。


しかし…

「このときを待ってましたよ〜。」

佐祐理は炎を避けると、ドラゴンの動きが止まっている間にその顔めがけて高く跳んだ。

狙いはドラゴンの目。

人間の拳くらいの大きさだろうか、その眼球に剣を突き立てると

それまでとは明らかに違う手応えが伝わってきた。


その瞬間、凄まじい叫び声をあげドラゴンは長い首を左右にふるう。

一方の佐祐理はというと、刃が深く刺さりすぎたため、脱出が一瞬遅れる。

剣は抜けたものの、佐祐理は岩壁に叩きつけられてしまった。

その強い衝撃に呼吸が止まる。
気絶こそしなかったが、意識が朦朧として動くことができない。


ドラゴンは叫び声を上げながら暴れまわっている。

ややもするとその叫び声がだんだんとおさまってきた。


…やったか?


しかし、ドラゴンはゆっくりと佐祐理のほうを向くと

これまでよりさらに大きな声で吠えた。


…だめか。


先ほどよりはマシになったものの、まだ思うように動くことができない。




ドラゴンは勝利を確信したかのようにゆっくりと右腕を上げ、

その爪で佐祐理を切り刻まんとしていた。


そして、ついにドラゴンの右腕が、佐祐理めがけて振り下ろされた。



…もうダメ!











その瞬間、佐祐理の目の前に黒い影が踊り出る。


そして弾け飛んだのは、佐祐理の体ではなくドラゴンの右腕だった。


「…大丈夫?」


はっきりしない意識だったが、その声だけははっきりと聞こえたような気がした。


「あなたは…誰…ですか…。」


そう言ったところで佐祐理の意識は途切れた。





次回「竜を討つもの」に続く







戦闘シーンって難しいです。

参考にしようと「ロードス島戦記」を読み始めたら、

案の定、読むほうに夢中になってしまいました。